いいよね、あんたは楽で

をれを

けんかはやめろおあもおあお


「いいよね、あんたは楽で」

 ダイニングで冷蔵庫に食品を詰める母がふと放った言葉に、私はキレてしまった。

 俺だって楽じゃない、忙しい、課題がたくさんある、やりたいことだってたくさんある、今日も疲れたし、大学生は立場が弱いし、あいつの講義は苦痛だし、そっちだって毎日同じことしてるだけじゃないか――


 大学への不満が突沸したように溢れてきた。

 いま思えば、疲れてたのかもしれない。







 自分の立場が楽と言われると噛みついてしまう。


 さっきまでニコニコ話していたのに、急にスイッチが入って、自分が今までに受けた理不尽への恨みだとかが一気に喉元まであがってくる。いきおいあまるとそれを相手にぶつけてしまう。



 ネタ発言に急に真剣に反論してしまうことがある。


 ネタで言っているだけだと分かっている。けれどもどうにも受け入れられなくて、時には相手の言っていないようなことにまで反論してしまったりして。




 自分のそういう言動を省みては、ああ恥ずかしいなと一人で赤面する。こんなことは二度としまい、と思う。




 けれども、それって仕方ないことだと思った。

 言い訳をするわけじゃない。けれど、人である以上、抱えているものは誰しもある。過剰に反応してしまうことだってある。余裕がなければなおさらに。


 大切なのは過ちを認めることなんじゃないかな、と思う。認めて、理不尽をぶつけてしまった相手に謝る。そうしてお互い許し合えたら、ちょっぴり幸せな気が、する。




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