葉を落とした街路樹がさわさわと揺れながら、辛抱強く春を待つ……そんな印象を受けました。忘れものがかえってああした展開になるとはイキな計らいですね。多分、作者はささやかな真心を拾って胸に抱くのがお好きな方なのでしょう。きっと主人公の気持ちは結ばれる、そんな確信を抱いてしまうご作品でした。
むずかしい恋かもしれないけれど、それでもふたりの未来にはきらきらと温かな光が見えるような、やさしい透明感に心洗われる物語です。
手を通して伝わる気持ちが、きっとそこにある。なんて思えるステキな、普通とは少しだけ違う「恋愛」小説です。マフラーも手袋もきっと暖かいけれど、好きな人と繋ぐ手が、いちばん温かいのかも知れませんね。2人の未来に、幸あれ。