急
バレンタインチョコを渡そうとしていて、誰かを呼び出して、その誰かに殺された?
それとも、恋敵に殺された?
なんにせよ、自殺ではなさそうだ。凶器であろう雪球も転がっている。
なんというベタな話だろう、雪球で殺して、チョコレートは食べて、それでおしまいにするつもりか。だが残念だったな、私が見付けてしまったのだ。私の家から殺人現場へと続く足跡を。
私の家、といっても、古い集合住宅である。
もともとは一軒家だったらしく、敷地に入るところに表札は出ているが、大家は住んでいない。
私は来た道を引き返し、1階の住人の仕業なのか、2階の住人の仕業なのかをたどろうとした――ところで、後ろから殴られ、意識を失った。
目を覚ました私が見たものは、死体だと思い込んでいたあの人間にそっくりの、小さな女の子と、その両親に見える1組のカップルだった。
「すみません、探偵ごっこをしようと娘が言い出して、私たちちょっと悪ノリしちゃったんです。警察まで呼ばれたようだったので、あなたに倒れてもらおうと思って、殴りました。致命傷ではないと思うのですが、慰謝料はお支払します」
そういう問題じゃない。
私は大声で怒鳴りたかったが、むすっとしたまま、相手から渡された白紙小切手に金弐千萬の文字を書いて、ぴらぴらと振ってみせた。
「雪についた足跡をたどってみたら」 天照てんてる @aficion
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます