死体それはおそらく男性のものだった。身体つきもそうだし、服装もそうだし、持ち物もそうだった。だが、それだけで決め付けるのは早計だろう。


 幸いにして私は手袋をはめていたので、死体の持ち物のカバンを少し漁ることにした。出てきたのは、ほとんど空になった財布。物盗りにしちゃあ、豪快だ。


 日記帳のような、分厚い手帳が、カバンの底を覆っていることに気付いた。


 ほほう、犯人はこれを盗るつもりが、見付けられなかったな?


「2月15日 雪

 バレンタインチョコは、今日も渡せなかった」


 私が気になったのは、その1行だった。チョコレートは、カバンの中になかった。

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