シャドウ・シティー
フカイ
掌編(読み切り)
テーブルの上には、チーズとウィスキィ
ゆるやかに溶ける氷と、汗ばむグラス
灰皿でくゆれる紫煙
甘い、ハバナ煙草のにおい
ブラインドのスリットを閉め気味にすれば、
部屋の中に縞模様
ストライプになった青白い月光が、
裸のきみの背中にゆがむ…
かすかに聞こえるのは、
街のノイズか、潮騒か―――
もう、
背中に声をかけて
知ってたわ、と
答えがもどる
憂いをひそめて、ほのかに甘く
ふたりとも、知ってる
終われや、しない
こんなので、終われやしない
「馬鹿ね」
「知ってるだろう?」
「ええ、知ってるわ」
往年のヒット曲が
脳裏に蘇る
イントロのツイン・ギター
ユニゾンの途中で、ハーモニーを作る瞬間が
たまらなく好きだった
何度も練習した
きみとのセックス
きみとの日々
忘れられるはずなんかない
“無理に、
ベッドまで歩いて、
運命の皮肉ごと、
抱き締めてあげたい
このまま、朝が来なけりゃいい
このまま、どこへもたどりつけなくていい
きみさえいれば
これきりの夜だから
シャドウ・シティー フカイ @fukai
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