主人公の語り口やセリフに、強く共感しながら読みました。思春期の、まだあやふやな自分という不確かな存在を、不意に思いこされます。何かが大きく変わるわけでもない、でも変化のきっかけである、そんな瞬間が愛おしくなりました。
様々な意味で越しかた行く末を想像させた。よく、若者の可能性は無限だという言葉が交わされる。当の若者達はどう考えているのだろう。可能性なるものは使いこなせなければ意味がない。むしろ老後の後悔の種になりかねない。他界した祖父はそんな一生を反芻(はんすう)していたのかも知れない。テレビゲームは私も大好きだが、本作では消費される娯楽の象徴とも解釈できそうだ。主人公達は逆転の必殺技より小まめにダメージを積み重ねる堅実さが欲しいのだろう。その意味で、受験を一つの機会として欲しい。