ヱビス繪
安良巻祐介
揃いの黒い服と黒い帽子をかむった男たちが、何人も集まって何やら密談している薄暗い路地の裏には、躑躅の花が普通よりも幾分暗色で咲いていて、そして、どこかから足元へちょろちょろと水が流れ続けている。路地の奥の方は、濁った七彩の闇に沈んでいて仔細がわからない。壁すれすれのところで、黄色い顔をぴったりとくっつけ合って、ひそひそと話し続けている男たちは、いつまで経ってもそのままで、そこを去る気配がない。天神様がどうとか、八幡様がどうとか、漏れ聞こえてくる単語が、なぜか私を不安にさせた。そもそも、私は一体いつからこんな場所を覗き込んでいるのだろう。そして、いつまで、こんな場所を覗いているのだろう。そもそも、私は誰なのだろう。その事に思い至った瞬間、男たちが一斉にこちらを向いて、笑った。私は叫び声を上げた。その顔は、全部きつねの顔だった。
ヱビス繪 安良巻祐介 @aramaki88
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