作者友浦さんの作品は本作以外にも複数読ませてもらいましたが、本作は初めて発表された長編作品ということで、改めて読み進めるとその作品の完成度に感嘆しました。
物語は素敵な殿方とのラブロマンスの枠だけでは収まらない、もっと大きな勧善懲悪では割り切れない「どんな犠牲を払ってでも自身の信念を貫く」という意味での”正義の物語”を固唾を呑んで読み進めました。主人公の番子は、もはやヒロインというよりはヒーローと呼ぶべき存在に思えて熱い物語だなと感じました。私が大好きな特撮モノを観ているようで満足しています。例えるならば初期の平成仮面ライダー。『クウガ』を彷彿とさせる小説でしたね。
国民を黒入道や黒影から守るプリンセスナイトは、今日も空を駆ける。その正体は、何と王宮のメイド! しかも、最下位級の平メイドで、名前すらメイド番号の「番子」だった。プリンセスナイトとして市井を守る彼女は、仕事に遅れ気味で、いつも怒られっぱなし。
しかし番子には秘密の親友がいた。それは、国の姫である美少女だ。しかも、光の国と国交がある青き国の王子と番子は、恋仲だった。身分違いの恋。それを取り持ってくれていたのは、親友であり、番子のプリンセスナイト正体を知る姫だった。姫は番子を飾りたてて、王子に紹介していたのだ。番子は自分の身分を隠しつつ、王子との逢瀬を楽しみにしていた。ところが番子には幼馴染の騎士もいて⁈
国内では黒入道と黒影という正体不明の悪者が猛威を振るっていたが、プリンセスナイトは戦いの中で、黒入道や黒影が市民の味方だという話を聞く。そしてそれが王家の呪いであり、プリンセスナイトの存在意義であることも――。
そして明かされる番子出生の秘密と、過酷な運命。
さらに、王子が番子に結婚を申し込んできて⁈
果たして、二つの国が選択する未来と、プリンセスナイトの運命は⁉
『夜勤』、『雨の庭』で知られる独特の世界観に定評ある作者様最新作にして、原点となるこの作品! 朝読賞も狙える痛快さもありながら、魅力あふれるキャラクターがクルクルと動き回り、読者を飽きさせません。今までにない異世界ファンタジー。
是非是非、御一読下さい!