けものフレンズ2 5話最後~6話冒頭妄想SS

うくる

思わぬ再開

「こっちに!あいつが戻ってこないうちに、早く!」


よかった、間に合った。


襲われかけたフレンズさんが助け起こされこちらに向かってくる。

見たところ怪我はなさそうだ。


紙飛行機が燃え尽きるまでにはまだかかるはず。

今のうちに安全なところへ誘導しないと。

川沿いに移動すればあるいは安全だろうか。


そんな事を考えていると、ふと、視線を感じた。

振り返り、視線の主を直視する。



動悸がする。

瞳孔が開くのがわかる。

ああ、そんな。どうして。



サバンナに昇る太陽の様な、金色の瞳。

見るものの目を引く、大きくて可愛らしい耳。

何より、かつて僕を導いてくれた優しげな表情。


間違いない、彼女は。


「サーバル・・・」


喉を通り越し口内にまで転がり込んだ「その先」を、僕は言わなかった。

いや、言えなかったのかもしれない。


「うみゃ・・・?あなた、いま、私の・・・」


彼女の瞳が僕を映す。

目と目が、合った。



「っ・・・、サ」



「ね、ねぇアンタ!さっきのフレンズはなんなのよ!?」


「なんなんやアイツ、あんなん見たことないで!」

「すっごい怖い感じやったなぁ・・・」


「咄嗟に逃げてしまったが、何者だ?フレンズだったようだが」

「虎さん、でしたか?突然過ぎてよくわかりませんでしたね」


「あー待て待て、まずは落ち着こう。焦ってみんなでしゃべってちゃわからないよ」


ザアッと、喧騒が流れ込んでくる。

反射的に振り向いた。


助かった。

あのまま見つめて、見つれめられていたら。

僕は―――


「・・・ごめんなさい、みなさん。いまは詳しくお話ししている時間がないんです。

僕はすぐにここを離れなきゃ・・・いや、あいつを追いかけなきゃいけないんです」


そこまで一口言い切ったあと、集まったフレンズさんの顔ぶれを眺める。


「ここを真っ直ぐに行ったところに川があるのを知ってますね?」


恐らくワニのフレンズさんを見つめて言う。

このフレンズさんなら、川辺もわかるはず。


「え、あ、ああ。普段はそこにいるからな」


「その川沿いに、ここからできる限り離れてください。あいつは水を嫌います。川沿いに移動すれば、もう一度襲われる可能性は低いはずです。さあはやく!」


フレンズさん達を身ぶり手振りで追いたてる。

幸いにも、ヒョウのフレンズさんが乗ってくれた。


「なんや、とりあえずそっちまでいけばいいんやな!」

「あっこら、待て!そっちは私たちの縄張りだぞ!」

「とにかく私たちも行った方がいいみたいね。サーバル!キュルル!行くわよ!」


ヒョウが走りだし、それにみんな続く。

カラカルがサーバルの元に走りより、声をかけている。

彼女はまだ僕を見ていた。


はやく、離れないと。


「あ、あの・・・」


聞きなれない声。

先程の喧騒になかった声だ。


振り返ると、そこにいたのはさっき襲われかけた青い服のフレンズさんだった。

そういえば、この子はなんのフレンズだろうか。


「あの、あなた・・・あの、もしかして、ヒト・・・ですか?」


「・・・僕は・・・」


想定していない質問だった。

答えることはできる。

・・・だけど・・・。


「ええと、そう。僕は、僕がなんのフレンズなのか・・・忘れてしまいました。ごめんなさい。・・・さあ、はやく川沿いへ、皆についていってください」

「ま、まって!僕、僕、おうちを探しているんです!ヒトの住みかについて、何か知りませんか!?」


ヒトの、住みか。

懐かしいな。

そういえば、僕も昔探していたっけ。


もしや、この子?

・・・いや、いま考えるのはよそう。


「それなら、この川の先に「博士と助手」と呼ばれている、とても賢いフレンズさんがいます。そのお二人に聞いてみてはどうでしょう―――きっと、親身になってくれますよ」

「博士と・・・助手?」


「キュルル!なにやってるの!?いくわよ!ほら、サーバルもはやく!」


カラカルが駆け寄り、キュルルと呼ばれたフレンズの手を取る。

もう片方の手ではサーバルを引き連れている。


至近距離で目と目があった。

ああ、やっぱり君は―――


「まってカラカル!まだ話が・・・っ」

「とりあえず安全なところに逃げてからよ!」

「あっ・・・!ねえ、まって、あなた―――」

「サーバルもぉ!?いいから!あとよ、あと!」


二人を引きずるようにカラカルが走っていく。

そんな三人を最後まで見届けることなく、僕も前だけを見て走り出した。


背中から飛びかかられるんじゃないか、なんて淡い期待だけを置いてきぼりに。





「・・・きっと、あの子のおうちを探してあげてるんだね。ふふ、やっぱり・・・優しいね」


少しでも距離が離れるように、ひたすら走った。

ふっと視界が開ける。森の合間、ちょっとした空間に出たようだ。


足を止め、空を見上げる。


届くはずがない。

誰にいうわけでもない。

でも―――


「直接は伝えられないけど、一緒に旅ができて楽しかったよ。・・・僕は、いつでも君を応援しているからね。」




「サーバルちゃん。」




空には、太陽が輝いていた。

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けものフレンズ2 5話最後~6話冒頭妄想SS うくる @Cucle_Yurha

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