フタリノキミ
村尾
ミイツケタ
少女は歩き出す。骨や臓器、肉が散乱している道を歩く。
もう少女は何も考えられない。家族を失った悲しみも生まれない。
ただひたすら、前に進んでいた。
「もう、このまま死んでも誰も悲しまない」
そう呟くと、家族を食いちぎり、人々を殺し血の海をつくった、あの殺人兵器が目の前に現れた。
何処か見覚えのある顔以外はもう何も違和感は無い。
「ミイツケタ」
誰も悲しまない、このまま死んでもいいと思ったはずなのに、なぜこんなに恐怖を感じるのだろう。
今すぐここから逃げ出したい。死にたくない。死にたくない。やだ。誰か助けて。
少女は首をつかまれてしまう。
「うぐぐぅあああぐっああ''っ」
少女の悲しみと苦しみが混ざりあった声が、荒れ果てた世界に響く。
すると目の前にはもう巨大な口があった。
あぁ、もう死んでしまうのか。家族を見捨てた罰なんだ。神様、ごめんなさい。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
口の中がハッキリと見える。
少女は、自分の母親の顔から首の部分らしきものを見つける。
吐き気、
そしてあの苦しそうな母親の顔と大好きなあの人のことを美しいほど綺麗に思い出してしまう。
しかし、自分の体をなかなか食いちぎろうとしない殺人兵器をじっと見つめる。
少女の体を持って自分の動きに必死に抗おうとしているような殺人兵器の瞳。
何故?何故私を殺さないの?
「貴方は殺人兵器じゃないの?殺さないの私を?殺してよ。
家族を見捨てて逃げ出したクズ人間なんて殺してよ!!!!誰にも必要とされてないのに!!!
早く殺してよ!!!!!」
「何故コロスの」
「え……?」
何故感情を持っているの?何故?
「美玲」
美玲……?あぁそうだった。やっと思い出した。私はずっと貴方の為に。
何度も何度もやり直してきたんだった。
この世界と「お姉ちゃん」を変えて、貴方を助ける為に。
続く
フタリノキミ 村尾 @muraooo3
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