第4話 自動人形とチンチロリン

「コタツの中は四次元なの。だから、思いっきり足を動かしてもぶつからないし絡まない。まあ、兄貴の足に触れないなら同じコタツでもいいかなって事」


 正面に陣取り、ドヤ顔で説明する我が愚妹である。


「じゃあ覗いても見えないの?」

「ああ。お兄様でしたら幾らでも覗いてくださってよろしくてよ♡」


 俺の左側でニコニコしてるのは、メガネっ娘の羽里だ。まさか、覗いてもいいのか?


「お兄ちゃん。だめだよ。そんな事したら羽里ちゃん本気になっちゃうよ」


 そう言って俺に体を押し付けてくる星子。

 マテマテ、それは密着のし過ぎだろう。俺はお前に本気になっちまうぞ?


「お兄さん。そんな小娘よりも、私の方がきっとイイわ」


 右側に陣取っていたトラントロワ型が、俺の手を握る。冷たいが、その手触りは柔らかくすべすべしている。


 一体どうしたんだ。このコタツを中心に、何故かハーレムが出現しているじゃないか。まさか、それがこの四次元掘り炬燵の機能なのか? 本当にそうなのか?


「もう。ミミちゃんまで何やってんの? これだから自動人形は困るんだよね」


 すかさず我が愚妹が突っ込みを入れてきた。しかし、自動人形が困るとは何なんだ。


「自動人形って、ロボットじゃないのか?」

「それが違うんだよな。ミミちゃんはね。遠い星のとある帝国の技術で作られているんだ。CPUとは別に精神体が封入されているの。人間の魂みたいなものらしいけど、それでものすごく人間っぽい言動をするんだ」


 そう言われてもよく分からない。


「そうそう、四次元の話だよね。このコタツには色々機能があるんだけど、先ずはゲーム。スイッチオン!」


 愚妹の掛け声でコタツの天板が光り、大き目のどんぶりとサイコロが三つ出現した。


「あっちゃー。今日はチンチロリンかよ。これじゃあ運任せだぜ」


「ゲームって?」


「このコタツの機能さ。複数のゲームの中から一つ召喚できるんだ。それも、本物のリアルな奴を」


 確かにリアルだ。出て来たのはどんぶりとサイコロ三つだけだが。


「麻雀だと全自動卓になるんだけどな。花札やトランプ、モノポリーなんかも出てくるんだぜ。さあ兄貴、勝負しろ。このポッキーを賭けてな」


 天板の上にポッキーが出て来た。


「これを賭けるのか」

「そう。賭けられるのは一回に三本まで。手持ちが無くなったら負け、負けた方は勝った方の言う事を何でも聞く。いいな」


 何でも言う事を聞く。本当なのか?


「信用しろよ。兄貴が勝ったら何でも言う事を聞く。そうだな、星子の胸触り放題ってのはどう?」


 願ってもない……。いや、良いのか?


「好きにしてください。もっと先に行きたければ……思いっきりどうぞ♡」


 頬を赤らめ星子がつぶやいた。


 ドクン!


 心臓の鼓動が一際大きくなった。


 信じられない。こんな幸運があっていいのか。しかも、本人が承諾しているじゃないか!


「私が勝ったら、兄貴のPCを初期化します」


 しまった。罠だったのか。


 星子は餌、愚妹の目的はそこだった。俺が苦労して集めた珠玉のコレクションを全て消し去るつもりだったのだ。


 星子の胸に目が眩み、愚妹の策に嵌ってしまった。


 これはもう勝つしかない。


「最初は親を決めるわ。さあ、馬鹿兄貴。サイコロを振りなさい」


 愚妹が叫んだ。

 俺は卓上のサイコロを掴み、どんぶりの中へ放り投げた。


[多分続くよ……]


綾川家におけるチンチロリンのルール。

・親は持ち回り。勝てば続けられるが負けると親落ち。

・目が出るまでサイコロを振るが、三回振って目が出なければ目無しとなり負け。

・サイコロがどんぶりから出た場合は場外として負け。

・親、子の双方がサイコロを振って勝負する。親が役を出しても子はサイコロを振ることができる。子が同等の役を出せば引き分けとする。

・賭けるものは飴玉やチョコ、ポッキー等の菓子類とする。現金は厳禁。


・以下、役の一覧


三個のサイコロを振り、同じ目が出てもう一つの出目の大小を競う。数字はサイコロの出目。


親が①①⑥なら6、子が②②④なら4で親の勝ち。


役が出れば倍付、三倍付とする。

④⑤⑥:シゴロ で倍付。

①①①などのゾロ目:嵐で三倍付。親と子が嵐の場合は数字の大きい方が勝つが、ピンゾロ(①①①)が一番強い。

①②③:ヒフミは通常マイナス二倍付だが、綾川家ルールでは不採用。


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