第5話 勝負の結果は

 先ずは親決めだ。ここで親を取り先行できれば勝率は高くなる。俺はサイコロを振った。


 チンチロリーン!


 ①②③


 いきなり最悪の目が出やがった。①②③はヒフミと言って、その目が出た時点で負けが確定するのだが、我が綾川家ルールではタダの出目無し。冷や汗をかきながら二投目。


 ①①⑤


 来た。良い目だ。妹が4以下を出せば俺の勝ち、親で始められる。


「良い目を出したわね。負けないよ」


 目をぎらつかせ妹がサイコロを振る。


 ④⑤⑥


 何だ!

 何のイカサマだ?

 いきなりシゴロが出るなんて!


 ポカンと口を開けた俺の顔を見て勝ち誇る愚妹である。


「私が親ね」


 顎をしゃくりあげ俺を見るその眼付はやはり尊大だ。しかし、これは単なる親決め、勝負はこれからだ。綾川家ルールではポッキー三本までと決まっているのだが、俺は勝負に出ることとした。


「お前が親でいいぞ。ただし、一回に賭けられるポッキーの本数を10本にしよう。早急に決着させるためだ」

「分かったわ。上限は10本」


 妹が頷く。俺はポッキーの包装を破り、10本を取り出して張る。綾川家ルールでは、先ず子がサイコロを振る。


 チンチロリーン


 ④⑤⑥


 来た。倍付のシゴロ。これは良い先制パンチになる。思わず笑みがこぼれる。

 妹は不敵な笑みを崩さない。


「シゴロを出せば引き分けだし、嵐を出せば二倍付で私が勝つわ」

 

 そんな役が簡単に出てたまるものか。

 妹は自信満々にサイコロを振った。


 チンチロリーン


 ①①①


「キタ――(゚∀゚)――!!」


 ピンゾロ。嘘だろ。


「知子ちゃんすごーい!」

「凄いよ知子ちゃん」

「さすが姐さん。引きの強さはけた違いです」


 羽里と星子は両手を挙げて喜んでいるじゃないか。こいつらは俺の味方じゃなかったのか。そして自動人形のトラントロワ型は何やら妹に従属しているかのような口調をしている。


 不味い。


 星子のお色気は罠、そして周囲に味方はいないのだ。


 俺は20本のポッキーを払った。ポッキーは17本が二袋なので計34本。残りは14本。ここは慎重にいくべきか、勝負するべきか。


 間を取って7本を張る。


「行くぜ」


 今度こそ良い目を出す。そう念を込めサイコロを振った。


 チンチロリーン


 ⑥⑥⑤


 悪くない。


 しかし、妹は口角を上げせせら笑う。


「これで終わりにしようか!」


 チンチロリーン


 ④⑤⑥


「おっしゃあ~!」


 何と、またシゴロを引いた。信じられない。


「凄い凄い」

「うっひゃ~」

「芸術的です」


 羽里、星子、そして自動人形が称賛する。俺は目の前が真っ暗になる……そう、比喩ではなく本当に真っ暗になった。信じられなかった。


「さあ兄貴。PC初期化しようか」

「マテマテ。何で俺のPCを初期化したいんだ。お前には関係ないだろう」

「関係あるんだよ。家のPCは全てネットワークで繋げてんの。あんたのPCにあるエロ動画がHDDの容量圧迫して困ってるんだよ。それに、何処から仕入れたか知らないけど、無修正ものがあんなにゴロゴロしてちゃね。同じ家にJKがいるんだから控えてくれるかな」

「何時の間にそんな事を……俺のプライベートはどうなるんだ」

「通報しないんだから我慢しろよ」

「頼む。勘弁してくれ。他の事なら何でも言う事を聞くから」


 ニヤニヤしながら俺を見つめている知子。

 俺の方をキリっと睨みながらぼそりと呟いた。


「聞けないね」


 そう言ってパチンと指を鳴らす。

 すると目の前にあったどんぶりとサイコロが消え、代わりに俺のノートPCが出現したではないか。

 電源コードを差し込み液晶パネルを開く。

 そして電源を入れる。


 パスワードはあっさりと入力され、メニューから設定、更新とセキュリティ、回復と進められた。そして、個人用のファイルを削除してWindowsの再インストールを実行されてしまった。


 さらばわが友よ。我が盟友よ。

 我が心の支えとなってくれた事に深く感謝する。


 俺は君の事を一生忘れないだろう……。


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戦場はコタツにあり 暗黒星雲 @darknebula

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