戦場はコタツにあり
暗黒星雲
第1話 謎の侵入者
俺はコタツの中で混乱していた。
突如、自宅に侵入してきた誰か。コソ泥だろうか。俺は
何故この家に入ってくるのか。
狙っているのは何だ。先日、ローンを組んで買ったスピードマスターか。それとも、東郷提督が使っていたものと同型のツァイス双眼鏡か。
どちらも時価数十万円。自分の部屋に仕舞ってある。
口惜しいが、被害がそれで済むなら安いものかもしれない。命には代えられないからだ。
そう、あの二人組は拳銃を持っている。
一人は弾倉を外したり装着したり、スライドを引き撃鉄を戻す。玩具のように弄んでいる音がひっきりなしに聞こえる。
もう一人は家探しをしている。
「この部屋にはねえぜ」
親父の書斎から出て来た奴が言う。
「なあ、本当にここにあるのかよ」
「ああ、間違いない」
ここにあるとは何だろうか。
「三谷の奴の隠し財産とか、本当か?」
「ああ、本当だ。時価300億相当と言われてるからな」
三谷?
思い当たるのは妹の通う高校の教師だった。
そういえば昨日、妹が何か等身大の人形を持ち帰った気がする。
その時、いないはずの二階から誰かが降りてくる音がした。
トントントン。
軽やかな足取りで降りてくるその音は妹ではない。
あいつはいつもドタドタと余計な音を響かせるからだ。
「誰だお前は!」
「つーか、こいつ人間じゃねえ。ロボットだ!」
一階に降りて来たらしいその誰かに対して、二人の泥棒が叫んでいる。
「貴方たちは私に用がるのでしょう。わざわざ不法侵入しなくても、呼んで頂ければ出てきましたのに」
「お前、何ていう名だ?」
「私はトラントロワ型自動人形、個別名称はミミと申します」
「よくわかんねえけど、お前が三谷の隠し財産なのか?」
「さあ、私が先生の隠し財産なのかどうかは判断しかねます。ただ、私はこの地球において大変高価であると認識しています。日本円にして、恐らく10兆円以上の価値があるでしょう」
「うおー。すげえ!!」
泥棒二人は歓喜している。それはそうだろう。10兆円以上の価値があるロボットが自分たちに従う意思を見せたのだから。
「さあ、行きましょうか。他の方に迷惑をかけるわけにはいきませんから」
「そうだな。へへへ」
「おねえちゃん。顔はロボットだけどいい体してんな」
「申し訳ありませんが、お触りは禁止です。触ると痛い目に遭いますよ」
「え? いいじゃん。ちょっとだけ」
バキッ!
ものすごい音がした。
「うっ腕が折れたぁ!」
「なにしやがる」
「お触りは禁止だと説明して差し上げたはずですが」
「そんな問題じゃねえ」
ガチっと撃鉄を起こす音がした。
しかし、すぐに男の悲鳴が上がる。
「指が折れる!」
「こんな手の届く範囲で拳銃を向けるなんて馬鹿ですか? 撃鉄を抑えれば弾は出ませんし、ちょっと外側にひねるだけでホラ、こんなに痛い」
「止めろ、放せ!」
「やめませんよ」
ゴキゴキと骨が折れる音がする。
男は叫んでいる。
「うぎゃああ!」」
「うーん。うるさいですわ、お二人さん」
バキッ!
ゴキッ!
更に殴打する音が聞こえる。
男二人は気絶したのか静かになった。
俺は恐る恐るコタツから出た。
何故か右手にコンビニで買ってきたフルーツナイフを握りしめていた。
「あら、お兄様も私と戦いたいのですか?」
目の前には全身ガンメタリックで赤い瞳のロボットがいた。俺は戦う意思などないとアピールしようとしたのだが、そのロボットのパンチを浴びてしまったようだ。
そこで俺の意識は途絶えた。
[多分続きます]
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます