第7話妹と髪型と勉強会

  倉間の椅子事件? があってから数日が経った。


  あれからは特に変わったことは無く、部活も相変わらず秘織の頭の悪い頭の良い理論を試すだけの日々が続いている。


  「お兄ちゃん! お母さんがご飯出来たって」


  朝から元気よく俺の事を部屋に起こしに来たのは今年中学生二年生になった俺の妹である符灯雫風ふとうしずかだ。

  明るい性格で勉強、スポーツ共に優秀の自慢すべき妹である。

  フリフリと左右で揺れている黒のツインテールがチャームポイントだ。


  そういえば秘織と雫風は同じ髪型だな。ツインテールて印象的にはアホそうなイメージだが・・・・・・。


  その辺の含めて今日秘織にも聞いてみようと思いつつ、朝の支度を済ませて食卓に着く。


  「ねぇねぇお兄ちゃん。そろそろ中間試験の次期なんだけどもし暇だったら勉強見てくれない?」


  向かい側で朝食をとる雫風から言われて、そういえばもうそんな時期かと思い出す。

  勉強を見て欲しいと言っているがそんな心配がないくらいには雫風は勉強が出来るため空返事を返しておく。


  雫風よりもあいつの方がよっぽど心配なんだよな。


  そんなことを考えていると、流されたことが気に食わなかったのか雫風は頬を膨らませて身を乗り出してくる。


  「その顔は他の人のことを考えてるな。ーーーーじゃあその人も家に連れてきて雫風と一緒に教えてよ!」


  「えっ・・・・・・。」


  雫風はそれなら一石二鳥でしょと当然のように言っている。


  秘織を家に連れてくるだと・・・・・・。連れてくること自体は構わないが、あの馬鹿が雫風に伝染ったらと思うと・・・・・・。


  しばらく考えて、流石に雫風がああなることはないだろうと結論づけて落ち着く。


  「まあそうだな。声はかけてみるよ」

  「流石お兄ちゃん! 愛してるよ」


  とびきりのウインクを頂いて、はいはいと頭を撫でてやると雫風は嬉しそうな顔をした。



  教室に着いて本を広げると、いつもの様にキラが近づいてきた。


  「なあ凪。もうそろそろテストなんだ」

  「知ってるけど」


  当たり前のことを危機迫った顔で言ってくるキラを見て、こいつもいつも通りだなと思いながら顔を向ける。

 

  「ーーーー勉強教えて」


  なんかそのセリフだけで可哀想な奴に見えてきてしまうがそこは黙っておくことにした。

 

  「悪いなキラ今回は先約があるんだ、なんとか頑張ってくれ」


  すんなり断るとキラは丸い身体を更に丸めてとぼとぼ去っていった。

 


  放課後になり部室に向かうといつもは先に来ている秘織がまだいなかった。

  仕方がないと適当に座って本を読んでいると、いつもは気が付かなかった事にも気づいてくる。

  まず外の音がほとんど入ってこない。かすかに聞こえるのは校庭を使って練習をしていると運動部の声のみだった。

  更に周りに高い建物がないため夕日が直接教室に入り込んでくる。


  立地と雰囲気だけなら図書館よりも勉強が捗りそうな場所だなここは。


  そうして思考を巡らせていると廊下の方から足音が近づいてくる。

 

  「ごめんなさい凪、少し用事があって遅れたわ」


  少し疲れた様子の秘織が教室に入ってきた。

  よっこいしょと腰を下ろした秘織は疲れ以外にも何か違和感があるように思えた。

 

  「なに? もしかしてどこか変なところがあるかしら?」

  「いや別に変なところはない。ただいつもと少し・・・・・・・・・・・・。ああ、髪型か」

 

  いつもはツインテールにしている秘織が今日は何故かポニーテイルになっていた。


  「ああこれ。別に特別なことはないわ、ただの気分だから」


  髪型について聞こうと思っていたが、気分で変えるなら大した意味はないのかもしれないと自分の中で解決した。

  それよりももう一つのことについてとっとと喋ってしまおうと思って口を開く。


  「なあ秘織、もうそろそろテストだがーーーー」


  話題を切り出すと秘織は露骨に嫌な顔をする。それだけでやはりかと思うことが出来た。


  「勉強見てやるから家に来ないか?」

  「・・・・・・・・・・・・え?」

 

  嫌な顔をしていた秘織の表情が突然驚きの表情になる。

 

  「え、なに? 家に来いって、もしかして何かやらしいことするつもりなんじゃ・・・・・・・・・・・・」


  そう言われて自分が何を言ったか自覚して顔が赤くなる。


  確かにこれじゃあただ勉強を言い訳に秘織を家に連れ込んでるようにしか聞こえないじゃないか!


  気持ちを落ち着かせるためこほんと咳払いをして、しっかり説明する。


  「あー、そういう訳じゃなかったんだが言い方が悪かったな。実はーーーー」


  今度は変な言い方にならないように、朝の雫風との会話の内容を説明する。

 

  「まあそういう訳何だがどうだ?」

 

  秘織は少し悩むような仕草をとった後に、まぁそうねと言って顔を向けた。

 

  「あんたにそこまで心配されてるのはちょっとムカつくけど、私の成績が悪いのも事実だから是非勉強を見てもらうわ。それに妹さんにも会ってみたいしね」

 

  快い返事を貰えて安堵すると秘織がでもと言って指を指す。

 

  「言っとくけど変なことしたら許さないからね。警察よ警察」

  「うるせぇ分かってるよ。妹の前でそんなこと出来るか!」

  「じゃあ妹がいなきゃしてたんだ、やらし〜」


  冗談めかせて言ってくる秘織のイタズラっぽい表情に内心ドキッとしながら全力で抗議する。


  何はともあれ秘織の成績アップのための勉強会の開催が決定したのだった。

 

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