一面を赤に染め咲き誇る彼岸花のように、鮮やかで威烈な「生」の物語。
本能のままに生きる「リコリス」たちは、一人一人が違う欲望を抱いている。可憐で過激な少女たちが相見えたとき、欲望と欲望が激しくぶつかり合うだろう。
命がけの戦いを繰り広げる少女たちは、ヒトならざるものだとしても……、それでも確かに――この場所で「生きている」のだ。
この作品に出会い、強い衝撃を受けました。なんて濃厚な作品なのだろうと。
筆者の卓越された文章力。知れば知るほど深みに嵌っていく世界観。群像劇として点と点を結び、惹き込んでいく構成力。そして、どの子を挙げても個性・魅力溢れるキャラクターたち。
こんなに強く惹かれた作品は初めてです。
私事ではありますが、私がカクヨムで本格的に活動し始めたきっかけを作ってくださったのが、LycoriTH――リコリス――です。この作品に出会えたこと、心より感謝いたします。
荒廃した都市トウキョウで、あなたもこの衝撃を味わってみませんか?
男性の血を好物とする少女たちを「リコリス」と呼んだ。
そんな彼女たちが支配する都市「トウキョウ」は、かつての首都の姿は消え、廃墟と殺戮の場所となった。
そんなトウキョウで好き勝手に生きるリコリスたち。
チェーンソーを振り回し、愛する人間と友に勝手気ままに過ごすドロシー。
強さを求め愛刀と共に同族を狩るクロユリ。
狂った都市で理想の王国を作ろうとする有栖。
一見すると可憐な少女たちの内に潜んだ狂暴性。
それは本能というものであり、少女たちが求めるものはそれぞれ違う形をしています。
頭で考えるよりも心で感じたままに動く。社会という枠に収められた人間たちに与えられたある種の解放なのかもしれません。
それが良いのか、悪いのかは賛否両論あるのでしょうが、少女たちにとって他人の意見など、どうでもいい。だからこそ可憐であり、爽快なのだと思います。
廃墟となった都市で少女たちが繰り広げる戦い。
どうぞ、その結末をご覧ください。
政府から見捨てられ、女であって女でない、異質な生き物リコリスが支配する都市、トウキョウ。
荒廃したビルの間で、今日も紅い花が咲く――。
リコリスの少女ドロシーと彼女の恋人である里砂の二人を主軸に、さまざまな人物が絡んで織りなす群像劇です。
淡々と織りなす文体が描く、さまざなま欲望を抱えたリコリス達の姿は艶やかで、魅入られたらどんどん読み進めてしまいます。
レイティングの関係上、好みがわかれるところではあるかと思いますが、文章のせいか、私自身はそれほどスプラッターだとは感じませんでした。
己の欲望を胸に、紅く、艶やかに咲き誇るリコリス達。
彼女達の生きざまに、ふれてください。
※こういった方にお薦めです
□グロエロバイオレンスが好き
□可愛くて元気いっぱいな女の子が好き
□とにかく蹂躙されたい街が崩壊してほしい
□美女が好きだけどいちゃいちゃしているのも好き
これらを存分に味わえるのが「LycoriTH」です。
「セルフオールレイティング」「スプラッター」等の注意書きよろしく、血染めで鮮やかな世界観、寿命が三行ほどで尽きたり三行で情事に耽るような過激かつ刹那的な文章、そして血を浴びながらも自我を強く持ち続ける「化物」であり「人間」の少女達。どれもこれもが刺激として読者を魅了とさせます。
タイトルは訳すると「彼岸花」です。手を出してしまいたくなる程に妖艶な毒花、それを比喩として怪物と恐れられる突如として生まれた生命体の「リコリス」。彼女達の赤は血を求める者として、または鮮烈な生を求めるものとして、あるいは何かに求められる者として周囲を翻弄させます。
それは激しいのだけれど、「切なく儚い」のです。
時に、彼岸花は花は咲くが実を結ばない「徒花」であることも知られています。リコリス達により欲望と衝動の街と化したトウキョウ、そこで彼女達は日夜激情を振りまくけれど永遠ではない。多様な「異常」も「狂気」も、生きるものとして終わりはいつか訪れてしまう。それと隣り合わせになりながら、彼女達は生きています。残虐の裏で育った純粋を抱きながら生きています。それを見てしまう度に、恐れ多くも最期まで魅せてほしいと願うばかりです。
死と隣り合わせで輝きと鮮烈に生きる彼女達、酔いしれながら生き様を見届けたいです。