第2話自称神様降臨と異世界への期待

「お主に心当たりがあるんじゃないかのう?儂は天罰を下しただけじゃよ」

 と言い、ホッホッホと笑っている。

 天罰を下されるような事した覚えはないが、仁は一応思い出そうとしてみる。

「あのー、どう思い出そうとしてもそんなことをした記憶は無いんですが」

「ダメじゃのうーダメじゃのうー、神に向かってポンコツ発言しといて記憶に無いだのと宣っちゃー」

 神?今、神って言った?この人。ありえないだろうと仁は内心思う。

 いつもなら大丈夫かこの爺さん、と受け流すだけの仁だが今回に限っていえば半ば信じつつあった。

 もし、この人が本当に神様であるのならいきなり上空に飛ばされるという奇怪な現象にも納得がいくのだから自称神様を神様と信じるのも仕方のないことだろう。

「自称では無いのじゃよ。失礼ではないかのう」

「ん?今、口に出てました?」

 声に出した記憶は無いのだが、相手に伝わってしまっているということは知らぬ間に声に出ていたのだろうと思う仁。

「いやいや、儂は神様なんでな。人の心を読む事ぐらい造作もないのじゃよ」

 あっこの人、本物の神様だわとここで始めて確信する仁。

 (この爺さんが神様であろうと無かろうと心の中で、いるかいないかも分からない神様に一言文句を吐いただけで上空、四千メートルに飛ばすかね)

「だって、ムカついたんじゃもん。仕方なかろう」

(せっま、心せっま)

「儂は神の中でも心の広い方なのじゃがな。戦神のやつなんて怒って大昔に地球で恐竜とか言う生物を火山を噴火させて滅ぼしておったしのう」

 いや、あれ神様のせいやったんかい!と心の中で突っ込む。そんなのでいいのかよ神様……。

 それは良いとして。何も良くは無いが。

「あのー、心の中覗くのやめてもらえません?」

 心を読まれるのは思った以上に気持ちの悪い。これはやられてみて初めてわかる感覚だろうと仁は身震いする。

「ケチくさいのう。そのくらい構わんじゃろうて」

「いやまじで」

「仕方ないのうー仕方ないのうー。儂は寛大じゃから善処してやろうかのう」

(善処って絶対やめる気ないでしょこの人。人ではないけど神だけど)

 このダメ神を相手にしてたら鬱になってしまうと思い、相手にするのをやめる仁。

「んじゃ、僕はこれで」

「ちょ、お主どこ行こうと言うのかね」

 後腐れのないような爽やかな声音で軽快に言い放ち、その場を立ち去ろうとする仁の肩をガシッと掴んで行かせまいとする神。

 お互い数秒、苦笑いを浮かべながら見つめ合う。

「ふざけないでくださいダメ神様、マジで勘弁してください」

「おいおい君、まだ何も言っておらんじゃろうが」

「このパターンは相場が決まってるんですよ。めんどくさい事押し付ける気なんじゃないですか?魔王を倒してこの世界を救う勇者になれだとか何とか言うんでしょ、どうせ」

「もし、それをお願いしたとして何か問題あるのかね?君なら魔王なんてチョチョイのチョイじゃろうに」

「魔王を倒すのは少し面白そうなんですが、勇者になるだなんてそんな恥ずかしい立場になりたくないし。めんどくさい事したくないんですよ」

 とにかくめんどくさい事はしたくないし、誰かにどうこうしろとか指図されたくないんですよ。と、さらに嫌だと言うことを念押しする仁。

「まあまあ落ち着きたまえ。誰もそんなことお願いせんよ。君にはこの世界で自由に退屈せずに、楽しんで欲しいんじゃ。それが儂にできる最低限の罪滅ぼしじゃからのう」

 それはいったいどういうことかと訝しむ仁。

「君を生まれ落とす世界をこちらの手違いで間違えてしまったからのう」

 普通の人がこれを聞いたら驚くだろうが、仁はなるほどなと納得していた。

 自分の並外れた頭脳に尋常ではない人外の力。

 普通ならありえないポテンシャルだが、生まれる世界を間違えたというのならそれもまだ納得できる。

「そうだったんですね。わざわざありがとうございます」

「怒っていないのかね?儂ら神々のせいで色々酷い目にあったじゃろうに」

 たしかにこの圧倒的なポテンシャルのせいで地球では色々な目にあったが、神様達にも色々事情があったのだろうと仁は思う。

 地球での様々な出来事を神様のせいにするのはお門違いというものである。

 むしろ、何十億といる内の一人にわざわざ罪の償いにくるとはこの神は良い神なのだろう。ちょっと捻くれているが。

 そんな話は正直、仁にはどうでもよかった。

 退屈な世界から脱退できる事に対する歓喜、未知の世界への期待。

 そういった感情で仁は満たされていた。

 今までの出来事を全てチャラにできるほどの一大イベントでしか仁にとってはない。

「この世界は僕でも楽しめるのでしょうか」

 仁は真剣な目で神様に尋ねる。

「少なくとも退屈はせんと思うがのう」

 神様はホッホッホと笑いながら言っているが、仁は嘘をついていないと認識する。

 神様の発言はなぜか本当だと感じさせる何かがあった。

「この世界について色々と説明しておくとするかのう」

「いえ、大丈夫です。それを聞いてしまうと面白さが半減してしまうので」

「本当に良いのか?苦労すると思うんじゃが」

「そっちの方が面白いんで。大丈夫です」

「そうかのう。まあこれ以上どうこう言うのも不躾じゃろう。一応、君には言語理解と文字理解は付与してあるからその辺は大丈夫じゃろう」

 それでは楽しんでのう。と付け足してその場には最初から何も無かったかのように神様は消える。

 











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地球最強は異世界でもTueeeです。 美涼珈琲 @ayuzawanatsuki

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