地球最強は異世界でもTueeeです。

美涼珈琲

第1話退屈な世界から期待の世界へ

 この世界にはもう飽きた……。

 そう感じたのはいつのことだったかもう覚えてはいない。

 ある日、暇を持て余していた陽織仁ひおりじんは日向で寝転び、読んでいる小説に感心していた。

(こんな世界があれば俺も暇せずに済むんだがな。まあ、俺の相手ができる奴がいるのかは難しいところではあるが)

 などと、ありえないことを口にする仁。

 普段なら口にすることない言葉が出たのは暇が故の産物だろう。

 この手の小説があるのは知っていたが、自分には縁のない話だろうと思っていた。

 ありとあらゆる書物、文学作品から参考書まで有名どころに限らず今まで読んだ本はしている。

 仁はおおよそ人間とは思えない卓越した頭脳をしている。

 その頭脳でこの世界のすべてのことわりを知識として携えているいるのだから、暇を持て余すのは仕方のないことだろう。

 全てのことにおいて見るだけで、そのあと何が起こるのかわかってしまうのだから無理もない。

 いや、それだけならまだこの世界を退屈に感じたりはしなかっただろう。

 頭脳の良さに引けを取らない。否、その圧倒的な頭脳ですら見劣りするほどの身体能力が仁にはある。

 その身体能力についてはゆくゆくわかることだろう。

 話を戻そう。仁がなぜ、普段なら縁遠いであろう異世界転生モノの本、所謂いわゆるライトノベルと呼ばれている本を読んでいたのかとゆうとその手のジャンル以外に読んだことのない本がなかったのだ。ただそれだけのことである。

 正直、面白く無いだろうと思っていたのだが、予想に反して存外面白い。

 この本の世界では自分の知識が全く通用しないのである。こんなに楽しいことが他にあるだろうか。

 なるようになる世界地球なるようにならない世界異世界、どちらが仁にとって面白いかは明白である。

(もっと、面白い世界に転生でもしないもんかな。俺をこの世界に生まれさせた神様はよっぽど、ポンコツなのだろう)

 罰当たりな心情を心の中で吐露した瞬間、仁は予期せぬ事態に臨戦体制をとる。

 あたり一帯が光に包まれたのである。

 何事か、世界のありとあらゆる理を知識として所持している仁ですら、理解できずに固まっていた。

 一瞬の硬直の後、浮遊感に襲われる。光により視界を閉ざされていた仁は目を開けると同時に驚愕する。

「ふぐあげるがああーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 と声にならない声をだして仁は高速で落下する。

 そう、仁は標高四千メートルから現在進行形で落下しているのである。

 このまま落下した場合、十中八九、人間なら跡形も残らず死ぬだろう。

 確か水面から約七十五メートルからの落下ですら人間では生存例がないと、記憶している。

 何かいい案はないのかと考えるが、思いつかない。

 逡巡の後、残り十秒ほどで着地するであろうといったところで仁は考えるのをやめ、着地する覚悟を決める。

 ズドオオオオオオオオオオオオオオオン!と鼓膜を破らんとする爆発音が、あたり一帯に響き渡る。

 その音源となる場所の真ん中には深い穴が空き、半径数キロメートルにも及ぶクレーターが円を描くようにあたり一帯にできている。

 当の仁はであった。外傷が見当たらないだけで、今までに味わった事ない痛みに襲われ苦悶の表情をしているが。

 仁は落下が始まったと同時に瞬時に状況を理解し、この高さなら自分は死にはしないだろうとはおもっていた。

 この高さなんて軽い言い方はしているが、仁以外の何者かであったなら確実に跡形も残らなかっただろう。

 仁は死なないとは思っていても、内心焦っていた。なんせ、初めての経験である。死なない自信はあっても保証は無いのだから当然だろう。

「ところで、納得のいく説明は出来るんですよね?」

この状況を唯一説明できるであろう爺さんに満面の笑みとほんの少しの殺気を込めて問いかける。









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