結末
神様の計らいで、私はいろいろなものに転生させられた。犬、猫、鳥、魚、植物などの生き物から、金属に建物など本当に様々だった。ただし、有名どころの勇者にも聖女にもスライムにも蜘蛛にも当たらなかった。
転生後の寿命はそう長くはないようで、最長でも10年程度だった。そのため、慣れてきたと思ったら、突然の死を味わうことになった。
数えきれないほどの生き物、無機物、ありとあらゆるものに転生させられても、なぜか私には自我が残っていた。転生先の自分の身体を俯瞰しているのがわかった。
『お主は、本当に珍しいものだ。普通は2~3回程度で、精神を病んでしまって、壊れてしまう。』
あるとき、転生先の寿命を終えて、最初に神様と出会った場所で次の転生を待ってきたときのことだ。神様に言われてしまった。
『それに、どうしたことか。お主はちっとも楽しそうにはみえんのう。いったい、お主の退屈を紛らわす方法はあるのかい。』
そのころには、私は、自分が退屈していた理由がわかってきた。私が人間の女性だった頃も今も一つだけ変わらないものがあった。そこが変わらないことには、何度転生しても、退屈がなくなることはない。
私が神様に返事をしないことに不満を持ったのだろう。さらには、私の心の中を読んだようだ。きっと驚くだろう。なぜか、一度も神様の顔を見たことはなかったが、きっと今頃驚いた顔をしているのが想像できてしまう。
『お主、まさか……。』
「おかしいとは思っていた。でも、指摘したら、せっかくの神様の好意を台無しにしてしまう。でも、いい加減気づいた。私は……。」
『………。』
私は白い地面に拳をたたきつける。パりんと音が鳴り、白い空間にひびが入る。空間に歪みが生じ、私の目の前に一人の少女が姿を現した。その姿は驚くほど私によく似ていた。
『まったく、ようやっと気づきおって。それがわかれば、我がいる必要はない。おとなしく、元いた場所に帰るとしよう。』
そこで、私は目が覚めた。そう、目が覚めたのだ。ここは病院だろう。
そう、わたしはあの日、自殺できなかった。自殺未遂だったのだ。結局死ぬことはできなかった。自分の手を見る。生前見た手のひらよりも、しわがずいぶん増えていた。
長い夢を見ていたようだ。しかし、内容は覚えていない。それでも、今から自分が何をすべきかわかっていた。窓をちらりと見ると、時刻はちょうど夕方で、真っ赤な夕日が病室を照らしていた。
私は吸い寄せられるように窓に近づいた。窓から階下をのぞくと、結構な高さがあった。無意識のうちに私は窓を開けて、柵を乗り越える。
「……。」
今度は迷わなかった。飛び降りだして思い出すことはない。ただの退屈な日常ですら、思い出せない。
この日、一人の女性が自殺した。遺書は残っていない。自殺未遂で、10年間も眠っていた女性は、目覚めたと同時に自殺を図ったのだった。
私が退屈しない転生先はあるのでしょうか! 折原さゆみ @orihara192
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