倉敷紗々は地方銀行で働くアラサー独身腐女子。両親から結婚を急かされた彼女が、結婚相談所を通じて仕方なく結婚した大鷹攻は、交友関係が広く、趣味はアクティブ、おまけに気配りの効く紗々とは正反対の好青年。そんなコミュ障妻とリア充夫の凸凹夫婦の日常がじれったくて悶えます。
「いつかは離婚する」という条件付きでプロポーズを受けた紗々は、結婚しても夫を名字で呼ぶ、お互いの趣味やプライベートには干渉しない、部屋は別々で肉体関係も一切ナシという徹底ぶりで、まったく新妻らしくない。
大鷹さんを選んだのも「BLが似合いそう」という最低な理由なのだが、夫である大鷹さんは紗々に一途なだけに報われない。長年の「おひとりさま」をこじらせた妻をなんとか真人間に更生させて普通の夫婦生活を築くために奮闘する夫に同情してしまう。
離婚理由を探す紗々だけれど、大鷹さんが他の女性と親しげにしたり、周囲から浮気や不仲を噂されたりすると何故か気分がもやもやしてしまって、自分の感情に戸惑う姿が初々しい。
正直、紗々の性格は非常に面倒くさい。けれど結婚生活に魅力を感じず、自分の時間を大切にしたいというのもイマドキ女子の本音で、現代では何らおかしくないのかもしれません。
(「結婚はふたりの始まり」4選/文=愛咲優詩)