死神のサービスディ
低迷アクション
死神のサービスディ
死神のサービスディ(気まぐれ)
「全部はずれ~。残念だが、君の“チャレンジ”は終わりだ~よぅ?」
正に“死の宣告”に等しい言葉を告げられた“太目の少年”は彼の後ろ…
廃墟の冷たい床に転がる“死んだお友達”をひと目見た後で、
哀願するようにこちらを振り向き直す。彼にとって、今日は“人生最後の日”になる訳だが、私にとってはどうでもいい。こっちは別に特別な日でも何でもない
“暇つぶしのゲームをする”だけだもんな。
そのままニヤリと笑い、手を翳す。少年の目が色を失い、崩れ落ちる。今日の収穫は2つ。
残りは後1人。強気な目をした少年(以下、強気少年と略そう)
彼にも精一杯の猫撫で声で、ゲームを促す。
「さ~て、次は君の番。どうする~?願いを叶える~?それともお友達を助ける~?」
強く唇を噛しめた彼が口を開く。
「勿論、皆を助ける。」
「グレイトォ~、それではゲームゥスタートォ~!」
私は嬉しそうに手を叩き、ゲームの内容となる射的を並べ始める。
(この分だと、今日は3つの命をGETできるかも?フフッ)
そう考え“ニヤリ”と自分でも言うのもアレだが、嫌らしく、とても嫌らしく唇を歪ませた。
紹介が遅れたが、私は“死神”仕事は、人の魂をあの世に連れていく事。いつもは
事故とか病気、時には殺人で死んだ魂も扱うんだけど、
たまに気まぐれというか、副収入的な感じで、人間達にゲームを持ちかける。
まぁ、死神だって人間と同じで、頑張った分だけ働きが認められ、報酬とか良い待遇を
受けれるって訳。
ゲーム対象者は子供がいい。何でかっていうと、命にも値段や価値があって、
功績とか良い事をした人(悪人は駄目ね)っていう付随効果がない時は
“ガキ”の魂が“一番価値高し”な訳よ。
さて、気になるゲームの内容は射的。こちらが用意した銃で、並べた複数の的を一つでも
倒せばいい。一つの的につき、願いを一つ叶える。
(一応、死神っていう超自然的存在だから、大抵の願いは叶えてあげる事が出来る訳よ。)
最初に与える持ち球は3つ。大抵の人が、だいたい外す。ここからがミソ。弾が切れて、
そのままゲームを終わらせる事を選べば、参加した奴の記憶を消してお終い。
追加の弾が欲しければ、自分の行った“良い事”の数だけ弾を得られて“特別ゲーム”が
始まる。
この良い事に関して言うと、規準もいっぱいあるけど、計算方式は全部こちらで換算して
数を教えてやるから簡単だ。要はこちらの思うがままって事。相手の力量次第では、数を
減らしたり、増やしたりの細工し放題。
そしてペナルティもある。通常とは違い、的を一つ外すごとに、プレーヤーの命を
一つもらう事ができる。命を二つ持ってる人間なんている訳はないから、大抵の奴は
的を一つ外し、自分の命を返してもらう願いを叶えるために的を狙う。
ほとんどの奴はその時点で焦って、残りの弾も全て外して、命を奪われる。勿論、
圧倒的不利なゲームに乗る奴は少ないし、そういう意味では子供位の無邪気な年ごろ
の人間がノってきやすいの事実だ。
勿論、誘いの口上も上手く工夫してさ!
「全部外れてしまって、残念!だけど大丈夫!特別ゲームのご案内~的を外した分だけ
命をもらうけどぉ~、命は元々1個。だから平気ぃ~!3発外しても、残りの1発的を当てれば、命は帰ってくるよ~
(時々、外した分のマイナスを補点しなくていいの?とかいうこまっしゃくれたガキも
いるけど、気にしない。細かい事決めすぎるのはフェアじゃない。
だから、的をいくら外しても、一つでも当てれば、命は返してやるって訳さね。)」
話を元に戻すよ。まずは強気少年達3人を誘った経緯をば…
廃墟へ探検しに来た彼等に色々手品を見せ(お菓子を出したり、お金を出したり)
ゲームに勧誘。これは元々調査済みの内容だけど、メンバーの一人、最後の一人の
強気少年の家は、今、お父さんとお母さんの関係が悪くてね。
離れ離れになるかもしれないって不安があるみたいなの。だから、彼の願いは
“家族仲良く暮らす事”他の2人は、強気少年に引っ張られた形となっている。
こーゆう弱みを突いて、上手に話を持って行くのが、死神の特技の一つな訳よ。
子供ってのは成熟してない分、正義漢が強くてホントに助かるね。全く…
さて、残り一人の強気少年。通常ゲームは全て外し(だいたい、ここからが人間的に
本腰を入れるみたい。)特別ゲームを受ける流れとなった。
与えた追加弾は3つ。彼は1発を外し、
もう1発を当てていた。これで、強気少年の命は安泰。残りは1発。
ここで、考えられる、てか出来る選択肢は2つ。勿論、的を当てたらの話だけどね。
一つ目は至って単純。自分の願いを叶える。
2つ目は死んだ2人の友達を助ける。
いやぁ~最大の選択だねっ!家族をとるか!友を助けるか!
こんな幼い子(小学生くらい?)に、人生50年生きてて、絶対なさそうな
選択の場面を与えちゃってるよ!わたしぃ~!
ホント、ゾクゾクするよねっ!?
さてさて、当の強気少年は震えながらも、しっかりと狙いを定め、最後の1発を放つ。
乾いた音を発して飛んだ弾は…
「お見事!見事に的を捉えました~」
倒れた的を片付けるのも惜しみ、拍手をしてあげた私を、少年は睨む。
まぁ、仕方ないよね~しばらく佇む彼の頭の中が見てみたいもんだ。
さ~て、どっちを選ぶぅ?
やがて押し殺したように静かに息を吐く彼は顔を上げ、
「自分の願いを叶える。」
と酷くそっけなく言い放つ。
「わぁ~結構ドライ。最近の子ってハッキリしてるねぇ!」
と喋ろうとする私を遮り、少年は指を一つ上げ、こちらに示す。
「?」
「弾をもう1発くれ。」
「オイオイ、このガキんちょ。世間知らずにも程があるっしょ~?
ルールは説明したよね。もう君の持ち球はないよ?」
と言おうとする口を、更に遮り、強気少年が言葉を発した。
「取り返した僕の命で1発分だ。」
コイツ…
私は表面上ではニヤリと笑い、弾を一発放ってやる。
黙って銃に装填した彼は狙いを定め…
見事、的に当てた…
こちらをキッと強い眼差しで見つめた彼は…
「当たった。これで友達2人の命を返してくれ…」
と言って、そのまま倒れる。
廃墟に沈黙が訪れる…
今回は非常に収穫があったと言っていい。2つの命はもらえなかったが、自己を犠牲にしてまで、友達と家族を救った少年の清く強すぎる意思を持った命は2つどころか
100個分の価値があると言っていい。
色々、高額の報酬とか手当も思うがままだけど…惜しいな。そう考えた私は、数秒の沈黙の後、“それ”を実行した…
「あれ?僕達…なんでこんな所で寝ているんだろう?」
強気少年が目を覚まし、友達2人を起こす。しばらくボンヤリした彼等は、出口に向かって歩きだす。それを上からコッソリ眺め、私は微笑む。
あの子は家庭に帰り、仲直りした両親に迎えられ、幸せを得るだろう。どうかそのまま、
価値ある命を育て、自身と同じ良質の存在をもっと増やしてほしい。そうすれば死神的にも質の高い命を連れていくチャンスが増える。言わば、未来の先行投資という訳。
加えて言えば死神なんて、不死身の病気知らず。報酬があっても、
たいして嬉しい訳じゃない。
だから、このゲームだって、願いは叶わなくても、命は取る事はしない。結果がどうであれ
みんな返してあげてる。これで得た命は皆無。死神の暇つぶしぃ~な訳。
逆に彼のような良質の存在を見れる日こそが、自身にとって最良のボーナスと言える。
だからお礼と一緒に一言。聞こえる筈はないけど、少年の背中に一言。
「坊や。君は頑張った。素敵な日をありがとう。だから、命を一つサービスだよぉ~」
私の言葉に、少年が少し肩を動かした。(聞こえてる訳はない)そんな気がした…(終)
死神のサービスディ 低迷アクション @0516001a
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