余談
Side Lieutenant Aoi-Suruga
駿河の自宅まであと約三十分程度となった時、彼女のスマホから着信音が聞こえてくる。
ディスプレイには相手の名前が表示されていて、駿河はすぐに通話に応じる。
『もしもし!こんばんはのんっ!』
「
『静岡募集案内所近くの用事がもうすぐ終わるから、葵ちゃんと一緒に食事したいと思ったの!どうかな?』
「今、下田港からの帰りなのじゃ。あと三十分くらいはかかるのじゃ」
『それなら、どこかで時間つぶしながら待っててもいいかな?』
「七海殿がそれで良いのなら良いのじゃ。小官も、七海殿と一緒に食事をぜひ楽しみたいのじゃ!」
『良かった!じゃあ、予約入れておくけど、何食べよっか?』
「それなら……小官の知ってる魚の料理屋さんがあるのじゃ。そこに小官から連絡をしておくのじゃ!」
『分かった!えっと、着替えするんでしょ?集合は一時間後位かな?三人の予約でお願い出来るかな?』
「分かったのじゃ。三人分で予約を入れておくのじゃ。所で三人目は誰なのじゃ?」
『ふふ~ん!ヒントは“
「25クウ?……25クウと言ったら、小官に分かるのは第25航空隊……まさか【25空】の彼女もこっちに来てるのじゃ!!?」
『正解!!
「雪乃3尉も水くさいのじゃ。来てるなら教えてほしかったのじゃ」
『まあまあ、葵ちゃん?あとで一緒に食事するんだから、その時にいっぱいお喋り出来るよ?』
「分かったのじゃ。それでは小官は予約を入れておくのじゃ。任せておくのじゃ!」
『ありがとう!それじゃあ葵ちゃん、また後でね!』
駿河は通話を終えると予約の電話を入れ、時々会っている七海と、ひさびさに再会する大湊に、今日の艦艇公開での出来事を話すことに決めたのであった。
Side Lieutenant Ikuno-Ooeyama
特務艇はしだての士官寝室では、大江山郁野こと特務艇はしだて艦魂である橋立が、南極へ向けて航行中の砕氷艦で南極観測船のAGB-5003しらせ艦魂である白瀬と、通信を繋いで会話をしていた。
「……と言うような事がございまして、駿河葵1尉とお話させていただいていましたの」
『へえ?そんなに面白い人なら、僕も夏に清水港へ寄った時、話をしてみたかったねぇ。ああ、でもあの時は見学者さんがいっぱいだったし、それで自分の任務で忙しかったろうから見学してる場合ではなかったろうねぇ?』
「かもしれませんわね?
『それで、偶然を装って駿河葵君と接触して、給養員長と柿崎君を隊員食堂で会談させたのかねぇ?』
「駿河1尉は員長を探しておられたのに、すれ違ってばかりでしたので見ていられませんでしたの。たまたま
『それもあって、幽霊と怪しまれたんじゃないのかねぇ?』
「かもしれませんけれども、
『橋立君も戸惑うことがあるんだねぇ?珍しい事を聞いたねぇ』
「あら?
『そうは言うけれど、橋立君がそういう態度を見せてくれる機会は少ないからねぇ』
「仕方はありませんわよ。早々、
『そういえばそうだったねぇ?それと、今思い出したけど、
「サスケハナさんの見学には間に合いましてよ?下田港の事なども教えていただきましたの。それと、余談ですけれども、航空自衛官の根山2曹と高校生さんも同じ便に乗っていらしてましたわね」
『航空自衛官君が、サスケハナ君に?』
「なんでもお休みをとって、艦艇公開へ来て下さったそうですの。それで、
『橋立君が驚くぐらいなんだから、よっぽど詳しいんだろうねぇ?』
「ええ、その通りですの。あら?白瀬さん、ごめんなさい。海上保安庁の伊豆波さん達が来訪されたようですわ」
『下田海上保安部の巡視艇君達かねぇ?』
「その通りですの。では白瀬さん、また後ほどお話させていただきますわね」
『了解したよ、橋立君。また後で話をしようねぇ?』
白瀬との通話を終えた橋立は、一度鏡で身なりを整えると自室である士官寝室を出て、下田海上保安部の面々を出迎えに向かうのであった。
葵咲く静岡の地に舞いおりる、防人達へと繋ぐ架け橋~自衛隊静岡募集案内所の1等海尉・駿河葵~ 月夜野出雲 @izumo-tukiyono
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