番外編

おまけ「<2019クリスマスSS> 戦場とメリークリスマス 」

※注意※


今回のお話は、本編が終了した時間列より結構前のお話です。

まだ、平和と心名が結ばれていない頃のお話ですのでご注意ください♨





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 クリスマス。それは一年に一度は訪れる聖夜。

 家族にとっては最高の思い出となるパーティ。恋人同士にとっては最高にロマンチックな夜。街に出れば待っているのは色鮮やかなイルミネーション。



 こんな素敵な夜。特別な思いを寄せる人たちもいるのではないだろうか。



「なにがメリークリスマスだァアアアアア!!!」


 そうは思っていない連中もいることを忘れないであげてほしい。


「どこもかしこもアベックの連中で埋め尽くされてやがるでござる……街中に飾られているクリスマスツリーが変形して、そこらのアベックどもを抹殺してくれないであろうか……」


「なんでお前の嫉妬一つで人類が根絶やしにされないといけない」


 そこらで買った缶コーヒーを片手に平和は呆れていた。



 今日はクリスマス。というわけで、平和達はいつもの面々でちょっと盛り上がることをしようと計画し、やってきたのは何故だかボーリング場。


 三句郎曰く、合法で何かしらを吹っ飛ばせるスポーツがしたいと提案したので、ボーリングで決定したようだ。破壊衝動極まりない形相でクリスマスにボーリングをする姿で実際どうなのだろうと平和はふっと息を吐いている。


「カズくんとデート……カズくんとデート……!!」


 三句郎の事もそうだが、目の前で悶々と見つめてくる心名も心名で恐ろしかった。

 確かに一緒にいることに変わりはないが、これをデートを呼ぶのだろうか。友達同士いつもどおりヤンチャやってるだけでデートではないような気がする。


「あ、ボール持ってくるの忘れた……ちょっと行ってくる」


 五鞠はボーリングシューズに履き替えた後、取りに行く。


「おっと、私も忘れたのだよ! 行ってくるのだ!」


 心名もボーリングのボールを取りに五鞠と共にボール置き場へと向かっていった。



「平和氏~、一緒に行かなくて大丈夫でござるかぁ? 今日はクリスマス。拙者みたいに女に飢えてる獣は沢山いるでござるけれど……そこらの不良たちにナンパでもされちゃったら、大変でござるよ?」


 実際、この時期を狙ってナンパを仕掛ける人も少なくない。三句郎の心配とやらも最もであり、男としてアピールをするチャンスでもある。



「あぁ、大丈夫だよ。そこらの奴なら五鞠が”一掃”出来るから」


「随分と物騒な信頼でござるなぁ……」


 ロマンチックの欠片もない発言に三句郎は呆れるばかりであった。


「よぉし! 俺の全力投球見せてやるぜぇ! 左手は添えるだけ……」


「だからそれはバスケットボールだって……いや、あながち間違いじゃないか」


 ボーリングの球を全力投球。それと同時に揺れるリーゼント。






 そして、思いっきりガーター。

 ガッツポーズでこっちを見つめてくる彼の姿に二人は苦笑いしていた。



「……そ、れ、よ、り、も。平和氏、よかったでござるかぁ?」


「何が」


「用事がうまく重なって、こうして拙者たちと遊んでいるわけでござるが……その気になれば、心名氏と二人っきりでデートも出来たのでは?」


「!!」


 三句郎の発言に平和は顔を逸らす。




 そう、本日、クリスマスは家族で過ごすことはない。

 母親はお店の方で仕事があり、父親も残業で帰ってこれない。妹の友希の方も、最近遊んでいるというオンラインゲームのイベントとやらを友達と遊ぶらしいので予定が空いていない。家族のクリスマスパーティーは後日、行うという事に。


 というわけでフリーになった平和は三句郎に牧夫の三人と遊ぶことに。

 そこへついてきたのが、女性陣二人というわけだ。二人も二人で暇という事で。



 ……その気になれば、心名と二人っきりにすることも出来る。

 三句郎の突然の提案に、平和は少し戸惑っているように見えた。



「どうでござるか」


「……余計なお世話」


 必要ない、と彼は告げる。



「俺と心名はそんなじゃない。必要ないから、そういうの」

「はっはーん、いつものチキンでござるな」

「ボール代わりにピンまで投げようか?」

「やめてください、死んでしまうでござる」


 死にはしないが、お店側失笑モノの大被害であるのは間違いなかった。




「よーし、次は私の番か……おっ、牧夫の奴、ガーターじゃん」

「ぐぬぬ、重いぃ……」


 五鞠の横で、ボーリングの球を重そうに抱える心名。



「……」


 心名をじっと見つめる平和。



「ん? どうしたの、カズ君?」


「ああ、いや。お前、何キロ?」


「57だけど?」


「誰が体重だと言った」



 友達同士の距離。





 ……いつか、本当に言える日が来るのだろうか。

 来年のクリスマス。またいつも通り皆でボーリングに来るんだろうなと、少し寂しい想像をしながらも、平和は友人たちとのボーリングを楽しんでいた。

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