「特殊部隊同人」
低迷アクション
「特殊部隊同人」
「特殊部隊同人」
●オープニング
場所:燃え盛る大都市
登場人物:兵士と魔法少女(各一人ずつ)
・巨大なビルが飴のようにねじ曲がり、その下には地獄の風景のような火炎の大海、そこで
溺れるのは粉々にひしゃげた戦車、バラバラの航空機、ヘリコプター。動く影は
何処にもいない。地獄の風景…いや、いる。カカシ同然に、呆然と佇む一人の兵士の姿が…
ひびと煤にまみれた口が僅かに開いた。
兵士:「どうやら世界はイカれちまったらしい…」
右目に負った傷から血を滴らせながら兵士は食い入るように、その光景から目を離さない。自身が立ち竦む辺りを再度見渡せば、真っ赤に夜空を彩る業火。崩れ落ちるビル群の下には戦車、航空機の残骸、可笑しな形に曲がったヘリコプターが、ゴミ屑のように散らばっていた。昨日まで文明の英知、暴力、進化の象徴全てを担った者が覆された。たった1回の
戦闘行為によって…
どのくらい、そうしていたのだろうか?腕に携えた突撃銃が振動し始める。徐々に
大きくなる音に空を見上げた。夜明けが近い…薄赤くなる空は、戦いの傷跡を生々しく
映し出し…そして
兵士:「あれは・・・」
驚愕に煤だらけの顔面が歪む。空の真ん中が虹色に、赤、青、緑…いや、もっとたくさんの色だ。力彩色豊かな色合いがポッカリと空の真ん中に形成されていく。無理やり空を
くりぬくような摩擦音が町を、世界を震わしている。ようやく敵の正体がわかりそうだ。
部隊に出動がかかってから、およそ10時間…火の粉と瓦礫の中を突き進み、敵の正体も
わからないままに指示された方向に銃弾を撃ち込み、最後には目がつぶれそうな閃光を
浴び、後は爆発に全身を包まれた。生き残ったのは多分、自分一人…宇宙人?怪獣?
それともハイテク兵器で武装した悪の秘密結社か?何でもいい。死にぞこなった自分は
全てを見届ける義務がある筈だ。この世界を壊した奴等の顔を拝んでやる。目を見開き、
光を見つめる兵士の前にふいに影が差す。頭上を見上げる彼の前に、ふわりと軽やかな感じで何かが降り立つ。それに素早く銃を向けた兵士は、しばらくポカンとした顔をして、
その後で思いっきり泣き笑いのような表情を浮かべ、盛大に噴き出し、笑い出した。
兵士:「ハ、ハハハハハァッ!?コイツはいい。マジかよ?こんな事ってあるか?
そういや、ネットで言ってたか?テレビの中に、二次元に行く方法を誰かが
見つけやがったかぁ?なぁ、お嬢さん!」
兵士の前に一人の少女が無言で立ち、こちらを見据えてくる。辺りの廃墟に場違いなくらい
のフリフリ衣装に加え、ピンクのステッキを片手に持っている。その姿は変身ヒロイン?
魔法少女という奴か?場所と状況が違えば、自分がどっかのコスプレイベントに
迷いこんだと思うくらいだ。こちらの声に眉を顰める少女。その目は哀れみを、力ある者が
自分より弱い存在を見つめる時の表情をしている。無言の彼女に、業を煮やした兵士は
銃を素早く向け、叫ぶ。
兵士:「答えろ!この野郎。」
魔法少女:「*×〇☆(何かの呪文を呟く)」
構えたステッキから小さな閃光が走る。軍から支給された突撃銃が一瞬にして溶解し、
兵士の足元に崩れ落ちた。水溜まりのようになった武器の残骸を見下ろす彼は、
自身の最後を静かに悟る。少女をまっすぐ見つめ直す。
兵士:「本当にイカれた時代が来ちまったな。お前等みたいなのが、現実に出てくるなんて。自分(てめぇ)の頭のネジが振り切っちまったみてぇな感じだ。全く…だが、よく
覚えておけよ。自身が殺した敵の顔をな。」
ニヤリと精一杯の虚勢を張り、笑ってみせる。ステッキを構えた少女は一瞬だけ…ほんの
少し微笑んだような顔をする。そのまま自身の武器を下げ、飛び去る少女。後を追うように空を見上げる兵士の目に、より凄まじさを増した光景が映りだす。
空のほとんどを覆いつくした、虹色の空間。もはや、支配したと言っていい。そこから
いくつもの影が飛び出してきている。飛び上がった彼女と同じような恰好の少女に加え、
巨大な竜、ロボット。見た事もない飛行物体に巨大生物群…
世界が変わろうとしている。昨日までの常識、法律、戦闘訓練、自分達が学んできた事が、
まるで敵わない、役立たない戦場が、目の前に現実として姿を現しているのだ。共存して
いくには彼等を受け入れるしかない。上から目線の共存が始まっていくだろう。生き残るためには従うしか…方法がない?いや、違う。自分は生き残った。この戦闘を記憶し
経験している。彼等が何なのかも、理解もしている。それが向こうの情けによるもの
であってもだ!連中に後悔させてやる。自分にトドメを刺さなかった事を!奴等の技術、
能力を学び、同じか、それ以上の存在になってやるのだ。兵士の肩に吊るした無線機が鳴る。
スイッチを押す彼の耳にノイズ交じりの音声が流れてくる。
何処かの部隊:「こちら、エコー中隊、生存者は5名。西のB地区を移動中。空を見たか?
あれは、あれは…我々は一体どうしたらいい。指示を求む!」
生き残りが自分以外にもいたようだ。嬉しさで頬を緩めた兵士は自身に満ちた声で
返信を返す。
兵士:「聞こえている。エコー中隊。俺の名は軍曹だ。降伏はしない。徹底抗戦を続ける。ワレに続け!」
それに呼応するかのごとく、いくつもの銃声と爆発音が遠くの空にこだました…
●チャプター1(原稿作成)
場所:輸送機内部
登場人物:同人兵“伍長”(プレーヤー)
原稿(擬人化少女)“マシンガンナー玲”(マシンガンナーれい)
軍曹(モニターでのみ登場)
報道官(モニターでのみ登場)
・暗い夜空を漆黒のC123輸送機が飛んでいく。目的は原稿作成の素材を集めるため、
ファンタジージャンル居住区を目指している訳だ。飛行機は自動操縦で、一人の兵士と
カプセルの中に眠る少女が、機内で出撃の時を待っている。
旧式の機内は目的地に着くまでに空中分解しそうだってくらいに揺れている。昔は
山岳地域の輸送任務に使っていたらしいが、整備もろくにしてない中古モンでは先が
思いやられる。俺はため息をついて、奥に積まれたこちらの武器となる“カプセル”の
中身を確認する。薄黄色の照明に染められた内部には黒髪の少女が眠っていた。
“コンコン”と窓ガラスを叩いてみる。薄目を開けた彼女が覚醒不完全といった表情で
こちらを見る。
伍長:「レイ、もう少しで降下地点だ。カプセル…開けるぞ?」
玲:「えっ?(やにわに目を開き)ちょっと待ってよ?伍長(慌てた様子で)
まだ着替えのフォームチェンジできてない。裸だから…」
伍長:「構わないよ。だいたい、お前作ったのは俺だぞ?全部知ってるさ。
遠慮はいらない。このままじゃ、地面に着く前に機体が空中で四散しそうだ。」
赤く頬を染め、アワアワする彼女に若干の欲望を覚えつつ、カプセルの開閉スイッチを押す。
“スーッ”いう音と共に開いた空間に目を向けようとした俺は、自身の目を2つの黒い銃口で塞がれた。
玲:「いいから、少し待ってて!(強気&ムーっとした怒り顔)」
伍長:「りょ、了解。」
玲の十八番(オハコ)の45口径2丁拳銃だ。「てことは銃口の下は全裸の彼女ぉ!!」と
期待するが、自分の作ってる“原稿”に殺されたくもないので、おとなしく自動操縦の
コクピットに向かう。濃い雲だらけの機外には、あきらかに飛行機ではない巨大な影が
ちらつく。ドレイク?それともドラゴン…どうやらファンタジーエリアの領空内に入ったようだ。俺は顔をしかめ、苦笑交じりの笑い声を上げた。ついでに後ろにいる玲に声をかけようと振り向いた頬に、先日行った“ミリタリージャンル”から回収してきた素材である
“スペツナズナイフ”が勢いよく掠め、慌てて前を向き直す。
玲:「まだ、着替え終わってないから(とても冷たい声)」
伍長:「す、すまん。(真っ青な表情で)」
前方を向き直し、苦笑いを浮かべる。全く…スゲェ世界に足を突っ込んじまったもんだ…
・場面が変わり、伍長の回想に映る。テレビやネット、あらゆるメディア媒体の中で空を飛びかう竜にロボット、特撮ヒーローのような恰好をした人物達が町を走っていく。映像の隣で解説する報道官が額の汗を拭いながら、言葉を発する。
テレビに映る報道官:「まるで漫画だ…」
視聴者達の投稿映像、政府、報道機関の撮影した映像の中を所狭しと飛び回るドラゴン、その後を追うのは見た事もない戦闘機とロボット群、かと思えば、地上では大剣を持った
女戦士と、骸骨マスクの戦闘員たちが死闘を繰り広げている。額から吹き出る汗を拭おうともせず、絞り出すように呟く彼の気持ちはテレビやPCのモニター越しでもある当時の
俺達も同じ気持だった…
最高の時代?とはよく言ったもんだ。そう遠くない未来、カルチャーパンクか?それとも
技術レベルがメーター振り切ったのか?魔法少女に特殊能力者、変身ヒロイン。それら全ての漫画的要素が現実の世界に現れ始めた。かつてクールなんたらとかいう文化の流行を
起こした極東の我が国では、これを“狂うJAPAN”と名付けたのは、当然の事だったと
思う。元々親しまれてきたメディア媒体の文化が現実に現れるという喜んでいいのか?
それとも恐怖におびえるべきなのか?人々は、大きな戸惑いとそれに続く巨大な混乱と
数多の争いを経て順応していく。今や彼女、彼等が日常を闊歩するのは当たり前となったのは、いい事だと思っている。だが、俺達のやっている事は…
そろそろ博物館行きが決まりそうな代物の輸送機に、これまた無理やり!やっつけで
取り付けた最新型のモニターに光が灯り、強面の兵隊姿が映る。
軍曹:「即売会はそろそろだが?原稿の調子はどうだ?伍長!」
伍長:「勿論!軍曹。上場です。現在はファンタジージャンルに潜入中です。」
軍曹:「なかなかのクオリティの原稿のようだな?いいぞ!」
俺の後ろに視線を移し、右目に走った二本の切り傷を歪ませた軍曹が笑う。この子供泣き顔100%間違いなしの笑顔は、今や全国の交番、各ジャンル内の検問所に“お尋ね者”として張り紙が貼られているだろう。現実と非現実がようやく手を取り合って、落ち着いた所に
“俺達”が現れた。漫画勢力の持つ能力を自分達のものとし、世の中に認められる
“ショーギョウ”を目指す集団、その名は“特殊部隊同人”って訳だ。
(人によっちゃぁ厄介者、テロリストと言う者はいるが…)現在は来たるべき“即売会”に向け、原稿作成中であり、そのネタとなる素材を求めて飛行中って所だ。
こんな解説をしている内に、部隊の指揮官である軍曹の顔が警告なしにモニターごと
砕け散る。後ろを振り向けばまだ着替え中…てか、生まれたまんま姿の玲が2丁拳銃を
構えて、立ちはだかっている。冷や汗を掻いている俺の後ろで、計器類が派手な音を立ててショートする音が聞こえてきた。恐らく、さっきのスペツナズナイフと銃弾がコクピットを壊しやがった。顔を真っ赤にした玲が、思いっきり傾き始める機体を気にする様子もなく、大きな叫び声を上げる。
玲:「着替え終わってないって言ったでしょう~!!(怒り顔で銃弾を発射する玲)
伍長:「いや、それどころじゃねぇって!飛行機落ちるぜ!ってか、着替え長すぎ
だろぉぉぉ~!!(最後は絶叫で)」
玲:「うるさぁぁあ~い!(顔真っ赤で大絶叫の玲)」
一気に急降下する機体。そのままファンタジーエリアに落下する…
●チャプター2(原稿作成:ファンタジーエリア森林内)
場所:鬱蒼とした森の中
登場人物:同人兵“伍長”(プレーヤー)
原稿(擬人化少女)“マシンガンナー玲”(マシンガンナーれい)
騎士エルフ
ドライアド(森の女妖精)
・夜空から墜落した輸送機は森の一角に落ちた。残骸から身を起こした伍長と玲は森の中
での素材集めに行動を開始する。
燃える輸送機の残骸を背に、俺は短機関銃を片手に辺りを警戒中…昼間なら明るい
陽射しに囲まれ、美しい緑を映えさせる木々も、暗闇の中では敵の隠れる危険な隠れ蓑
となってしまう。ついでに言えば、輸送機はいくつもの木々をなぎ倒している。ここの感じじゃぁ騎士甲冑の女剣士に魔法使いじゃなく、森の妖精さんやエルフ達の領分だ。そして
彼女達は自然が汚される事を極端に嫌う。
玲:「こっちは準備完了。いつでも行けるよ?」
隣に立った玲が身に着けているピッチピッチのボディースーツが、炎をイイ感じに
反射し、艶めかしく輝かせた。良い出来栄えにほくそ笑む俺の顔面を、警告なしの鋭い蹴りが綺麗に決まる。ふくれっ面でズンズン前に進むたんびにプリンプリンと揺れる彼女の
形の良い尻を眺めながら、性格をしっかり調教しなきゃな…と色々後悔な俺。
伍長:「気を付けろ?静かに潜入という訳にはいかなそうだ。」
喋る俺に、振り返った彼女の後方から緑の光に包まれた女の子(ドライアド)二人が現れ、こちらに飛びかかってくる。気配に気づいた玲が2丁拳銃を構え、発砲するが、飛び出した弾丸は彼女達を包む光に吸収され消滅した。戦闘状態に入った彼女達が手を上げると
光が灯り、強力な光線を放ってくる。華麗にそれを躱しながら玲が叫ぶ。
玲:「効かないよっ!?(焦った感じのアワアワな表情で)伍長!」
伍長:「普段からそれくらいの、しおらしさを見せてくれよ!あれだ?こないだ
ミリタリージャンルで回収した対魔AⅯ弾(アンチマジック)を装填しろ!」
玲:「あっ!そうか!了解。」
玲が攻撃をかわしながら、両手の拳銃からマガジン(弾倉)を抜く。腰のマガジンポーチ
から素早く青色のテープを貼ったマガジンを出し、装填すると。2人のドライアドに1丁ずつ向けた。
玲:「これでも喰らえっ!」
弾丸から青い火花が飛び、ドライアド達の光のシールドを吹き飛ばし、そのまま爆発させる。
地面に倒れた二人のドライアドの生死を確認し(気絶しているだけで、ほっと一安心。)
彼女達の体から零れ落ちた青い石を手に取る。
伍長:「これが、シールドの正体か。コイツは色々と使えそうだな。」
実体弾に対して、耐性があるなら、この先の戦闘で、多いに役立てる事ができる。もう少し彼女達を調べれば、他にも色々得るものがあるかもしれない。ドライアドの体に改めて、
手を伸ばす俺。その頭にすかさず冷たい鉄の感触が付きつけられる。振り返れば、銃を
こちらに向けた玲がすっごく冷たい感じで見下ろしていた。
玲:「伍長(厳しい感じで)何してるの?・・・」
伍長:「いや、素材回収に決まってるって、あー?その目は明らかに俺疑ってんだろ?
違うよ?てか、仕方ないやん。敵のほとんどが女の子の場合はさぁっ!?」
玲:「こんの不潔の同人野郎ォォォ!!(叫び、拳銃を発射する玲。)」
銃弾を躱すのに苦労する俺は、後方から静かに進んでくる人物に気づく。巨大な弓を持ち、体の半分を甲冑で包む聡明な美少女ときた。耳が長いのから察するにエルフ、それも戦闘に長けているタイプだ。不味い、早く玲に知らせて戦闘態勢に入らねば…間断なく、こちらに銃弾を発射し続ける少女に両手を添えて声をかける。
伍長:「落ち着け、玲!撃ってる場合じゃねぇ!後ろ!後ろ!新手が来てる。」
玲:「うるさいっ!馬鹿ぁっ!敵もろとも吹き飛べぇ~っ!」
伍長:「それだったら、良いんだけどね。多分、あれは強いタイプの敵だからね?
かなりヤバい感じだぞ。」
玲:「うるさいっ!ここで死ねっ!」
二人のやりとりを静かに見ていた騎士エルフが枝のような矢を背のうから取り出し、
弓につがえ、呪文(技名)を呟き、矢を放つ。
騎士エルフ:「ミストールティンッ!」
光り出した矢は巨大な光となって地面を深くえぐる。勢いよく吹き飛ぶ玲と伍長。それを
見届けた騎士エルフが静かに呟く。
騎士エルフ:「この森は何人たりとも汚させはしない…」
口腔に流れ込んだ土を吐き出し、隣でおんなじようになっている玲の様子を見て、
声をかける。
伍長:「なぁ、だから言っただろ?(ほらなぁっ?っという表情で。)」
玲:「そうだね。だけど、やばいよ?死んだフリは通じそうにない。あの人、もう既に
第2射を準備してるし。」
伍長:「そうだな。何か考えよう。あの矢は確かに強力だが、複数の敵へ使うには
若干のタイムラグがある。加えて言えば俺達は懐に一発喰らってるから、敵も油断していると考える。」
玲:「実際に結構グロッキーなんだけど…(片手の破れたスーツを見せながら…)」
伍長:「馬鹿野郎!同人屋が原稿入稿を諦められるか!この世界に、目にモノ見せてやるのが俺達とお前の仕事だろうがっ!?囮は俺がやる。タイミング見て、あの子に
一発喰らわせろ!」
玲:「原稿差し置いて同人屋(マスター)が囮になってどうするの?(少し不安そうに聞く。)」
伍長:「逆だ。同人屋は原稿を大事にする。イベント出展のためにな。」
玲:「馬鹿…あきれるよ。(何処か嬉しそうな様子で。)」
伍長:「状況開始だ!(ニヤリと笑い返して!)」
言い終えると同時に、別々の方向に駆け出す。俺は短機関銃を騎士エルフに乱射しながら、
腰に付けたスモークグレネード(煙幕弾)を投げる。辺りに充満する煙の中から、いくつも
矢が撃ち込まれるが、気にしない。その隙に距離を詰める玲。だが、こちらの戦術はお見通
しのようだ。
騎士エルフ:「ミストールティン」
強力な光が至近距離で、玲に発射される。対する彼女も対魔弾で応戦するが、撃ち落とす事
はできない。体をずらして事無きを得るも銃の一丁が吹き飛ばされた。それを見逃す俺では
ない。素早く走りだし、玲の銃を拾い(原稿が持つ武器や能力は同人屋(通常の人間)には
使用できない。)エルフに向かって投げつけた。
騎士エルフ:「無駄な事を(表情を少し歪ませ…)」
エルフが新たに放った矢が投げた銃を捉え、バラバラに分解する。強力な一撃だ
マガジンまで細かく分解し、空中に銃弾を四散させやがる。だが、それこそがこちらの狙い
でもある。
伍長:「玲、銃弾を撃て。」
玲:「了解(意図を察した風に笑う。)」
放たれたいくつもの銃弾と空中の弾丸がぶつかり合い、跳弾のハーモニーを作り出す。
その真ん中に立たされたエルフも無事では済まない。弾丸が掠ったか、直撃したかは
わからないが、崩れ落ちる彼女に玲が突撃し、銃口を突き付けた。
玲:「降伏して下さい!…(少し自信げな笑顔を表情に表して!)」
悔しそうにこちらを睨んだエルフは弓をやむなく地面に落とす。すかさず
駆け寄り、拾い上げる俺。この武器はかなりの上物と見た。
騎士エルフ:「殺せ…」
伍長:「(皮肉な感じに笑いながら)あいにく、今回は遠慮だ。18禁ジャンルでの参加じゃねぇからな。いや、勿論…おねーさんの素敵な身体付きは“くっころ的シチュ”には充分だけどよ。」
騎士エルフ:「?」
玲:「伍長、急いで、敵の増援が来る。(何処か冷たい感じで。)」
伍長:「おおーっといけねぇ、それじゃそんな感じでエルフさん。この矢はもらってくぜ?」
・矢を片手に引っ提げながら、銃を構えて警戒する玲と一緒に、エルフとは逆方向の森に
移動する二人…
●チャプター3(即売会:旧大田区産業エリア)
場所:廃墟と化した市街地
登場人物:同人兵“伍長”(プレーヤー)
原稿(擬人化少女)“マシンガンナー玲”(マシンガンナーれい)
司会(音声のみ)
他サークルの参加者
オールジャンルの原稿達
・エルフから回収した“ミストールティン”(弓としてではなく、槍として使用している。)
を装備した玲と伍長は崩れた瓦礫の上に立ち、開催の放送を待っている。
かつて、人々が忙しく行きかった街並みは瓦礫と黒焦げの車群に占拠されていた。現象が始まった当初の“争いの傷跡”を生々しく残しているって訳だ。皆が目を背け、放棄されたこの場所が俺達の即売会、イベント会場となる。市街の空はドローン(無人偵察機)が飛びかい、道路や瓦礫には小型のカメラが設置されていた。これから起こる“同人活動”の様子を世界中に配信し、そこから評価や賞賛を得たモノ達がピコ、シマ、カベ、ショーギョウとなっていくのだ。そうして公式の存在として、世界の平和維持や技術の発展を担う一翼として加わっていく。勿論、多大な利益を得る事も込みな話だが、やはり自分の創ったモノが
世の中に認められていくこと、この一点に限る。もっともウチの指揮官連中の考えは少し
違うようだが…
そこまでをふと考え、隣で髪をなびかせる原稿である“玲”を見つめる。
こちらの視線に気づいた彼女が少しのはにかみ笑顔を見せ、また、前方を向く。同人部隊の
指揮官である軍曹が、“原稿の生成技術”を入手し、実用化に至ったはや数年。数多の企業や国家が同様の計画を進め、漫画勢力と同等の存在になるべく、この即売会に参加している。さて、自分達は何処まで生き残れるか?想像を巡らせる俺の耳にアナウンスが始まる。
司会:「ただいま11時を持ちまして、大田区産業エリア、オールジャンル同人即売イベントを始めたいと思います。各員、規約に乗っ取った即売戦線を期待します。」
町のあちこちで拍手が起こり、共鳴音を辺りに響かせていく。俺は手持ちの銃を構え直し、玲に声をかける。
伍長:「行くぞ!玲、派手に逝こうや。」
玲:「うんっ!!(覚悟を決めた強い表情で!)」
・町のあちこちで銃声や剣撃が響きわたる。様々な出で立ちの少女達が空中を
飛びかい、それぞれの武器を駆使して戦っていく。その下を走る伍長と玲。
伍長:「派手におっぱじまったな!玲、気を付けろ!俺達はまだピコで
(一番最低位の階級)ここらの連中も同じだが、皆その分、血気盛んときた。」
玲:「わかってるよ!伍長。伏せて!」
・瓦礫の間から現れた大剣装備の少女がこちらに飛びかかってくる。銃弾をばら撒く
伍長と玲。
自分の肩幅よりデカい剣を振り回す彼女は、飛んできた銃弾をいとも簡単に跳ね返して
いく。彼女のマスターである原稿作成者の姿は見当たらない。多くの奴がそうだが原稿と
一緒に行動するのは俺達、同人部隊くらいのものだ。一般の人間は、原稿同士の戦闘においては無力に等しい。そうこうする内に、玲は向けられた剣撃を避け、空中に勢いよく飛び
上がる。上空で一回転した彼女は、自然落下に任せて拳銃を突き出し、下方に向かって発射していく。大剣に当たる弾丸は青白い光を放ち、通常弾とは明らかに違う威力を見せた。
残数に限りがあるAⅯ弾を最初から使うのは頂けないが、現状の俺達では有効な戦術と言うしかないか…やがて、巨大な剣が真ん中から二つに折れ、その一つが携えていた少女の
頭を直撃した。両目がイイ感じにク~ルクルな少女を見下ろし、玲がしごく冷静に一言。
玲:「まずは一つ。(真剣な表情を崩さずに。)」
伍長:「しょっぱなから飛ばしすぎだぞ!弾はそんなにいっぱいある訳じゃないんだから。」
玲:「この日のために準備してきたんでしょ?さぁさあ!派手に逝こう~!!
(何処か、はしゃいだ感じで)」
喋る玲の隣で新たな原稿の少女が、姿を見せた。次の戦闘に向かう二人…
・場面が変わり、辺りは夕方の風景となっている。激しい戦闘音は鳴りを潜め、即売会
全体が終了の雰囲気を見せ始めている。その中で佇む玲と伍長。玲の手には2つに折れた
ミストルティンがある。
玲:「折れちゃったね(呆然とした表情で。)」
伍長:「いや~、まさか、コイツより強めな装備を持った子がいるとは思わなかった
もんなぁ~。やっべぇ、軍曹に何て言おう。」
司会の声:「現在15時になりました。大田区産業エリア、オールジャンル同人即売イベント閉会まで後1時間をきっています。参加されている皆さんは最後まで規約に乗っ取った
即売戦線をよろしくお願いします。」
放送終了と共に町の至る所から歓声が上がる。イベント終了前の最後の戦闘をおっぱじめようって訳だ。折れた槍をブラブラ寂しそうに振っている玲に声をかける。
伍長:「玲、弾はまだあるかな?」
玲:「あるけど、どうするの?(不思議そうな顔をして)」
伍長:「即売終了まで後僅か!もう一発派手に行こうぜ?」
玲:「切り札はもうないよ?まだ戦うの?」
伍長:「ロンもち!!俺達ぁ、同人屋だ。誰かに何かを届けたいという気持ちを形にする。どんな手段であってもだ!最後まで戦うぞ!」
玲:「OK!わかったよ!で、次は何処で逝く?(楽しそうに笑いながら)」
伍長:「銃声のする方だ!」
叫び、夕日に染まる町を走り出す2人。彼女達の向かう先では激しい爆発がいくつも起こっていく…(終)
「特殊部隊同人」 低迷アクション @0516001a
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