パンツ☆ダークファンタジー

低迷アクション

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「おい、みんなぁ、聞いてくれー!一度しか言わないから、その多種様々な

耳とか、耳の役割をしている角とか触覚を駆使してよく聞け~?」


人間と狼の合いの子である俺事“ウルフェン”は

(父(人)と母(狼)の馴れ初めは“強引”じゃない、ちゃんと“合意”の上でだ)


森の広場に集まった異形のモノ達を見回し、全員が理解できるように言葉を慎重に選んで、喋る。


何しろ、言葉は理解できても、「ウー」とか「ガー」しか言えない奴がほとんどだからな…

ウチの連中は…


「本日、未明…俺達の指導者であり、森の暗い部分の代表“シヴァ姫”様のだな。

穿いてる…ん?身に着けてるって言うのか…なぁっ、ドラコ?どっちが表現的には

正しい?あっ、穿いてるね。OK、OK!穿いてるだな。“パンツ”がな!


そうそう、あの人間の文化の賜物的な衣類!森の明るい姫の贈り物がな!

無くなったんだと。そんで姫様は困ってる訳だ。


だから、間違えて持ってった奴とかな。最悪、盗んだ命知らずはだな。

速やかに名乗り出て。


おい、うるさいぞ?そんなに慌てるな。お前等。

姫も今ならな。軽いお仕置き程度で済まして。なぁ、姫さ…」


「我が斧の錆にしてやる…」


野性的なファニーフェイスを憤怒に変え、斧をギュッと抱きしめるシヴァ姫の一言で、

広場にいた全員が騒ぐのを止め、我先にと森へ逃げ込み、タイミングを完全に逃した俺と

相棒の、空は飛べない半端モンドレイク“ドラコ”、そして怒り心頭の姫3人が

ポツンと非常に重々しい雰囲気の中に残された…



 「ヤバいな、ウル…俺、姫様の熱視線に耐えられそうにねぇ。てか、背中が熱い。」


「バッカ野郎!俺なんか、心なしか背中に少しづつ固いモノが挿入されてる気がするんだぞぉ?」


「…気のせいじゃないよ…ウル…姫様、斧、背中に刺してる。ゆっくりと、お前に…」


「えっー?って痛ったぁぁ!!ちょっとぉおおお!!姫!何やってんのおぉぉ?」


「うっさい…馬鹿狼。」


ものっそいジト目で俺達を睨む姫に、ドラコが超焦りながらの次善の策を提案した。


「あの、姫様…その…代わりのパンツじゃ駄目っすか?」


現状一番ナイスな提案に俺も頷く。…が、背中に刺さる斧の深度がより深くなるのに

かなり慌てて、反論を唱える。


「オイッ、ドラコ、余計な事言うんじゃねぇ。俺のライフが秒読みで大ピンチだ、

この野郎!!…でも、えっとぉ(若干、上目遣い、半笑いを浮かべて)


あのですね。姫。現状、パンツ無い訳ですから。代用品でもいいんじゃないっすか?

“グサッ”あっ、すいません。“だいぶ刺さったなぁ”って音で、姫の怒りの現状を

しっかり把握しました。」


息も絶え絶えの俺が喋る、細々な弁明に姫が頷き、次は困り顔と半ベソな表情を見せる。


「夕方から、明るい姫達とお茶会、パジャマパーティある。その時にお互いのパンツ

見せ合う。だから、もらったモノじゃないと、姫悲しむし、アタシも悲しい。」


「えっ?お茶会は納得だけど、パジャマパーティって何っ?パンツ見せ合いっ子する

パーティなの?女の子同士で?えっそういうモンなの?ドラコ、人間の文化


ビックリハテナ(!?)で俺サッパリわかんないけど、そーゆうモンなの?

あっ、まさか、二人でコンバイン(結合)コンバインする気?いけないよ?それは!


絶対駄目だよ?それは森の平和が波乱万丈になるからね?そもそも女の子同士で…

(“ザシュ”っと小気味よすぎる音が響き、俺の意識が遠のく)」


「あっ、と、とりあえず、自分とウルフェンでパンツ探してきま~す。」


「ウン、急いでね…」


完全に途絶えがちな意識の中で二人の会話を聞き、俺は何故?これほどまでにパンツが

重要なのかを改めて考えた後、完全に意識を停止した…



 そもそも俺達みたいな魔物がシヴァ姫を中心に徒党を組んでいたのは、人間共から

森を守るためだった。鎧と剣に加えて魔法やらで武装した奴等が


馬鹿な王様の領地拡大の命を受けて、森にズカズカ入ってきやがった。これに怒った俺達と姫は、連中と何度も戦を繰り広げた。そのおかげで人間界との平和的交流は戦前に比べ、

ごく一部のみとなっていった。


転機が訪れたのは数年前…森の魔物とは違う闇の勢力、魔界の連中がこの世を支配しようと企んだあたりだ。


始めの頃、魔界の連中は俺達の森にやってきて、協力して人間を滅ぼそうと持ち掛けた。

正直ノル気満々だった俺達とシヴァ姫を止めたのは…


森の明るい部分を担う奴等“エルフ”とその姫様、会話に出てくる“明るい姫”の存在だった。彼女等はごく一部の平和的交流の役割を担ってきた存在であり、人間達の可能性と

豊かな文化を姫に説き、魔界の連中の真の目的、森全体どころか世界を滅亡させようとしている事を教えた。


これに説得されたウチの姫様は納得し…てか絶対、エルフの美貌とか、可愛いらしさ、

母性すら感じさせる抱擁的な何かに、ほだされたと俺は見ている…まぁ、普段は周りに

化け物ばっかだからな。こればかりは仕方ない。


とにかく、そんな経緯を経て、エルフ、人間とが手を組み、魔界の連中を撤退させるに

至った。その時のお礼。三勢力の平和の証としての贈り物が、シヴァ姫の穿いてるパンツ。


「女の子ですから、やっぱり穿いておかなきゃ、元気な赤ちゃんを産むためにも~っ」


「えぇっ!?パパは誰っすかぁっ!?」と俺達のザワつきを他所に、ぽわぽわボイスの

エルフさんからの粋な計らいに、シヴァ姫が顔真っ赤とはにかみ笑顔でそれを受け取ったもんだから、マジでビックリ!俺達にとって色んな意味で新しい朝が来た。


これは、今までは腰巻きか全裸に近い文化しかなかった世界の新しい進化の印でもあり

(一部の人間に言わせると“バッカヤロウ、余計な事しやがってぇ!”らしい)


何とは無しに、この世の命運を、もしかして握ってんじゃね?という代物…

それら全てをひっくるめた要素を持っているのが、今現在ロストしているパンツである。


プライドの高いシヴァ姫の事だ。自分が無くした、それとも盗まれた?事をお茶会の席で

言えないに違いない。


言うくらいなら、死を選ぶ。それ即ち、森の混乱。長らく続いてきた平和の時代が終わる

事を示している。


だからパンツがいろんな意味で、かなり重要?これが無くなるとヤバい事は重々承知。他の勢力に頼る?人間とか?無理無理、誰もパンツ一つ無くなって、世界滅ぶとか考えねぇよ。


普通の常識ならな。だから、俺達が何とかしなくちゃいけない。何とかしなくちゃいけないけど…でもさ、それにしたって…


「俺が斧でアマ刺しされるのは納得出来ねぇんだけど、なぁっ、ドラコ?」


「夕方までに見つからなかったら、それがマジ刺しになるぞ?覚えておけよ、ウル。」


「…そうだね、ウン!全力で探すか」


ドラコの至極真面目な意見に俺達は森を進む歩を早めた…


 「ちょっと待ってくれよ。ウルフェンにドラコ、オラ達、確かに昔は色々襲ったぜ?

だどもよ。今は平和な時代。ましてや姫さんのパンツゥゥ?あり得ないよ。

勘弁してくれよ、もーっ!!」


オークの頭目が俺達の追及に目を白黒させる。周りの連中もそうだ。皆、オロオロしてやがる。まぁ、さっきの怒り狂ったシヴァ姫を見ちゃ、誰でもそうなるよな。だからこそだ。


俺は連中を警戒させないよう、なるべく笑顔を作って語りかける。


「わかってるよぉ~大将。お前等、本当は優しいからな。

だからよ、話は早いだろ?ちょっと昔、旅人とか、町を襲った時の事

思い出したって事で、パンツ盗んだって事にしよう。なっ?」


こちらの恐しすぎる提案に頭目が大いに慌て、目を見開き、逞しい腕をブンブン

振りたくって反論してくる。


「“なっ?”じゃないよぉぉっ!!オイィ~ッ!姫様はパンツ干してたの?

それとも穿いてたんか?そこんとこ大事な問題になってくるよね~?


てか、何で俺達やった事確定バリのでっち上げになるんだよ?

困るよぉ~、ホント、今のオークはそういう感じじゃないからさぁ~、冤罪で姫様に

全員なます切りとか勘弁だよぉ~」


「大丈夫だよ!もしかしたら、半殺しで済むかもしれないじゃん!それにさ…


なんつーかさっ、いいじゃんっ!オーク一党が全滅して、森と世界の平和を保てばさぁ!

RPGとエロゲーじゃ、お前等、女の子攫って、勇者のパーティに全滅されるじゃん、

いつもさぁっ!」


「よくないよっ!何言ってんの?何エロゲーって?そんな強引、

こっちにも考えがあっぞぉっ!!」


ドラコの投げやりトークにオークの頭目が怒りの咆哮を上げる。周りの連中もだ。

普段は大人しい彼等だが、やっぱり異形の存在、パンツ一つで新世紀魔獣大戦が

勃発しそうだ。


「オイッ、ドラコ、辞めよう。ここで争ってもしょうがない。とりあえず、身内から適当に

犯人を見繕うのは無しだ。お前等も、そこら辺で、風に飛んでる姫のパンツあったら

ヨロシクだぜ?」


「オイッ?適当って、どういう事?ねぇっ、オイッ?」


オークの台詞をガン無視かつ半分逃げるように俺達はその場を後する。気が付けば、もう昼時、タイムリミットがある事をしっかり覚えておかねばな…



 キノコ採りに来たとか、ぬかしている人間の少女にとって、

この状況は、非常に“不運”としか言いようがないだろう。森から出てきた俺達、


化け物に囲まれ、凄まれたとあっちゃぁな…震える彼女の言動も大いに納得だ。


怯えた少女の言葉をそのままに


「きゅ、急に森から出てきて“悪いんだけどよ、お嬢ちゃんの穿いてるパンツゥ?俺達にくれねぇ?ウチの姫様が必要なんだよ”って何なんですか?あれですか?

あ、新手の変態ですか?」


「変態?新手の兵隊の呼称か?そうだよ!俺達、森を守る優しい兵隊さんだよ!!」


「いや、違いますから、兵隊じゃなくて、変態!あーっ、ええっと、

人間世界で言うとですとね。可笑しい人達です。」


「可笑しい?笑えばいいのか?アーハッハッハッハ!…えっ?違う?何だよ?ドラコ、

その可笑しいじゃないって?なるほど、なるほど、ほおぉ~っ?そういう意味なんかぁ、

なるほどねぇ…(少女の方をグルッと振り返って)

こんの人間風情がぁっ!パンツどころか、色んなモン、ズリ下したろぉぉかぁ?」


「キャアアアアッ、助けてー」


「面倒だウル、足持って!」


「おうさっ!ドラコ!」


悲鳴を上げ、泣き叫ぶ少女を森に引っ張り込む俺達。夕刻まで既に2時間を切っている

(この辺の時間の観念も人間達との文化交流のおかげだ)


パンツは見つからない。風に飛んでもいない。俺達及び、世界の命運は風前の灯。

そうなれば必然的に代用品を探す。森の中でパンツを穿いてる奴は、ほぼいない。


求めているのは人間。それも女!だが、今じゃ平和になってる森と言っても、1人で

ズカズカ入ってくる奴はそうはいないと思った矢先の、この奇跡…逃す訳にはいかねぇ。


よく見りゃ、生地の良い衣類と形の良い太ももを固定し、速攻“脱がし”にかかっていく俺達。


「やだ?本気?ちょっと待って、ちょっとぉぉ!」


「ああっ何だ?」


涙交じりの絶叫音声に否が応でも行為を中断され、不機嫌な感じが声に出てしまう。


「姫様の下着の代わりって言ってたよね?そしたら、サイズは、色とか種類は?

姫って事は高貴でしょ?同じモノじゃなきゃ嫌がるんじゃない?」


「どうかな?ウチの姫さん、この間なんか、捕まえた豚さん、バリバリ食ってたぞ?(少女が“ヒュッ”と恐怖で、息を吞むのがわかった)それも頭から。あんま品位とか気にしないかな?」


「いや、この子の言う事も一理あっぞ?ドラコ?ちょっとでも違うもんだったら、

姫の怒りと世界平和もパーッだ!確か、穿いてたのは白いパンツだった。お嬢ちゃんのは?」


俺の言葉に少女の顔が、発した台詞と同じ感じで“パーッ”と輝く。


「良かった!私、ピンク!!今日、ピンク色のパンツ穿いてます!!」


「ええーっ?そうなの~?残念~」


「そう!残念です。私もそう思っていますぅ~!」


ドラコが残念と言った顔をし、少女が嬉し泣きの声を上げる。だが、こちらも簡単に引き下がる訳には行かない。


「じゃぁさっ、一応確認したいから、嬢ちゃんのパンツ見せてくんねぇ?」


「へっ…ええっ?い、嫌です。」


新たな恐怖に怯える彼女だが、構っている余裕はない。


「こっちも色々死活問題でさ。まぁ、最終的には、お前等人間も困る話なんだけどね?

だから、そのっ…ね?」


「何ですか?その“しゃーなしっキラッ、星マーク”みたいな感じ。絶対嫌ですよ!

ヤダ、ヤダアッ!!」


「大丈夫だよ?人間共が抱くような嫌らしさ、やましさ皆無だから!!俺。

それによく見て?狼キャラの俺だよ?所謂、ワンちゃんタイプじゃん?


人間界でもあるでしょ?おっきな犬が匂いフンフンしながら、スカートとかズボンに

顔突っ込む奴!あれと同じくらいだから!バターな剣(犬)だからっ!!」


「絶対、無理。安心要素が一つもない!マジでっ!ちなみに“じゃぁっ、俺かな?”っていう感じの慈しみと期待フェイスでこっち見てるドレイクさんも、断然お断りです!」


指を槍みたいに連続して俺達に突きだし、いや、指さし、必死な少女…

その姿を見て、ドラコが手をポンと討つ。


「その槍みたいな指見て、思い出した。ウル!“エリザべ”に聞こう。森の魔法使い!

人間から森落ちした森ねーちゃん?森ガール?とにかくアイツだったら“対価”を支払えば


パンツの居場所くらいチョロい筈だ!」


「そうだな。あーっ、何故気づかなかったんだろう?“対価”払えばいいじゃん!

モーマンタイ(無問題)やん!!アーハッハッハァ!」


「そうなんですか?ハハハハハ、良かったぁぁ。」


俺とドラコの明るい笑いに、思わず少女も笑い出す。2匹と1人の笑い声がしばらく森に

木霊した後、何故かふいに黙りこんで、慈愛、それとも悲哀の慈しみ視線を向ける2匹な

俺達に、少女が笑いながら問いかけてくる。勿論、若干の震えを伴ってだ。


「あの…その気になる“対価”って何なんですか?」


彼女の言葉に、俺達は三日月みたいに唇をニューッと歪ませて笑顔を作る。


「オヤオヤァ~?対価さんが何か喋ってるよぉ~?フハッ、フフ、フゥーッハハッハァ!」


「イ、イヤアアアアァァーッ!」


少女の笑いが絶叫に変わる。俺達は傍から見たら“とっても楽しい3人組を演出するような様子”を見せ、ルンルン踊りながら、ゆっくりと彼女をしっかり囲むように

近づいていった…



 「何さっ、ウルとドラコ?姫のパンツなら知らないし、穿いてもないよ!こちらとら森に

入った時から生まれたマンマー、全力でノーパンだっつーの!全く、最近じゃぁ、

人間との取り決め厳しくて、


ロクに若い女の子の血も吸えなくてイライラしてんの!だから、って何?

この子ウッヒョー!!ゲロマブ!!ちょっ、まじぃぃっ!最高じゃないのよぉおお~!!」


言葉途中で俺達が連れてきた半分気絶状態の少女の両肩をガッシリ掴み、

そのまま文字通り全身を舐め回していく吸血女かつ魔法も使える“エリザべ”に

こちらの条件を伝える。


「その子は好きにしていいぞ、ただし、姫のパンツを魔法で探してくれ、頼むぞ?

エリザべ?」


「オッケー!ベリーオーケー、ウル。じゃぁっ、早速いただいちゃおうかしら、

ウン?あら、やだぁっ気が付いたぁ~?

お嬢ちゃん?ウン、大丈夫。そんなに怯えないでいいからね。


そこの木馬にちょこっと座ってね。それでね、しばらくするとね。

四方から尖った槍が突き出されてね?貴方を串刺しにするからね。

可愛い悲鳴を聞かせて、いっぱい、いーっぱい血を流してね?私のためにぃっ!」


笑顔と涼しい音色の声でガッチリ抱きしめた少女に、説明していくエリザべ。

震える彼女が、こちらとエリザべを見つめ、怯え声を発する。


「えっ、血?あ、貴方がエリザべさん。アハハッ…あ(ここから一気に声のトーンを落として)あの冗談ですよね?狼さんとドレイクさん、それにエリザべさん、いや、様ぁっ~、

これ、洒落にならない、マジです。ハイッ!」


「ウン、わかってる。わかってる。こっちもマジだぞぉッ!」


声を揃え、笑顔で伝える俺達に少女の顔がみるみる青白くなる。

この世の見納め秒読み予定の、彼女の言葉は続く。


「姫様のパンツ探しましょう。もしくは新しいのを私買ってきます!白ですよね?白!

時間を下さい。すぐに持ってきます。」


「時間はない!ない!」


「すぐに、すぐに持ってきますからぁ!!」


「いいから、黙って服さ脱いで木馬にお乗りやぁっ!メス豚がぁぁっ!(表情が“女”って言うより“化け物”に近くなってるエリザべが罵声を上げて、少女の程よい大きさのお尻を“ピシッ”と叩く)」


「ヒャアアアンッ、イヤアァァァッ、誰か、助けてぇっ」


「フーフフゥッ!ハッ、ハッ、ハァッ、ハァッ、助けは来ない。こないよぉ~っ、

ハッハァーッ!!(久しぶりのグロ展開に興奮を隠せない俺達)」


「お前等っ!いい加減にしろぉおお!!」


突然響いた“えっ?誰?”って声に全員、身を固くする。口をポカンと開けているエリザべと少女の視線に振り向けば、黒いスーツを着込み、頭から角を生やした人間、


いや、顔めっさ青いから、多分“魔族のにーちゃん”がツカツカと


俺達の前に歩み寄り、白い布を、えっ?パンツ?あ、シヴァ姫の探してたパンツだ!

コレ!を、床に叩きつけた。


「白い、そして温い、匂いはシヴァ姫…一体どーゆうこった?」


驚きの色、手触り等々を確認する俺達に逆ギレのように、怒ったにーちゃんが捲し立てる。


「見りゃわかるだろ?俺、魔王の使い。お前等と人間の調和を乱すため、姫のパンツ

盗んだの、俺!そのまま逃げようとしてたら、悲鳴聞こえて見に来たら、コレ!


お前等非道すぎ、俺達、魔族の方がまだ優しい。お嬢さん、安心しな。これで万事解決だぜ!」


イッケメェェェン!と言う風に親指を立てるにーちゃんに、木馬に乗った半裸の少女が

ウルウル涙顔で何度も頷く。(全然、気づかなかったが、俺達のやり取りの間にエリザべが

色々、準備を進めていたようだ)


それに答えるようにイケメン魔族の得意声が続く。


「吸血ねーちゃん、その子を離してやんなぁっ!もう、対価の必要はねーだろ?」


「うん、ホント、色々解決だわ。」


遮る俺の声と鋭い爪付き拳がにーちゃんの顔面に叩き込んでいく。みるみるボロ雑巾の

ようになっていく魔族を見ながら、涼しい顔をしたドラコが少女を木馬から降ろし、


「全部、作戦通りだから。」


と嘯くも、少女と未だ未練がましく彼女の体を舐めているエリザべは“全然、信じていません!”って顔を最後まで崩さなかった…



 「うんもおお~っ、下着なんて、いくらでも替えのモノを用意しましたのにぃ~っ」


「うん、でも…大切なモノだし…」


ほんわか笑顔を見せる、“明るいエルフの姫”にウチのシヴァ姫は真っ赤になって俯き加減で答える。それを眺め、世界の平和と、それよりもっと大事なマイライフが安泰になった

俺達は


“ウン!ウン!”とスッゴイ笑顔で頷く。あの後、未練がましく少女をしゃぶしゃぶする

エリザべに、半殺しの魔族を引き渡し(“たまには大味も悪くないわぁ~”とエリザべも

喜んでたから、尚、安心!)震える彼女を逃がしてやった。勿論、逃がす前に


「今日あった事は内緒だぞ?お嬢ちゃん、野良犬と野良トカゲ&吸血鬼に

ちょこっと噛まれたと思うんだ。わかったな(噛まれたどころか命の危険がっ!

とツッコミそうな彼女の視線は完全スルーなのは言う間でもない)」


と脅しておいた。これで完璧、全て安心だ。そんな想いにふける俺の前で

ニッコリ細めのエルフ姫がうっすら目を開け、呟く。


「あら、そう言えば、今日はもう一人来客があるんですけど、見えませんねぇ~っ?」


「来客?」


「ええっ、私が姫にプレゼントしたパンツ。あれを持ってきてくれた人間の方達の代表の

人ですよぉ~っ!今日は彼女特性のキノコスープを御馳走してくれるらしくってぇ~。」


俺達の間に共通の電撃が鈍く走り抜ける。隣でドラコが「なっぞの子キノコ、あのキノコ、どっこの♪」と震えながら歌う。勿論、わかっているぜ、相棒!とっとこ、ずらかろう!と


目で頷き合い、静かに退席しようと歩み始める自身の耳につい数分前までやり取りしていた声が響いた。


「すいません~、森でキノコ採ってたら、野良犬と野良トカゲ&吸血鬼に

ちょこっと噛まれましてぇ~っ!って、あれぇ~っ?お二人は~?」


最初は申し訳、途中から嬉しそうな声&勝ち誇り音声に切り替わる少女の声と、

今度は彼女の熱い視線を前方から受け、さらに後ろは斧を静かに構え、


「詳細…キボンヌ…」


とパンツどころか、だいぶ人間らしい言葉を使うシヴァ姫の、殺意満々の視線を

ビシビシと感じ、俺とドラコは、この世の最後の見納めになるであろう少女の笑顔を、

とりあえずジックリ目に焼き付けた…(終)



 

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