第4話

「ただいまー」


 学校が終わり、ハジメは家に帰ってきた。手洗い・うがいを済ませ、ランドセルを下ろしたら、まずやることは動画サイトのチェックである。DJゲボは、毎日正午にゲートボール動画をアップロードしている。帰宅後すぐにこの動画をチェックすることは、多くの小学生の生活の一部となっているのだ。


 DJゲボの動画はよく練られており、まず基本的なコンセプトを説明し、それとの関連性を示しながら実際の動きをやってみせ、最後にまとめをし、そして小学生が実践できる課題を出すという形式になっていた。


 課題を終えた後は感想を提出することができ、提出したらランダムでポイントが貯まる。このポイントを貯めると、DJゲボに会えるイベントへと招待されるのだ。時々しかポイントが貯まらないというのが、さながら大人でいうパチンコのように、子どもたちを夢中にさせていた。


 ハジメが動画を観ていると、玄関が開く音がした。どうやら家族が帰ってきたらしい。ハジメは動画を一時停止し、玄関へと向かった。すると、そこには全身傷だらけの老人が立っているではないか。


「ただいまァ……」


「おじいちゃん!!」


 その老人とは、ハジメの祖父であった。


「今日は、ハッスルしすぎてしてしまったのう……」


 ハジメの祖父がなぜ傷だらけかといえば、それはドッジボールの大会に参加したからであった。今、老人の間ではドッジボールが大流行中なのである。街の健康ランドでは、毎日のように白熱したドッジボール対決が繰り広げられている。そして多くの老人は、体中に傷を作り、血を流すのが普通なのだ。そしてその後健康ランドの温泉に浸かるのが、傷口に沁みて気持ちいいということで人気になっている。


 小学生も老人もスポーツに熱中する、それが今の世の中なのだ。一時、若者や老人のスポーツ離れが懸念されていたが、その心配は過去のものとなったのである。



 以上、今どきの小学生が、いかにゲートボールに熱中しているか、おわかりいただけただろうか。


 読者の中には、なぜこれほどまでに小学生がゲートボールを重視するのか、理解できないという方もおられよう。しかしこれは、読者諸君が勤め先で仕事に取り組み、その成果で評価を受け、一喜一憂しているのと、本質的には同じことなのだ。もし小学生と話す機会があったら、自分の仕事は君にとってのゲートボールのようなものだと教えてあげてほしい。きっと会話が弾むはずである。


 とにかく、それだけのことなのだ。小学生のリアルをそれとして認め、あたたかく見守っていただければ幸いである。

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もしもゲートボールが小学生の間で大流行していたら michymugicha @michymugicha

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