思考標本

閃きは今をかすめて

一瞬のうちにそこには何もない

波の通った跡だけを わたしと呼ぶなら

目の前の身体は透明無実だ

微かな電磁波に向かって

言葉を刺すけれど

俊敏なそれを縫い止めることはできなくて

空を留めたピンの列が何かの輪郭をなぞっている

だけ

街まで続く電信柱、もしくは墓標

ドーナツの穴、もしくは納骨堂の誰か


どれほど繰り返し

どれだけ間違ってきた



アクリル板に無数の引っかき傷と

外骨格を掴む指が滑る

足を6本、いや、4本

あなたの言葉にするなら、2本

唸りもなく 温度もなく

セロファンの色が優しかった


そんなに静かでどうしたの?


標本箱の中のオオムラサキに尋ねてみたけど

返事はなかった



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私の言葉 槇灯 @makitou_fuko

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