エンドレスヤマザキを終えて

 いくつかの例外を除いて5人前──涼宮ハルヒやおれを含めたSOS団メンバーの頭数のぶんだけヤマザキパンを買っていたので、膨大なパンまつりシールが貯まっていた。

 パンまつりシールの管理は、長門有希の役まわりだった。シールを貼りつけた応募用紙を一瞥するだけで、1秒もかからず合計点数を答えることができたからだ。さすが宇宙人(が創ったヒューマノイド・インターフェース)。長門いわく「クラウド、画像認識、ディープラーニング」とやらで実現しているらしい。


 おれは長門に訊いた。

「結局、白いフローラルディッシュは何枚もらえるんだ?」

? それとも?」

 ああ──そうだったな。じつをいえば、おれたちは「永遠とも思えるエンドレスパンまつりシール集め」に陥っていたらしい。白いフローラルディッシュと引き換えできる25点に近づくとおれたちの記憶や時間経過がリセットされる。シールも消失する。それを繰り返していたのだ。

 SOS団員のなかで、長門有希だけがリセットとループを認識していた。はループ現象が発生しなかった。つまり、晴れておれたちはパンまつりシールを集め続けるという地獄から抜け出せたってわけだ。

を教えてくれ」

「113点のパンまつりシールが集まった。4枚の白いフローラルディッシュと引き換えられる」

 手持ちのパンまつりシールで引き換えることができる懸賞のお皿──白いフローラルディッシュは4枚。SOS団のメンバーはハルヒを筆頭に5名である。1枚足りない。波乱の予感である。


「お皿が1枚足りない? ふうん……あたしはいらない」

 パンまつりシールの件を報告すると──涼宮ハルヒの反応は芳しくなかった。ひと通りのシールを集め終えたので、パンまつりに対する興味を失ったのかもしれない。

 そうはいっても。SOS団長であるハルヒを差し置いて、ヒラの団員だけで4枚の皿を山分けするわけにもいかない。ハルヒがものになってしまうからだ。のけものはよくない。フレンズのおきてに反する。


 その後、どうなったか?

 貯めた113点分のシールを「白いフローラルディッシュ」に──。やがて「パンまつりシール」は期限切れになった。

 どこか釈然としないまま、おれは卒業までの日々を過ごしたのだった。


── BAD END ──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

涼宮ハルヒのパンまつり2019春 焚書刊行会 @imagawatatsuya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ