終止符
勝利だギューちゃん
第1話
高校の頃の話になるが、当時や携帯なんてものはなかった。
なので、緊急の電話の時は、公衆電話が基本となるが・・・
そのために、小銭とテレホンカードは絶えず所持していた。
ある日、当時の彼女とのデート中、家族に連絡を入れるのを忘れていた。
いきなり思い出した僕は、財布を見たが小銭もテレカもなかった。
「○○くん、これ使って」
彼女、正確には元カノになるのだが、テレカを渡された。
「いいの?」
「うん」
ありがたく使わせてもらったが、そのテレカを返すのを忘れてしまった。
その後、その子とは破局してしまい、会う事はなくなった。
そのテレカは、僕と彼女のツーショット写真。
特注で作ってもらった。
このテレカを渡すということは、もうその子の中では、決心がついていたのか・・・
【僕と、別れる事を・・・】
その数ヵ月後に、別れ話を切り出された。
僕は、黙ってうなずいた。
[魅力のない自分のせいだ]
そう言い聞かせ、その子を恨む事はなかった。
そのテレカを使ったのは、その一度きりだった。
幸か不幸か、その子からは、何もプレゼントしてもらっていない。
僕も、何もプレゼントしていない。
その子との思い出は、このテレカのみ。
僕のと合わせて、2枚ある。
その子が今、どうしているのかは知らない。
僕がどうしているのかも、その子が知らない。
気にならないと言えばウソになるが、もう違う道を歩んでいる。
詮索しないほうがいいだろう。
ただ、風のうわさで結婚したとは聞いた。
僕は、独身だ。
「お幸せに・・・」
その子の幸せを願った。
そして、2枚のテレカをゴミ箱に入れた。
心の中で彼女に言った。
「思い出をありがとう」
終止符 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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