監禁作家

第4話真実

長谷川さん、今まで本当にありがとうございました。

どうしてあなたがこんな酷い目にあったかわかりますか？

私にはちゃんと理由があります。４年前の交通事故といえばわかるでしょう。あなたが脇見運転で轢いたのは私の妹と両親です。妹は将来は絵描きになるんだと一所懸命で賞も取りました。ゆくゆくはプロになれると私も信じていました。

ですが、あなたがそれを台無しにしました。

ご存知でしょうけれど妹は意識が戻らず寝たきりになりました。

それでも妹の耳には言葉が届いていると信じて私は毎日語りかけていました。妹の創作ノートにはいろんな絵が書かれていて、私はそれを本にして語ってあげたかったのです。でも私には文才がないので物語を書いてくれる人を探していろんな本を作ってあげたかった。

だからインターネットで物語を書いてくれる人を探し、あなたから作品を受け取った時は素晴らしい小説家にめぐり合えたと思いました。私は本当に感動しました。だからご本人に会ってお礼を言いたいと思っていたんです。

でも、直接会ってあなたの本名を聞いた時にどれだけ絶望したかわかりますか？それが妹を寝たきりにさせた男だと知って私は何をどうすればいいのかわからなくなりました。

もしもあなたの口から反省の言葉があればこうはならなかったでしょう。でも、あなたは交通事故の話題を振ったときになんと言いましたか？「誰でも１度はやるもんですよ」でしたね？あなたは笑ってました。

だから私はあなたを罰することに決めました。貴方と寝て、うちに招いて、実家の地下に作った牢屋に閉じ込めて物語を書く装置になってもらうことにしました。

ああ、ちなみに貴方の前で撃ち殺されたのは雇った劇団の人です。あれはお芝居用の道具を使った演技で死んでいません。そういう依頼を受けてくれる人もいるんですよ。便利な世の中ですね。

さて、あなたを解放した理由ですが、言わなくてもわかりますね？

病院で妹が死んだからです。

もう妹に読ませてあげる物語はいりません。

あなたにも用はありません。

警察でもどこでも行ってください。

１００作も書けば１つは賞を取れる、でしたっけ？

まだ２０作ですけど、１つくらい賞を取れるといいですね。

さようなら。私の小説家さん。

翌日のテレビでは車が海に転落し、中から女性の遺体が発見されたというニュースが流れた。警察が身元を調べ、石田美和の屋敷に来ると風呂場で水没してショートさせられたノートパソコンが１台発見された。

長谷川の行方は誰も知らない。