ポストに隣人宛の剃刀

空岸なし

あなたの親愛なる隣人

 ある日、不気味な赤い手紙がアパートのポストに届いた。

 宛名も差出人もなにも書いていない。

 恐る恐る封を開けると鈍く光る剃刀が出てきた。

 背筋が一瞬にして凍りついたが、剃刀と一緒にメッセージカードも入っていることに気がついた。


ジョン・ウィリアムズへ


      「許さない」


       あなたの親愛なる隣人より


 カードにはこのような文言が書き殴られていたのだが、問題が一つ。

 ジョンは、お隣さんのご主人の名前である。

 そう、おそらくこの手紙の送り主は部屋を間違えてしまったのだ。

 この手紙は一体なんのために書かれたのか、お隣さんは果たして誰とどんな問題を抱えているのか、考えるとなんだか恐ろしく、そして関わりたくなかったので黙ってお隣さんのポストに入れ直しておくことにした。



 それ以来お隣さんはなぜかよそよそしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ポストに隣人宛の剃刀 空岸なし @sorakishi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ