第6話

メイが魔法を使い始めジョーが悪戦苦闘していると、あっという間に火が暮れてきた。

「そろそろ家に帰ろうか。暗くなるとダイアウルフが近づいて来るかも知れないからね。」

「はーい!」


メイやジョーの家は少し遠く、先生が後から送って行くそうだ。家から3人の後ろ姿を見送り家へ入ると母さんが出迎えてくれた。


「お帰りなさい。今日は楽しかった?」

「俺も魔法使いたかった昨日の事があるから使っちゃダメって言うんだ。」

「そうね倒れたのに危ない事するのは、お母さん賛成できないかな〜。」

「でも!もう僕何とも無いよ!」

「じゃあ明日もう一度アンナさんに頼んでみましょう!アンナさん優しいから今度はさせてくれるわ!」

「うん。」


母さんはそう言ってご飯の準備をしに、台所へと戻って行った。その後すぐに父さんが帰ってきて3人でご飯を食べて眠った。


「ごめんなさい。」

2人が眠ったのを確認して静かに家を出る。いくのはもちろん裏山だ。あそこ以外では誰かに見つかってしまうかも知れない。


裏山で誰も居ないのを確認して先生が言っていた事を思い出す。目を閉じて体の中にある魔力を感じるのだ。だが先生が言っていた様なものは感じられない。


「俺才能無いのかな。帰ろう。」

「グルルルルル。」


家に帰ろうと振り返ると森の中から狼の魔獣が複数現れる。


「そんなここはまだ結界の中の筈なのに!」

「グアア!」


狼の1匹が襲いかかって来る。


恐怖が頭を支配する。足がすくみ膝をついてしまいそうになる。


だが狼の牙が届くその前に、拳が狼を殴り飛ばした。


「な、なにが⁈おこって。」


驚きで言葉が上手く出てこないが、俺はこの時昨日の男を思い出していた。


「もしかしてこれが俺の貰った力なのか?」


恐怖が自然と消えていく。殴れさえ出来れば怪我する事はないのだ。


「来るなら来い!」


狼は俺の言葉を知ってか知らずか襲いかかって来る。

1匹目の頭を蹴り飛ばす。勢いをそのままに体を回した拳が2匹目の胴体を打ち抜いた。大きく口を開けた3匹目の口に狼を突っ込みそのまま頭に拳を振り下ろす。


「はあはあはあ。」


振り返らず急いで家へ帰る。魔法は使え無かったが僅かな達成感が心の中にあった。


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君の 田中太郎 @faizu555

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