次元渡りのログ(TRPG資料)

@heshimura

レポート・1

【注記】

 本テキストはTRPGセッション内の閲覧資料用として作成したものです。

 セッション内プレイヤーキャラクターの視点から、シナリオ内に登場したメモ、資料やログを整理、調査したしたものになっています。

 PC視点では、フォアサイトを使用するウォーロック野郎と戦ったり次元酒場で飲み食いしているあたりの期間。

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 本調査レポートは、次元移動端末上に残されたログについて私、メルテン・スムトナーが個人の所見を交えてまとめたものである。多次元を巡る争いの最中ではあるが、私は上司であり一族の長たる、マックス・ウェルキンゲトリクスの指示でこの作業にあたるものである。

 まずはこの次元移動端末についての説明を行う必要があるだろうが、我々としても依然解析が進まず、何とか使い方が分かっている程度である。(それも端末が表示する手順書によって!)

 端末は名の示すとおり別次元への物体の転移<プレインシフト>を行う機能の他に、転移に必要なエネルギーを蓄積する機能を持っている。ウィザードやソーサラーが呪文でウィーヴを操るように、この機械装置は蓄積した”思い出”を消費してウィオーヴを操り、魔法を成立させる。”思い出”は単に記憶という意味合いではないらしく、感情の揺れ動きを”波”と捉えて蓄積したエネルギーなのだという。理屈は分からぬまま、世の冒険者のごとくクリーチャーと戦うことがどうやら効率的なエネルギー獲得方法であるという端末の説明のもと、我々はいくつもの遭遇をこなしてきた。

 そうして得られたエネルギーは既に不浄の軍勢の侵略を受けた<スレイヴェン>次元や崩壊した<アイス・エイジ>次元からの次元難民をこちらに受け入れるために使用されている。

 【注】

  またそうした異次元での遭遇で得られた成果――基本次元では入手困難なマジッ  クアイテムやデータ――が我がスルスラグ国に貢献していることは、この機械装  置のもたらした益として強調すべき事項であろう。


 次元移動端末は、残念ながら我々が作り出したものではない。これは地下階層に出現した古代遺跡からの回収した品である。一個人の研究施設であったと思わしき遺跡は、突如何もない地下空間に現れ、しかも一部分はまだ稼働していた。その不可思議な施設の奥に置かれていたのがこの端末であった。

 この端末と同じく遺跡から見つかった資料は個人日誌から当時の研究資料まで、断片的ではあるが術者の力によって読むことはできた。地下世界は潜るほど時代が遡るのが常であるが、この遺跡は深度に対して相当歴史が古いものであろうことがわかっている。また経年劣化したというよりは、呪文や化学的作用による損傷がそこかしこに見られることから、何らかの実験の最中に(どういった理屈によるものか検討もつかないが)次元転移ならぬ時間転移をしたものではないかという仮説が建てられている。

 【注】

  別次元から建築物が転移してきた、という可能性も当然あるが、資料中の天体の動きや地下世界への言及があることから我々の次元から来たものであると推察した。もちろん、たまたま似た次元から来た可能性も否定すべてきではない。


 話をこの遺跡の内容に戻そう。

 資料から、この遺跡の主は「ジョン・ウェイン」という人物であったようだ。氏は専ら召喚術を扱うウィザードであったようで、次元移動についての研究をしていることが読み取れた。当時不安定であった<テレポート>や<プレインシフト>を安定かさせるべく世間が苦心しているが自分のやり方であれば全く問題ない、と日誌に書かれてはいるが公表した様子もなく、虚実判断がつかない。が、実際に氏の発明したと思われるこのデバイスによって極めて安定した次元移動ができていることからこれは事実であったのだろう。研究日誌に記された生来の能力で次元移動する昆虫、という存在についても実際に次元の狭間に住処をもち獲物を待つ次元ドラゴンに遭遇したので、おそらく実在したのであろう。


(「ジョン・ウェイン」の残した個人日誌を読み解いた内容の概略を記す)

(中略)


 氏の残した日誌の終わりにかけては、この歳(30代後半だと推察される)で他人から力術を学ぶことで覚えた屈辱についてと、力術知識を用いた新たな実験について記されていた。氏の研究成果、予定していた実験内容については資料が見つかっておらず恐らく意図的に隠匿していたものと思われる。


 【注】

  氏の研究についてのいくつかの推察は、今の戦いが収着したときに次元移動端末をより詳細に解析して明らかにする予定である。


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 メルテンの記したレポートを一通り読み終えていくつかの注記を入れると、マックス・ウェルキンゲントリクスはようやくその日の仕事を終えることができた。私室にも仕事を持ち込むのは、もう日常になっていた。何をいってもロクに休まなさそうなメルテンを気遣ってこのような書類仕事を頼んだのはいいが、意外な速度でほぼ日誌のような報告書が上がってきたのには驚いた。

 次元移動端末を回収してからは多忙の日々を送る彼らに何とか休息を与えてやりたいところだが……工夫が必要そうだと彼は苦笑した。(アーサーは気がつくと部屋から脱走して野山をうろついているし)

 だが、彼自身も苦心して蒔いてきた種がようやく実を結びつつある。この多次元が絡んだややこしい出来事が解決した後の事を思えば、今苦労する甲斐はある。決意を改め、彼は笑みを浮かべた。


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