自慢話
タッチャン
自慢話
結構大変だったんだよ。いや本当に。
途中までは上手くいってたんだ。途中まではね。
全ての原因はウサギにあるんだ。いや本当に。
ウサギの野郎がヘマしやがってよ、
それで全部パーさ。
ライオンも、ゾウも、ブタも、あっ、ブタってのは俺の事なんだけどよ、みんなムショ行きよ。
何をやらかしてムショにいるかって?
お前、新聞読まないのかい?
一面にでかでかと載ったんだぜ。
まぁーいいや、教えてやるよ。銀行強盗だよ。
俺たち4人は銀行強盗をして捕まったんだ。
ウサギの野郎、今度会ったらぶん殴ってやる。
因みに、ライオンだとか、ゾウとかって呼び名は俺が考えたんだぜ。本名で呼びあうのは危険だからな。
コードネームってやつよ。
銀行強盗の計画も俺が考えたんだ。
1年かけてな。そりゃもう綿密に、完璧だったんだ。
まずは仲間集めから始めた。
ライオンは俺の職場の後輩でよ、最初に声をかけたんだ。身長が180もあっておまけにガタイがよくてな、髭がたてがみみたいにワサワサしてたからライオン。無口で大人しいヤツだったがな。
次がゾウ。見た目は普通なんだがいかんせん鼻が長くてな。いや本当に。
鼻の事を弄るとすぐにぶちギレちまうヤバいヤツよ。
コイツとはパチンコ屋で知り合ってよ、
直ぐに意気投合して誘ってみたら食いついてきてな。
借金がバカみたいにあるから一発逆転したいって言ってたな。
最後にウサギの野郎。
俺の行き付けのバーによく来るヤツでよ。
背筋がピンとして、機械みたいに動くのが面白くて声をかけたんだ。毎回スーツで店に来るからそこらの安月給で働くサラリーマンかと思ってよ、可哀想に思えてな。お前も一発逆転してみないかって言ったら
男前な顔で宜しくお願いしますって言ってきやがって。
誘わなきゃ良かったよ。いや本当に。
後悔後先たたずってな。よく言うだろ?
武器の調達も必要だった。
なるべく怪我人を出したく無かったからモデルガンを4つ用意したんだ。そしたらよ、ウサギの野郎が僕に任して下さいって言うじゃねぇか。
その次の日に持って来やがったんだ!本物の銃を!
いや、俺は断ったぜ。日本で銃をぶっぱなすと死刑になるって聞いた話だ。マジでビビったね。
サラリーマンとか思ってたけどウサギの野郎は本物のヤクザだったんだ。いつもスーツ姿なのも納得いったよ。
弾は込めないで空砲で威嚇することにしてよ、
これで準備は半分整った訳だ。
残りの半分は、逃走用の車と覆面、でかいバッグ。
全部俺が揃えてやったんだ。
後は実行するだけ。
都心のデカイ銀行の裏口に車を停めて俺たち4人は覆面をして弾が入っていない銃を持って店に入った。
まず始めに俺が叫ぶ。
全員地面に伏せろ!おい!お前!このカバンに金を入れろ!早くしろ!ってね。
客はビビって慌てふためくかと思ってたら口をポカーンと開けて馬鹿面晒してたんだ。
そしたらゾウが叫んだ。
聞こえなかったのか!伏せろ!
俺たちは強盗だ!おい!お前!ケータイをしまえ!
ってね。
そしたら誰かの叫び声が後ろから聞こえたんだ。
声の正体は覆面をとったウサギの野郎だった。
武器を捨てて全員腹這いになれ!って叫んでるのよ。
俺は開いた口がふさがらなかったぜ。いや本当に。
ヤツはサラリーマンでもヤクザでもなく警察だったんだ。信じられるか?
俺は警察を強盗に誘ってたんだぜ?
ウサギの野郎が叫んだ後にそこにいた客、全員が銃を俺たちに向けて、警察だ!おとなしくしろ!お前達は包囲されているって言うじゃねえか。
客じゃなくて全員警察なんだよ。
最初っから筒抜けなんだよ。俺の計画は。
ライオンとゾウは銃を落として直ぐに腹這いになってたよ。
まぁ俺もそうしたんだけどさ。
警察の何人かが小声で話してるのが聞こえてな。
ほんとに来たよ。日本で銀行強盗ってすごいな。
映画の見すぎじゃない?コイツらは馬鹿か?
ってな。
まぁー捕まっちまったけど俺は伝説を作ったんだ。
このムショでは誰も俺には頭が上がらんのよ。
なんならお前の面倒も見てやろうか?
必要ない?
まぁ必要なら声をかけてくれ。
じゃあな。
自慢話 タッチャン @djp753
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