第3話

 淀んだ部屋の空気が気になり、窓を開けた。まだ少し冷たさを残した春風が、桜の花を揺らす日曜日。

 背伸びをしながら考える。憂鬱だが、暖かくて天気もいい。シャワーを浴びて外に出ようと決めた。私には今、気分転換が必要なのだ。


 昨日とは打って変わって、カジュアルなパンツスタイルにスニーカーで出かける。

「んー。気持ちいい」

 せっかく桜も咲いているのだから、近所の公園に桜を見に行こう。近くに美味しいおにぎり屋もある。最高のお花見日和だ。

 まだ気分は晴れないが、晴れないなら晴らす努力も必要だ。別れてもなお、あんな遅刻男に振り回されるなんてごめんだ。


「すみませーん。こんぶと明太子と、あと天むすを一つずつ。あと、緑茶一本下さい」

「かしこまりました。全部で610円です」

 お財布の中を見ると、小銭がぴったりあった。少しいい気分になる。

「じゃあ、これで」

「ちょうどですね。ありがとうございました」

 まだ少し温かいおにぎりの袋をぶら下げて歩き始める。

 小銭はぴったりあったし、おにぎりもまだ温かい。おまけにさっきは可愛い猫まで見かけたし、今日はいいことあるかも。


 しばらくすると、目的の公園が見えてきた。さすが日曜日。メジャーなお花見スポットではないにしろ、やはり普段より人は多い。

 座れるスペースを探しながら、公園の中を歩いていると、あんなに晴れていた空が曇り始めていた。

「せっかく来たんだから降らないでよね」

 そんな言葉とほぼ同時に、ぽつりと一粒、雨粒が頬にあたった。

 

 


 


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柚子と太陽 深海 さら @nyaaaaa_Suke

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