第2話

 「……もう朝か」

 カーテンの隙間から射す日の光と、微かな頭痛で目が覚めた。昨日はあれから一人で飲み明かし、気づいたら眠っていた。

 失恋六回目だからといって、傷つかないわけではない。つらくて、苦しくて、悲しい。まるで水の中をもがいて進むように、なかなか前に進めない。最近では年々、立ち直りに時間がかかるようになった気さえする。


 初めて彼氏ができたのは、高校一年生の夏。マネージャーをしていた部活の、一つ上の先輩だった。うだるような暑さの夏休み。部活帰りに告白された。憧れの先輩からの告白。断るわけがなかった。

 優しくて、かっこよくて、今思えば一番まともな彼氏だったかもしれない。そして一番まともな恋愛だったかもしれない。

 歳を重ねれば重ねるほど、余計なしがらみや感情に囚われて、ただ好きだとか、憧れの感情だけでは恋愛ができなくなったように思える。

 結局、先輩の受験や進学などですれ違うようになり、別れてしまったけれど、今でもいい思い出として残っている。

 そのあとの恋愛はどれも長続きせず、正直いい恋愛とは言い難いものばかりだった。

 男を見る目を最初の恋愛で使い果したのか、浮気男やヒモ男、束縛男など難ありな人ばかりと付き合っていた。

 ちなみに昨日振られた元カレは、時間にルーズでデートの遅刻は当たり前、挙句仕事も遅刻を繰り返し、クビになったこともあるような人だった。


「どうしていつもいつも、ロクでもない人と付き合っちゃうんだろ」

 振られるたびに頭をよぎる疑問が、口をついて出た。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る