柚子と太陽

深海 さら

第1話

 人はなぜ、恋をするのだろうか。


 相手のことが好きだから?


 子孫繁栄という本能があるから?


 結婚したいから?


 セックスがしたいから?


 寂しいから?


 誰かに愛されたいから?


 恋をする時のありとあらゆる感情は、なにかで代用することはできないのだろうか。そして私はなぜ、恋をするのだろうか。

 そんなことを考えている最中、通算6回目の別れ話。

 まさに今、彼氏が目の前で別れ話をしている。もう聞き飽きた別れ話の常套句。

「仕事に集中したい」


「俺が忙しくて、柚月に寂しい思いをさせてばかりで申し訳ない」


「柚月には俺よりふさわしい人がいる」


 そんな言葉はもう聞き飽きた。そして最後の締めもいつも同じ。

「柚月の幸せを願ってる」みたいな綺麗事。

 どんなに取り繕ったって、所詮はもう愛がないってことなのだ。好きだけど別れるなんてことは、正直、私には理解できない。好きでなくなったから別れるのだ。

 そんな私の元彼氏様も、どうやら他に好きな子ができたようだ。会社の後輩の女の子。写真で見たことがある。小さくて、ふんわりしていて可愛らしい子。私は負けたのだ。

 悔しいから絶対に涙は見せない。最高の笑顔でさよならをする。

「幸せになってね。さよなら。」

 別れ際のやりとりも、もう慣れたものだ。

 とっておきのヒールを鳴らしながら、一番お気に入りのワンピースをなびかせて、颯爽と去っていく。

 頬をなでる風が冷たかった。

 そして私の、6回目の別れ話が終わりを迎えた。



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