雨恋

バルバロ

休日

 窓から外を除けば、先程まで燦々としていた太陽がその姿を隠し始めていた。

僕はその様子を確認してから、レインコートを着て外に出かける準備をする。

 準備と言っても何を持つでもない。ただ鏡を確認して手ぐしをするぐらいだ。

 そうして足元軽やかに、僕は家の玄関を開けた。


 次第に雲は広がり、やがてしとしとと地面を濡らす、恵みの雨が降り出した。

 僕はその中を歩き出す。通行人は足早に、あるいは嫌そうに。そそくさとどこかへ去っていく。

 それを尻目に僕は近くの商店街を抜け、その先にある公園に到着した。

 それなりの規模の公園の、外周に沿って散歩を続ける。

 僕は雨が好きだ。雨に恋をしていると言っても良い。

 ときにポツポツと、またあるときはゴウゴウと。人を助けたり、イジメたり。

 嫌う人もいるが、僕は好きだ。

 だってかわいいじゃあないか。

 空模様によっては構ってほしそうにしているようにも見えるし、すねているようにも思える。

 子供の頃からずうっとそうやって空を見ては、ああ今日は嫌なことがあったんだろう。誰かになにか言われたのかな。

 なんてことを考えながら歩くのが好きだった。

 母にもわかってもらえなかったが、それでもいい。僕は彼女が好きなんだ。

「彼女」なのかもわかりはしないが、どうだっていい。些細なことだ。

 

今日の彼女はやんわりとした感じに見えた。だって雨が優しいもの。

 肩に手を置かれているように、そっと寄り添うように。


 けれども今日の散歩はお開き、雨雲はやがて遠ざかりまた日が戻ってきた。

 ちぇ、とつぶやいて僕は家に帰る。だけれど素敵な休日になった。


 明日も窓を眺めては、彼女の帰りを待つ日々。

 「雨恋」をしながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雨恋 バルバロ @vallord

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ