今話題の「あの映画」を未だ観に行けていない自分を心底悔いました!
正月に胃腸炎で寝込んでいる場合じゃなかった。
三連休に熱出して寝込んでる場合じゃなかった。
読後にその後悔に苛まれましたが、今はこうも思います。
映画を観る前にこの「おじさん」を鑑賞できてよかった。
何故ならば、映画を観た後でもう一度読み返せば、まったく違う印象で「おじさん」を鑑賞する楽しみが待っているだろうから。
このレビューだけ読むと、一体何のことやらとお思いになることでしょう。
「あの映画」をすでに観たという方も、これから観るという方も、あるいはまったく興味がないという方も、どうぞこの掌編を手に取って中をご覧下さい。
凄みすら感じられる癖の強いキャラクター「おじさん」が、周囲の目などものともせずに今を精一杯楽しんでおられます。
周りに甚大な被害を撒き散らす彼の生き様を、滑稽と見るか、憧憬ととらえるか。
やはり私は「あの映画」を観た後で、その答えを出したいと思います!
私もつい最近、輝かしいロックスターの半生を描いたこの映画を観てきました。
輝かしく華やかなステージの上と、その裏側の主人公の人生とのコントラストの強烈さに、言葉を失いました。必死に音楽を追求し、自分自身を破壊しかけ、最後の力を振り絞って輝く彼の壮絶な半生には、ただ拍手を送る以外ありませんでした。
この物語は、そんな素晴らしい映画を観に行く「おじさん」の物語です。
人生というものの哀しさ。寂しさ。寒さ。この物語の中で、「おじさん」はその重く醜い部分だけを、たった一人で演じます。
それでも。
周囲からどれだけ冷ややかな視線を受けても、哀しい顔を一切見せることなく、おじさんは前を向いています。
人間の生とは、つまりは苦しみの道を歩くことなのだと。
そんな道を、それでも前を向いて歩くことなのだと。
彼は、そう教えてくれている気がします。
読み終えた後にズシリと心に残る、複雑な余韻。
なんとも独特な空気の中、様々なことを考えさせてくれる物語です。