小惑星イトカワの日常
墨紙屏風
第1話
地球のご近所にある小惑星帯、その中のメンバーにイトカワってのがいる。
1998 SF36って呼んでもいいけど俺はイトカワって呼んでる。
ラッコに見えたりピーナッツに見えたりまぁ無個性ってほどでは無いが端的に言って石。
じゃあ何でこの石はこんな形してるのか、そもそも何で存在してるのかハヤブサって言う探査機を送り込んだりして昔は結構盛り上がったらしい。
(俺の部屋にディア○スティーニのまぁまぁ高い模型がある。)
そのおがげで今、俺は職を得ている。
国立自然公園イトカワ、俺はそこで重力リングの点検諸々エンジニア風の何かをやってる。
「館長、リュウグウの連中が結婚式の企画を始めたらしいですよ。」
リュウグウはイトカワの次に日本がサンプルリターンに行った小惑星、味気なく言うと1999 JU3。うん、1998 SF36の方がなんかカッコいいぞ。
(ハヤブサ2って探査機が行ったんだけどそいつの模型も部屋にある。眺めてるとQOLが上がるので実質タダ)
「竜宮城で結婚式なんてロマンチックだねぇ佐藤君。」
白いひげを伸ばした優しそうな爺さん。何気にすごい人でインターステラエンジンの開発に関わったらしい。ほんとかなぁ
「うちもコンサルAIとビックデータサービス買った方が良くないですか?俺少しは知識あるんでかまされはしないですよ。」
君もまだまだ子どもだな、とでも言いたげな顔で館長は言う。
「そんな事のために佐藤君の負担が増えちゃダメでしょ。それにイトカワ・サブレの売れ行きも良いし、うちはうち、よそはよそだよ。」
確かにイトカワの形をしただけのサブレは良く売れている。
フードプリンターで簡単に印刷できるのにみんな、あれ買っていくよなぁ。
ちなみにイトカワ・サブレ、俺の地元高知のお菓子「ミレミタイ」とよく似た味をしてるのでめっちゃ買ってるし、めっちゃ食ってる。
「さぁこの話はここまで。今日はとあるVIPが来るから出迎え頼んだよ。」
VIPの言い方が爺くせぇ。あと俺の負担を気にしてくれてたんじゃないのかよ、、、
小惑星イトカワの日常 墨紙屏風 @sumikami
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