貧乏くじ男、東奔西走

卯月

仇討ち

「待て!」

 夜。山の麓で、ついに求める相手に追いついた青年は、剣を抜いて叫んだ。

「曽祖父の姉の夫の妹の息子のかたき、取らせてもらうぞ!」

「何だそのワケわからん関係性は!」

 青年の生国では、国外逃亡した殺人犯に対し、遺族による仇討ちを認めていた。裏返せば、仇を取らねば一族の沽券こけんに関わる、ということでもある。

 十年前、とある豪商が強盗に殺されたが、近い親族は誰も旅に出たがらず、彼が強引に送り出されてしまったのだ。

「俺だってワケわからん! さっさと終わらせて国に帰りたいんだ!」

「やれるもんならやってみやがれ!」

 強盗は懐に隠し持っていた、魔法で弾を発射する飛び道具を青年に向ける。


   ◇


 同じ頃。

 山の向こうで、魔法使いがメテオストライクの呪文を唱えた。


   ◇


 遥か天空の彼方から隕石が召喚され、光る尾を引いて、漆黒の夜空を切り裂く。轟音ごうおんとともに隕石は爆発し、辺り一帯に破片が降り注いだ。

「へぶっ!」

 破片の一つが、強盗の頭を直撃。そのまま地面に伏し、ピクリとも動かない。

「お、おい、大丈夫か……?」

 オロオロする青年。


 見事、仇を捕らえて帰国し一躍英雄となった青年は後日、〝空から降ってきた〟という不思議な石を売って一財産を築いた。

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貧乏くじ男、東奔西走 卯月 @auduki

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