手記に始まる世界観。短い文章でありながら伝わってくる世界は本物で結末の結晶になった人物の悲劇は切なさを誘いました。
奇妙な病が蔓延して、閉ざされてしまった谷、そこに残された手記を元に、物語は進行していきます。最低限の情報しか提示されていないのに、背景や登場人物たちの悲しみ、苦しみをどこまでも想像させられました。ラストは一種の美しさも感じられ、より一層胸を締め付けられる思いがしました。
僅か800文字でここまで書けるとは。『知られざる時と場所での葛藤」が心の琴線に響くたちなので、この物語はとても魅力的です。簡潔な描写ながら読むものの心から感情を引き出す力がある。冒頭の引きもあり、伏線が張られ、最後に切なさが二重の余韻となって伝わります。掌編に見えて、大長編の一挿話としてもおかしくはない出来と感じました。長く書かなくても伝えることは出来る。だがそれは至難の技。その技を見せて頂きました。ありがとうございます。
八百字の掌編です。短い中に物語の醍醐味が詰まっています。すぐ読めるので是非!
二百年程前、とある村に蔓延した奇病があった。その「水晶病」に冒された村人や家族の様子を、当時の村長だった男が、手記に書き残していた。800字の掌編が魅せる、ひそやかで切ない小話。