第2話俺、俺たち

世間一般ではスライムという生き物は

話す事も何かを思うことすら出来ない

ただ漂うだけの生き物とされている。

だが、それは違う。

たしかに普通のスライムは話す事は出来ない。

だが、とても小さな感情は持っている

泣く事も怒る事も出来ないがちゃんと喜怒哀楽はある。

それを知らない人類はいつも俺たちスライムをバカにしている。

だから、俺は"俺たち"は人が嫌いで嫌いで仕方なかった。

では何故、俺がさっきの冒険者から逃げたのか?嫌いなら攻撃をすれば良い

では何故それをしないのか?

そして、小さな感情しかないはずのスライムの俺が話せるのか、感情を出せるのか?

それを全部教えるには少し長い話になる

気を長くして聞いてくれ。


それは、随分昔のことだ。

俺は他のスライムと同じ様に話すことも

感情を出す事も出来ない普通のスライム

だった。

寒い季節の頃、俺はいつものように

漂う様に草原を歩いていると人の声がした。

「おい、あそこに雑魚モンスターがいるぞ」

「ホントだ、やるか?」

「やろうぜ」

すると、目の前に木の棒を持った二人の子供が現れた。

俺は嫌な予感がしてすぐに逃げようとした

がその行動に気づいたもう一人が回り込み

俺を挟み込む様にして逃げ場を塞いだ。

逃げ場を塞がれた俺は動揺した

子供は笑顔だった、怖いくらいに笑顔で

俺に木の棒を振り下ろした。

木の棒は見事当たり俺は地面に叩きつけ

られた。

痛い、痛い、それよりも

濁りのない笑顔で攻撃してくる

そんな子供が俺は怖かった。

「あれ?死なない?」

「下手くそ、スライムも一撃で倒せないのか?俺が手本を見せてやる」

そう言うと、さっき俺を攻撃してきた子供よりより一回り大きな子供が木の棒を持って俺に近づいて来た。

「見てろよ」

すると木の棒を強く握りしめて

俺に強く振り下ろした。

俺は避けようと思ったがさっき攻撃された。

ダメージがあり、動けなかった。

グシャ、木の棒が体にめり込む


(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)


俺はまた、地面に叩きつけられた。

だが、俺はまだ死んでいない

確かにスライムは村人ですら一撃で倒せる

魔物だ、たがそれは''大人"ならの話だ。

相手は子供だ、一度や二度と殴られたぐらいならまだ死なない。

「クソ、なんで死なない」

一回り大きい子供は顔を真っ赤にさせながら

俺が死んでない事に文句を言っていた。

多分、俺ならスライムぐらい一撃で倒せると

思っていたのだろうだから、もう一人の子供にあんなに大見栄を張ったんだろう。

だが、結果は俺を一撃で倒せず、恥をかいた

その事に腹を立てた子供は、俺をまた殴った

何度も何度も何度も何度も

たとえ相手が子供でも何度も木の棒で殴られればダメージは少なくない

痛かった、怖かった

泣きたかった、やめてと言いたかった

でも、スライムの俺は声を出す事も泣く事も出来ない、悔しかった。

「早く、、、死ねよォォ!」

木の棒を振り下ろした、その攻撃は今までの攻撃より遥かに早く、遥かに鋭い攻撃だった

自分で理解できた......しぬ

俺はゆっくりと目を閉じた

もう何も見たくないともう早く殺してくれと

目を閉じたその時だった

どこからか声がした。

「やめなさいよ!」

これが俺の運命を変えてくれた彼女との最初の出会いだった。















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スライム王がいないならスライム王なればいい 奥村 真翔 @makoto08521

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