スライム王がいないならスライム王なればいい

奥村 真翔

第1話最弱の魔物

「チョロチョロ動くな!」

太陽の光も差し込まない森の中に

一人の男がいた。

「クソ、待て」

汚れの目立つ皮の鎧に、刃こぼれした銅の剣

首にはEと彫り込まれたネックレスがある。

この世界ではよくいる"冒険者"だ

彼ら冒険者は魔物退治や人々の依頼をこなして生計を立ている者たちだ。

そしてこの男も今、魔物退治をしているのだ

「すばしっこいな、この!スライムのくせに」

そう、彼が戦っているのは魔物の中でも

最弱の魔物"スライム"だ

「クソ、スライムってこんなに動き早かったか?村人にだって倒せただろ?クソ」

彼が戦っているスライムは、村人が木の棒で

叩いても倒せるような魔物なのだ。

それなのに彼が今戦っているスライムは

彼の攻撃を全て避けている。

だが、スライムが攻撃を避ける事は珍しく

ない、例えば少しレベルの高いスライムなら

"村人"の攻撃ぐらいなら避けれるからだ

そう、村人ならだ

今戦っている彼は冒険者だ、たとえランクがEだとしても戦士の職についている彼の

攻撃を、少しレベルの高いぐらいの

スライムに

避けれるはずがないのだ。

職とはその者の才能であり技術の道筋を立ててくれるものだ

だからこそ冒険者ランクEの

戦士の役職についてる彼と村人では大人と

赤子ほどの差があるのだ

なのに、その彼の攻撃を全て避けている

スライムが異常なのだ。

「オラァ、」

また剣が空を切った。

「ハァハァハァ」

戦闘が始まって30分が経過しているが

一度たりとも

攻撃が当たっていない。その事に彼は

焦りと苛立ちを覚えていた

スライムはその気配を察知していた。

「オラァァ」

彼が剣を上から大きく振りかぶった

だか、その振り方は大きく隙を作ってしまう

その隙を見逃さなかったスライムは

タイミングを合わせ避ける

するとスライムが避けた事により

剣が地面に刺さり剣を引き抜くのに大きな隙を作った

その瞬間スライムは目にも留まらぬ速さで逃げていった。

「く、クソォォォォ」

最弱の魔物に全て攻撃を避けられ

その上逃げられるとは、他の冒険者達に

この事がバレたら、笑い者になる。

そんな事彼の冒険者としてのプライドが許さなかった。

「クッソォォォォォォォォォォォォ」

そんな怒りの声が始まりの森に

響いている中何かが一人呟いていた。

「ふぅ、なんとか逃れられたな」

そう言うとその生き物の身体が、ぷるりと

震えた

「俺がスライムだからってそんなに

襲わなくたっていいだろ?まったく

襲われる側の身にもなってみろ」

そこには、冒険者と戦闘をしていたスライムがいた。

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