不老不死吸血鬼と自殺願望人間

碧尾亜

吸血鬼と少年

今日も庭で椅子に座り本を読む。


退屈だ。

本の物語が終盤にかかるとこでページを止める。

長く生き過ぎたせいで結末は想像の範囲内だ。

どうせ主人公とヒロインは結ばれるのだろう。

決してこの本がつまらなかったわけでも最後のオチが読めてしまったことに対してでもない。

本に飽きてしまったのだ。

毎日庭の椅子に座って本を読むのが習慣だった私にとって時間の大半を占めていたのが本だった。

しかし、ふと本の内容を知ったところで何になるのだろうかという疑問を持った。

内容を共有できる友人も恋人もいない。

いないというのは正確ではない。

かつていたが全員死んでしまった。

人間の寿命は驚くほど早い。

吸血鬼の私にも人間の友はいたが死んでいく。

また、私の姿が変わらないことを知ると怖がり避けていく。


こうして私は1人になった。


1人で大きな城に籠るのは寂しく、魔力を使い使い魔を召喚させたが学がない。

本を読むことなど最も無理である。


「はぁ」

ふとため息がでる。

人生こんなに退屈ならいっそ死んでしまった方がマシではないのか。

いや、鬼生の間違いか。

しかし吸血鬼は不老不死。

死ぬことはできない。

吸血鬼が死ぬ方法を本を探して試したがこれといって効果はなかった。

日光は気分が悪くなる程度。

十字架はなんもおきず。

ニンニクはたべれる。

食事には血は不可欠だが私は少量のしかも動物の血で間に合うことができる。

では、血を飲まなければ?

無論、衰弱していく。しかし死ぬことができないため衰弱したまま時間が過ぎていく生き地獄になる。



「はあ」

考えただけでまたため息がでてきた。


本を机の上に置き目をつむる。

大好きな本がつまらなくなるというのはこうも空虚なのか。

自分の中にある落胆と向き合いたくないため椅子を立つ。

散歩でもいくか。

1時間くらい適当に歩いたら飛んで帰ろう。

今は何も考えず歩こう。


庭にある鉄格子性のドアをギギギギと開けそのまま森へとと歩く。

するとドアの音で気づいたのか城の窓から声が聞こえてきた。


「おーい、ロゼ様〜どこに行かれるんですかー」


使い魔リンの声だ。


私のことはロゼ様と呼ぶ。

以前私の本当の名であるラキカバラ・グリスベル・ロゼ・ローレインという名前を召喚時教えたところ使い魔のくせに

「長いからラキ様でよろしいですね!」

など舐めた口を開いたことを思い出す。

最初はムカついて消してやろうたおもっていたが、今ではリンの天然のバカっぷりの元気さには暇つぶしにはマシである。


「森へ散歩に行くだけだ。1時間で戻る。」


「は〜いわかりました。ロゼ様が戻られるころにはお茶を用意しておりますね!」

うるさくて元気な声だ。少し笑い傘立てから日傘を持ち森へと歩く。



無心で森を歩いていた。鳥の声、目に見える気がから漏れる日差し、草花の匂い。歩いて正解だった。久しぶりの散歩は心地がよい。

このまま近くの川まで歩いてから帰りまた本を読むとしよう。

森を歩いたのは30年ぶりぐらいか。

しかし変わってはないな。

本の内容は本それぞれ違うため変化を楽しめるが森は些細な変化を楽しむことができる。

川についたが良いせせらぎ音だった。


「うう」

せせらぎに交わり声?がかすかに聞こえてきた。

声?がする方に歩く。

「うううう」

遠いが下流の方からさっきよりも大きく聞こえてきた。

私は下流へと向かう。

そこには少年が血だらけで倒れていた。

声がかすかに聞こえるため生きてはいるのだろう。

声をかける。

「おい、少年生きているか」

「うう、何故僕は生きてるんだ。くそっ」

男は手を石に叩きつけている。

「おい、せっかくの手や命を無駄にするな。親が泣くぞ」

少年はこちらに血だらけの顔を向けてきて答える。

「僕は何故生きてるんだ。教えてくれ。何故死ねなかったんだ。死ねば天国へ行き幸せなんだろう?もう親の元に戻るのは嫌だ!」

真っ赤で切り傷があり皮膚が破けていてもわかる悲しみの表情だった。

彼は川へ投身自殺を試み溺死か出血死を望んだのだろう。


しかし生きていた。

「貴様が生きていることはわからん。神や天国は知らん。運だろう。親が憎いのか?それともただ死にたいのか?もし死にたければ私に言え。今ここで楽に殺してやるぞ」


少年が死にたそうにわめいている。私はさっきまで楽しんでいた森の散歩の景観を邪魔され不愉快だ。殺せばお互いの利益になるだろう。


「いや。自分で命を絶ちます。僕は自分で死に場所を探します。ご心配ありがとうございました。」

血だらけの身体で川を下っていこうとする。

私は突拍子もないことを言われ唖然とした。


いずれあの少年は死ぬだろう。それに関しては何も思わない。しかし人間は自分で命を絶つことができる。不老不死の吸血鬼の私にとってはなんと羨ましいものである。

何故か怒りが湧いてきた。


私は血だらけの少年を担ぎ空へと飛んだ。


「わっ。どういうことだこれは。

何が起きてるんだ。」


「私と飛んでるんだ。落ち着いて動かないでくれよ。」


「やめてください。貴女は何者なんですか?翼まで生やして妖にしか見えない。」


「ああ、私は吸血鬼だよ」


「本当に存在するなんて・・・これって死んだ後の夢ってことじゃないですよね。」


「そうだな。お前がまだ生きてるんだ夢じゃないさ。」


男は血だらけの顔を服でこすりあたりを見渡たす。目の前には雲があり上から森を見渡せる。素晴らしい景色。普通の人間では見ることはできないだろう。


「空を飛ぶなんて夢見たいだ。死ぬ前に良い体験をさせてもらったよ。」

少年は笑った。


「は?何を言ってる。お前は今から私の城で働いてもらう。」


少年はきょとんとする。

「いや、何を言ってるんですか。僕はもう人生に絶望したのです。もう生きてても辛いだけです。ですから・・・」


担いでいる少年の溝を思いっきり殴る。


「ぐぇ」

少年は声をだしぐったりとした。


「これで落ち着いて帰れるな。」

遠くに見える城を目指し私は空を飛んだ。


そういえば何百年ぶりに人間としゃべったな。久々の人間の会話は中身が無くとも面白かった。

勢いで担いできたがこいつは暇つぶしにはなりそうだ。まず治療して生きてもらわないといけないが。



 

「おかえりなさいませ、ロゼ様、その肩に担いでいる人間は今夜の食事でございますか?ラキ様が人間を城に持ちかえるのは初めてでございますね」


「いや、こいつは生きてここで働いてもらう人間だ。リン。手当をしてくれ」

 

男を放り投げる。


「かしこまりました。」

 リンが男を軽々とキャッチしまた担ぐ。


「紅茶を準備しておりましたのでラキ様お飲みになってお待ち下さい。ロゼ様本人にお茶を継がせるのは申し訳ないのですが。」


「いいからささっと治せ。万が一死んだらリン!お前も殺すからな」


「はい!かしこまりました!」


リンは部屋へ行き治癒の魔力陣を書き始める。

その後男を陣の中央に起き呪文を頭の中で詠唱する。


「ふざけるな。殺せ。」


「あら、起きてしまわれたのですね。」

 

「これはなんだ。僕は死にたかったんだ。」


「いや無理ですよ。ロゼ様の命令ですもの。死なせたら私が殺されてしまいます」

呪文の詠唱を間違えないように意識しながら少年の会話に答える。

 

「あ、もし死んでしまった時のためにお墓作りますのでお名前お聞かせくもらってもよろしいですか?」


ふざけた使い魔だ。治療もうっとおしい。

 

「それとも死体は両親のところへお運びした方がよろしいですか?」


頭の中に両親がよぎった。ふざけるな。なんであんな奴の元へ戻らないといけないんだ。憎悪の感情に包まれる。


「あっそれは嫌な感じですか。はい、わかりました。それでは名前を正直に答えて下さいね」


「ああ、僕の名前はルイス・アルベルト・ロキナシツ・ザボ、今の国王ルイス家の1人息子だ。」


「ふーん。国王の息子さんでございましたか。まあ長いからザボさんで。死んだら墓地に書いておくね。じゃああと治療で意識飛ばしますから起きたらラッキーと思ってて下さいね。それではさようならー」


こんな短い僕の名前も覚えられないのか。吸血鬼のお方も大変なんだなと思いながら意識が飛ばされた。





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今日も庭で椅子に座り本を読む。

日傘をさしてるが時折目に見える太陽の光は少し不快だが明るいのは明るいのでよい。

のんびりと本を進める。


「ロゼ様〜昼食ができましたのでお戻りください」

「わかった。すぐいく」

リンが昼食を作るのを終えたようだ。 

本にしおりを挟み城へと戻る。


食卓につくとパン、スライスした豚肉、キノコのシチューが置いてあった。

 

私は席につき食事をとる。

 

「今日はどこで食材を調達してきたんだ?」

 

「はい。今日は隣町のリンゼンロールに買い物にいってまいりました。いつもと違う食材の内容でしたがお口にめされましたか?」

 

「いや。美味しいよ。わざわざ隣町にいってくれてありがとう。ザボ。」

 

「ええ、ロゼ様のためです。お口に合い光栄に思います。」

ザボは感謝の意を込めて深々とお辞儀をする。


「ところで今日は何の日かしってるかい?ザボ。」

食事を終えフォークを置きザボに問う。

 

「はっ。今日は・・・9月20日ですか、いえ、わかりかねます。何の日でございますか?」

 

「今日はザボと初めて会った日なんだよ。ちょうど10年になるな」


「そうだったのですか。10年でしたか。あっと言う間ですね。もうそんなにお城で働いてたのですか」


「吸血鬼の私にとってはもっと早い。そういえば、あの時のお前は死にたいなど口にしていたな」


「そうでございますね。あの時の私は人生に絶望していたので死んだ方が楽だったと思います。」


「どうだ?今の生活は死にたいと思うか?」


ザボは城の雑用になって働いていた。

ロゼ様の食事の調達、料理。城の掃除。本の調達など。

毎日ロゼ様のために働いて人生は充実していた。


「いえ、今は死にたいと思いません。ロゼ様のために働いて生きる意味を持てました。リンさんというおっちょこちょいですが頼れる上司もいますし。本当に拾っていただいてありがとうございました。」

笑顔のまま答える。


「そうか。なら良い。」

下を向きナプキンで口元を拭く。

ロゼはザボの笑顔を正面から見れなくなっていた。


「ザボ。お前ここに来て働いてばっかりだろう。たまには休め」


「いや、買い物などで外にださせてもらってますし大丈夫です。それに本を読むのも好きですので。」


「いや、休め。これは命令だ。息抜きでもしてこい。」


「わかりました。今日は休まさせていただきます。お気遣いいただていてありがとうございます。」

ザボは一礼して部屋をでる。


「さて、紅茶でも飲むか。」

使い魔のリンが隣の部屋から飛んできた。

「はっ。紅茶でございますね。準備しておりましたのでどうぞお飲み下さい。」


リンがカップに紅茶を捧ぐ。

ロゼはカップを手に取り紅茶を飲もうとするが何故かなかなか喉に入らない。


「ロゼ様どうなされたのですか?紅茶も進んでおりませんし。それに顔も赤いですよ。」


「おい、リン」

「はい、なんでしょうかロゼ様」

「殺すぞ」

「えっ!なんでですか。びっくりした驚きました」

「いいから部屋を下がれ。紅茶のおかわりはいらん」

「はい、かしこまりました〜」

リンはニヤニヤしながら部屋を出て行く。


「リン、次そんな顔したら本当に殺すからな」

「ひっ。すいませんロゼ様。失礼しました〜」

逃げるように部屋を後にした。


「はぁ」

深いため息をつく。この感情はなんだろうか。

わからない。

悩んでても仕方ないな本でも読むか。



庭へ行くとザボが椅子に座り本を読んでいた。

ザボがロゼに気づく。


「あっロキ様お邪魔してすいません。すぐ立ちますね。」

ザボは椅子を立とうとする。


「よい、そのまま座って本を読んでてくれ。」


「いえ、ロゼ様に悪いので私が動きます。」


「ほう、私と本を読むのがそんなに居心地が悪いかい?ザボ。」

意地悪いた顔でロゼは言う。


「いえとんでもございません。ロゼ様とご一緒に本を読めるのなら光栄でございます。」


「そうか。」


ザボの隣に座り持ってきた本を朝の続きから読む。


「そういえばお前は何の本を読んでいるんだ?」


「はい。『グランダラス物語』でございます。」


「ほう。私はその本を50年前くらいに読んだことがあるな。確か内容は・・・」


「あっ。ロゼ様おやめ下さい。本のネタばらしは楽しみを損なってしまいます。」


ザボが本をこんなに楽しみに読んでいたことをロゼは驚いた。


「いやネタばらしをするほどの内容は言うつもりはなかったさ。心配かけてすまないな。」


「いえ、謝らないで下さい。ロゼ様何も悪くありません。」


「そうか。まあ。なんだ。ザボがその本を読み終わったら本について色々と話そうじゃないか。面白い話がたくさんあるんだ。」


ザボの顔が明るくなる。

「本当ですか!?ありがとうございます。それでは早く読み終えますね」

本に向き直しすごい集中力でページを進めて行く。


「いや、自分のペースで読んでくれよ、そっちの方が面白いさ」

ザボにはもうロゼの声は聞こえてなかった。すさまじい集中力だ。


「はあ、なんだかなあ」

ロゼは頭を少しかき空を見る。


「私も読むとするか」

ロゼも本を手に取り進めようとする。

しかしザボの本の読むスピードが早いのでザボに目がいってしまう。

早く色々と話がしたい。

ロゼは中々本が進まずザボをみていた。




「ほんとに面白いですねロゼ様とザボのさんは」

リンが紅茶を庭に持ってこうと城の窓から2人をみていたがお邪魔になるかと思い部屋に戻った。


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今日も庭で椅子に座り本を読む。

今日はあまり本が進まない。

決してこの本がつまらなかったわけでも最後のオチが読めてしまったことに対してでもな

い。

本に飽きてしまったわけでもない。

むしろ最近本は楽しみである。

ザボと本について話すことができるからだ。

内容の感想やその後の考察。どうあるべきだったかのifストーリーや自分ならこうするなど。ザボとの本の会話は途切れることがない。

なのでむしろ本を読みたいのだが何故か進まない。


「今日はダメだな」

本を机の上におき身体を伸ばす。

そして目をつむりふとザボのことを考える。


あいつも変わったな。

最初は死にたいなどぬかしておったが今は本が好きで仕事熱心な青年だ。

あいつのおかげで私の鬼生があまり退屈しなくなった。不老不死も悪くないものだ。

今は生きてて楽しいといってたんだ眷属にしルイスも吸血鬼にしてやろう。そうすれば今の身体のまま永遠の命を過ごせる。ザボにとっても悪い話ではないはずだ。









「む」

目を開け、小さくあくびをする。

いつのまにか寝てたようだ。

外で昼寝など何十年ぶりだろうか。

寝心地が悪かったのか頭がボーッとしている。


と、気づく。

隣でザボが本を読んでいた。

驚いて羽を勢いよく出してしまった。

ザボがロゼに気づく。


「おはようございます。ロゼ様」

笑いながらザボが言う。


「ザボ。あとで厳しい罰があるから覚悟しておけ。」


「ええ、承知しております。ロゼ様の寝顔を見れた対価としては安いものでございます。」

仲が良くなったとはいえ主従関係なんだぞ。その口の利き方はなんだ。どうして私の城に使えるやつはこうも口が軽くなっていくのだ。

まあ悪い気はしないが。


「なあ、ザボお前のことを考えてたんだ。お前は今の年齢はいくつくらいただ?」


「私でございますか?多分ですけど23歳くらいだと思います。」


「そうか」

ロゼは一呼吸おき言葉を続ける。


「ザボ。お前、私の眷属にならないか?」


「私?がですか。それは、私が吸血鬼になってこの先ロゼ様と不老不死を共に暮らしていくということですか?」


「ああ、そうだ。お前ももう死にたくはないだろうなら悪い話ではないだろう」


「確かにそうですね。」


ザボは少し考え口を開く。


「お断りします。」


私は驚きで席を立つ。

「何故だ!?お前はもう死にたくないのだろう」


「はい、死にたくはございません。また生きる意味をくれたロゼ様には感謝しております。しかし人間として死にたいのです。」


「よくわからないな。」


「私は死ぬことができる人間だからこそ生きる時間に重要な意味を持ちたいのです。」


「その言葉は死ねない私にとっては当てつけに聞こえるが。」


「いえ、決してそうではありません。短い時間であるからこそロゼ様と一緒に本を読み話す時間を大切にしていきたいのです。」


「そうか」

ザボの強い意志を感じた。最初に出会った時の自分で命を絶ちたいといっていたころと似ている。これは曲げることはないだろう。


「眷属のお誘いありがとうございますロゼ様。こんなにも私のことを思ってくださっていることが本当に嬉しいです」

真っ直ぐな目でロゼに言う。


私は顔が真っ赤になっていくのを自覚した。

私はこんなにもザボのことを考えていたのか。それを意識すると恥ずかしくなる。




「なあ、ザボ。私の恋人になってはくれないか?」


「はい、ロゼ様。私でよければ是非お願い致します。」



勢いで言った。

勢いで言ったがザボは考える間もなく即答だった。

勢いで言ったことを後悔しまがザボが即答してくれたことが何より嬉しい。



「様はやめろ。今から恋人同士なのだ。主従関係ではない。普通に喋れ」


「はい、かしこまりました。ロゼさ、、ロゼ」


「まだ敬語が抜けてないようだが」


「わかったよ。ロゼ」

笑顔でザボは答えた。








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今日も庭で椅子に座り本を読む。

今日は天気が良いからか本の進みが良い。


「ザボこの本覚えてるか?読み直したが面白いぞ、あんたも読みなよ」

ロゼは本を机に置く。

ザボは本を手に取りタイトルをみる。

「あ、ああそうだな。『グランダラス物語』か。読んだことあったかな?すまない忘れてしまった。また読み直そう。」

「いや、いいよザボ。もうあんたは記憶も曖昧で長くはないんだろ?」


ザボは今40歳。原因不明の感染病で足は動かずベットでの寝たきりだ。また記憶が曖昧になっている。認知症などではなく感染によるものだそうだ。

リンの治療は止血や外相のみなどで治せなかった。

今は移動式のベットを使い、リンに移動させてもらい庭にいる。


「そうだな。多分死期が近い。自分でもわかるよ。寿命までは生きれなかったが本当に楽しい人生だった。ロゼ、ありがとう。」


「そうか。私はただの暇つぶしに拾ったんただがな。だが、短い30年間だったが楽しい時間だったよ。ありがとう。ザボ。」


「そういってくれると嬉しいよ」

笑顔でザボは答えた。


「なあ、最期のチャンスだ。私の眷属にならないか?そうすれば病気の痛みも和らぎ、もっと私と共に過ごせるんだ。」

ロゼは懇願のような表情ではなくあくまで一つの選択肢にある。という形で言った。



「そうか。そいう手もあったな。」

ザボは悩んだ。

決して自分が生きたいのではなく残されたロゼのことだ。

彼女は不老不死で孤独を味わい続けた鬼生だ。

恋人ができたのも初めてと言っていた。

今回も普通には言ってはいるが本当は頼みのような物なのだろう。

そう考えると胸が痛くなる。

だが、


「本当にすまない。ロゼに助けてもらった人生だ。あなたのため生きたいが私は人間だ。僕は人として死にたい。あなたと恋人として過ごした時間は大切な思い出だ。」


涙を流しザボは続けた。。


「リンもありがとう。上司として頼もしくはなかったが、仕事や看病のことでのサポートは感謝している。あなたと過ごした時間も僕は大切な時間だ。」


「そうですか。そう言っていただけると嬉しいですね。私もザボさんと過ごした時間は楽しかったですよ」

リンは笑顔だった。


「ザボ。」

ロゼがいつもの表情でいう。

「わかった。お前の意見を尊重しよう。ただお前はまだ死ぬと決まったわけではない。人間としてもう少し生きてくれ。約束だ。」


「恋人としての約束は破れませんね。わかりました。頑張って生きてみます。」


ザボはロゼのほっぺにキスをしそのまま眠りについた。



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今日も庭で椅子に座り本を読む。

調子が悪くてもこれは日課だ。読まないほうが調子が狂う。



ザボは朝身体が冷たくなり二度と起きることはなかった。

蘇生魔法などあるわけもなくただ悲しいだけだった。木の墓を建て埋葬した。


本が進まない。

空っぽだ。

何もない。

何も読めない。


「ロゼ様!」

リンの声が聞こえた。


「ロゼ様もう少しで雨が降られますよ。城に戻って食事にしましょう。」


「リン」

「はい、なんでございますでしょうか」

「お前は悲しくないのか?」

「はい、悲しいですよ。ザボさんが死んでしまってつまらないーって感じです。」

「あいつは何故昨日の約束を破ったんだ。」

「約束は破られても仕方がないことです。

戻って食事でもとりましょう。」

「リン、何故お前はそんな元気なんだ」

「それはロゼ様が私を召喚する時もともと設定したあっ・・・がっ」


リンの首と胴体が離れる。

胴体から血が吹き出る。

庭に赤い花が咲く。


「はあ」

大きなため息がでる。




--------------------------------------------------------------今日も庭で椅子に座り本を読む。

--------------------------------------------------------------今日も庭で椅子に座り本を読む。

--------------------------------------------------------------今日も庭で椅子に座り本を読む。

--------------------------------------------------------------今日も庭で椅子に座り本を読む。



--------------------------------------------------------------****年9月20日

今日も庭で椅子に座り本を読む。


涙で本が読めなかった。









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不老不死吸血鬼と自殺願望人間 碧尾亜 @kromoru

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