第19話 11日目、ガイア誤解する
「しかし、微毒とは穏やかじゃないよな」
「えぇ、そうですよね・・・」
カモンが作り上げたとんこつ風ラーメンを食べ終えた二人は自然と語り合う。
目の前にはカモンの作り出した錬成なんちゃって除湿器が真水を作っている。
それを見ながらノンビリとしていた。
「でも誰がどんな目的で毒を入れているんでしょうか?」
「いや・・・それについては誰も入れてないが正解だろう・・・」
「えっ?」
カモンの疑問にガイアは軽く答える。
それもその筈、目の前にずっと一緒に居てるガイアであるが何もしていない訳ではなかった。
カモンの微毒発言を聞いてからスキル『インターフェアレンス』を用いて過去へ何度も飛び確認を行ってきた。
料理だけではなく井戸水にまで毒が混入しているという言葉にガイアは考えた・・・
(もしかしたら口にする物全てに毒が入っているのか?)
最初は料理人が込めていると考えたが、真正面で見ていてもそんな素振りは一切無かった。
次に水を汲み上げる人間が行っていると考えたが、それも大丈夫であった。
その結果ガイアが出した結論は・・・
「この国の水全てに毒が入っていると考えた方が良いかもな・・・」
「水・・・ですか?」
「あぁ、それしか考えられない・・・」
飽く迄カモンの鑑定結果を信じるとするならばであるがガイアはそう結論付けた。
しかし、この時カモンは全く別の事を考えていた。
そう、ガイアの正体とその能力についてである。
賢者と言う存在と言動からカモンが想像したのはブリタニア列王史のアンブロシウス・メルリヌスであった。
英語でアンブロジアス・マーリンと言えば分かるだろう、知る人ぞ知る現世を見渡す目を持つ預言者である。
彼は千里眼のように現在の見たい物を自由に見る事が出来たとされる、しかし千里眼の能力であれば突然消える能力の説明がつかない。
何よりもガイアの『それしか考えられない』と言う言葉、まるで確認をしてきたかのような発言に一つの可能性に行き着いた・・・
「時間干渉能力?」
「えっ?」
ポツリと口にしたカモンの言葉にガイアは冷や汗が噴き出た。
だがそんな目を見開いたガイアを気にせずにカモンは続ける・・・
「消えた後に出現する場所は同じ場所・・・そして過去は確定しているから干渉することが不可能と考えれば・・・」
「・・・」
「見る事しか出来ない・・・」
「おまえ・・・」
カモンが出した結論、それを聞いたガイアはカモンから距離を取る。
その足音に我に返ったカモンは警戒心を持ったガイアに驚いた。
「俺を鑑定したのか!」
上手く言い包めて騙そうと考えていた相手、その相手に看破されたのだから身構えるのも仕方がなかった。
ただでさえカモンの錬金術は異質、過去を覗き見たからこそガイアは恐怖した。
自らが戦闘能力皆無なのは分かっている、だが目の前のカモンは錬金術師でありながらどうやってか他者のスキルを使用することができる。
ミナヅキの鑑定を真似た姿を見たからこそガイアは全て見抜かれたと勘違いしたのだ。
自分のスキルの正体が次元魔導士だと言う事を鑑定で見抜き、次元魔法を真似て過去へ精神を飛ばして全てを見て来たと・・・
自分が長年掛けて身に着けたインターフェアレンスでの知識を真似て過去へ飛んで知識を得たのだと勘違いしたのだ。
「くそっ・・・お前を甘く見過ぎていたか・・・」
「あの・・・いったい何を・・・」
「とぼけるな!っそうか、微毒って話から俺は騙されていたって訳か!」
自分が出来る事は他人も出来て当然、同じスキルを使用できるのであれば必然だと考えたガイア。
そもそもスキルの発動に魔法陣が必要という常識はガイアには無いのだ。
ガイアが見れるのは言動のみ、人の思考を読む事は出来ないのだ。
なのでカモンが気付いたが口にしていない事は勿論分からず、口にしたからと言ってそれが理解出来るとは限らないのだ。
結果、カモンはガイアが次元魔導士である事も魔法陣の場所も知らないままなのである。
「ちっくしょう・・・」
そして、ガイアはチラリと横のなんちゃって除湿器を見て脱力した。
カモンの出現させた錬成空間を使えば未来へ跳躍したとしても出現した瞬間に拘束されるのは目に見えていた。
リープは時間を跳躍するのみで場所の移動が出来ないのである。
下手をすればその場所に罠を仕掛けられれば即死も免れないのである。
「分かった・・・俺の負けだ・・・なんでも言う事を聞くよ・・・」
「えっと・・・あの・・・ガイアさん?」
「だから頼む!命だけは!」
必死に命乞いをするガイアとガイアのスキルの秘密を考えただけのカモン、互いに思考が食い違ったまま修羅場となっている横で真水が予定の20リットルに到達するのであった・・・
その頃、ミナヅキは小部屋に一人立っていた。
「いよいよだ・・・これで我が祈願が成就する!」
カモンの作った真水に真っ黒の物体を浸すとそれが水に広がる・・・
ゴボゴボと泡が沸騰しているかのように発生して周囲に瘴気が立ち込める・・・
「もう少しです・・・我等の王よ・・・」
その言葉に王座に座るケイオーン王は口元を歪めて醜悪な表情を浮かべる。
ミナヅキが居る部屋はケイオーン王の玉座の後ろ、そこには赤く光る球体が安置された隠し部屋。
そして、その赤い球体こそが願いを成就させるといわれる種族のコアであった。
4つの別種族のみが持つとされている種族のコアの一つがこの場に存在する・・・
それを知るのはケイ国の中でもケイオーン王とミナヅキの二人だけ・・・
「クククク・・・」
ケイオーン王は不敵に笑う・・・
真理に気付いた錬金術師はチート人間と化した 昆布 海胆 @onimix
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