祓い屋の弟は見える癖に信じない。
梶バターレモン
第1話
大きな万葉桜のある路地裏に古くからある神社。敷地内は落ち葉掃除などはされているが神社自体は古びている。近くには誰も立ち入りしなさそうな蔵がある、ら
青年は大きなリュクから広辞苑ほど分厚くデカイ本を取り出した。
本を開き、ペラペラとページをめくった。
「間違いない、ここだ」
ボソッと呟いた。
神社の敷地内へ入り、古い蔵のような建物へ歩み寄る。扉は錠前も付けられていない無防備だった。
蔵の扉を軽く押してみると不気味な音を立てて少し開いた。
重い扉を開け、中に入る。
キョロキョロしながらとある壺を探す。
どれも埃の被った物ばかりだった。
探してる壺は奥に厳重に保管されていた。
その壺の周りには何かの印や『解くな!』や『危険!』と書かれた紙が貼り付けられていた。
青年はその警告を無視して壺に近寄り、本に書かれた文章を読み上げる。
「我、汝の契約者なり。
主人なき、汝の器を満たさん。
何時如何なる時も汝と我は契約の結びを交わし離れん。 結びを解く時、契約は空白なり。
さぁ、我に従え。 主人なきモノノ怪よ」
すると、呪文が唱えられたせいか壺の封印が解かれ、壺を包み込んで貼られていた札が焦げてカスになり、壺がガタガタと揺れる。
蓋が吹き飛び、近くに落ちて粉々に割れた。
その勢いで封印されていた少女のような姿の物の怪が現れた。
「神主には許可を得ている。何者だ?」
青年は正直、怪奇現象や儀式、呪いなどを全く信じていなかった。
壺の蓋が割れた音に驚いたくらいで特に何も思わなかった。
今、目の前にいる存在も霊的な存在だと思っていない。
少女は云う。
「やぁ、キミも物好きだね。
オカルト好き? 祓い屋? それとも…」
青年は何も言わずに首を横に振る。
「僕(しもべ)が欲しかった?」
またしても青年は首を横に振る。
青年は目線を逸らしていたが、改めて少女を見た。 青年より低めでセミロングの焦げ茶色の髪、包帯で目を覆い隠していた。
「そう、紹介が遅れたね。
ワタシは主従。 キミは主人」
青年は軽くコクリと頷いた。
本のページをペラペラと巡り、契約方法を探す。その間、少女はずっと黙ったまま支持を待っている。
暫くしてからそれらしい項目を見つけた。
本文にはこう記されている。
【《奇獣魔具について》
1、奇獣魔具とは生前……。
2、《契約方法》
①《番号(ナンバー)》を聞く。
奇獣魔具には必ず、番号(ナンバー)が振り分けられています。
稀に奇獣魔具ではない、妖怪の類がフリをしている場合があります。 質問をして嘘を見抜きましょう。※嘘を見抜く質問方法は5で詳しく紹介します。
②《結び》をする。
主人と従者の関係を結ぶ大切な儀式です。
最初に奇獣魔具が束縛されている輪の位置を確認しましょう。※確認ミスをすると後にちょっとした事故が起こります。
結ぶの糸をどこに付るか考えましょう。
指、手首、足首、などと好きなところに糸を結べます。 シンプルに手首をオススメします。
③………】
今は必要ないと思い、2の②項目しか読まなかった。
重く閉ざされていた唇が開く、動揺も迷いもせず言う。
「貴様、番号は?」
少女はやっと話しかけてくれたのが嬉しかったのかはたまた初めての指令で嬉しかったのか興奮しながら云う。
「No.8! よろしくね! 糸はどこに…」
少女が言いかけている途中で
「ここではしない。 自宅に着いてから行う」
と冷たく言い放った。
少女はしょんぼりしながら頷いた。
すぐに契約を結んでくれると思っていたのだろう。青年は何もなかったかのように自宅へ帰って行く。
少女は黙って浮遊しながら付いていく
だが、青年はただの一度も振り向きはしなかった。
祓い屋の弟は見える癖に信じない。 梶バターレモン @raimu2355
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