第2話 「君について」


彼は誰にでも優しい、ただの男の子だった


花を育てるのが好きで

彼の家はたくさんの花で溢れていた


「それ、折らないで」


桜を母に見せたくて持ち帰ろうと

枝を折ろうとした私の手を優しく静止した


「植物は言葉を話さないけど、きっと痛がると思う」


「なにそれ?」


「人で言うと骨を折られる感じじゃないかな」


苦笑いの彼に私は手を下ろした

ありがとう、と笑った顔はとても優しかった


「今度は何してるの?」


「あぁ、なんだ君か」


「なんだってなによ」


「僕に話しかける人なんていないから

誰かと思っただけだよ、ごめんね?」


「ふうん、ならいいけど」


「今はね、チューリップの球根を植えてるんだ」


ニコニコしながら土をいじり

球根を指さす


「私チューリップ嫌い」


「えぇ、なんで?」


「開いた時、雄しべと雌しべ気持ち悪いじゃん」


彼は目を見開くと大きく笑った

確かにそうだと手を叩いた


そんなに面白いものだったかは理解できなかったが

彼の楽しそうな姿を見て悪い気はしなかった


「君は面白いね」


「君が珍しいだけだよ」


気づけば一緒にいる時間は長くなった

いわゆる親友というものだった

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花を摘む @Cloud_rain

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