つい出来心で故郷へ向かう舟に密航してしまったドウヨは、船底で死体を発見してしまう。そんな場面から物語は始まります。
つかみ所の無いアーネストという男に助けられ、二人で事件の謎を解いていく、という本格ミステリー小説です。
中世のパリを彷彿とさせる背景描写と、丁寧に描かれる個性豊かな登場人物達に、安心してどっぷりとお話しの世界につかりつつ、謎解きを楽しんでいくことが出来ます。最後は事件の背景にあるものにじんと胸をつかれてしまいました。
何より魅力的なのは、ドウヨとアーネストのコンビ!なんとも言えぬ関係性が楽しくて、ずっと二人を見ていたくなりました。
この二人の物語は続編があります。
テアトル・ド・シエル殺人事件、こちらもおすすめです!
真っ暗な海を行く帆船に、ポツポツとランプの灯が点っている、そんな印象を抱きました。
登場人物のひとり一人にスポットが当たっているような、丁寧な書き方がなされ、だからこそのめり込む強さが感じられます。
揚げ足取りをするようなセリフ回しもなく、だからこそ誰も彼もが怪しく思える、そんなミステリーです。
そして思ったのが、一言でした。
真っ暗闇の海を行く帆船で、星よりも月よりも明るく、自分の手元を照らしてくれるランプの炎は、とても頼もしいのだ、と。
誰が犯人であっても、どのような展開になっても、この登場人物たちならば、絶対に面白いと自信を持って断言できます。