第60話 ラッシーが飲みたいです
スープカレー・カムルのお店は、スープカレーカムイさんの公認になりました!
わーいヽ(*^^*)ノ
「えー。いい案だと思ったんだけどなぁ」
唇をとがらすメイに、リズは苦笑した。
「あんまりゴーレムが増えすぎると、お客さんたちが怖がって来なくなるかもしれないから、今の数でいいよ」
確かに、お店の入り口にゴーレムがずらっと並んでると、威圧的で良くないかもしれない。
ってことは、可愛ければいいのよね。
メイは密かに、もっと見た目が可愛いゴーレムを作ろうと心に誓った。
「それより、メイちゃんの考えてくれたスープカレーだがな。いい感じに作れたから、ちょっと試食してみちゃくれないか?」
「わあ。いいんですか?」
カムルのお店の看板メニュー候補としてメイが最初に作ったスープカレーは、錬成釜で作ったものだ。材料や分量は正確だが、作り方までは分からない。
だから煮込む時間や材料を入れる順番など、具体的な作り方はカムルが独自で工夫して、やっと納得のいくカレーができたのだ。
「ジークたちも食っていくか? お試しだからな、タダだ」
「おやっさん、気前がいいな! もちろん食べるさ」
ジークよりも先に返事をしたのはアレクだ。
仲間の返事も聞かずに、さっさと席についてニコニコと笑っている。
ジークとクラウドは目を合わせて苦笑し、同じテーブルの席についた。
「じゃあメイとオコジョさんはこっちね」
リズがジークたちの隣の席にメイを案内する。
ロボも引かれた椅子の上にちょこんと座っていて、そういえば食べ物屋さんに動物を連れてきてもいいのかなとメイは思ったが、この世界には動物そのままの姿をした獣人もいるのだから問題はないのだろうと納得した。
でもカレーは食べちゃダメだよね。
そう思ったメイは、ロボ用にカレーではなく肉料理を注文した。
「じゃあちょっと待っててくれな。ああ、飲み物は何にする?」
「エール酒で」
「じゃあ俺もエール酒で」
アレクとジークはビールに似た発泡酒のエール酒を注文した。それほど度数が高くはないので、水の代わりに飲むことが多い。
「エール二つだな。クラウドはどうする?」
「僕はお茶をお願いします」
「よし分かった。メイちゃんはどうする?」
そう言われてメイは考えた。
カレーに合うのは、冷たい水か麦茶だ。アイスティーも合うが、クラウドが頼んだのは熱いお茶だろう。
「そういえばラッシーは作ってないんですか?」
ヨーグルトと牛乳とお砂糖とレモン汁を混ぜて作るラッシーは、甘くてさっぱりしててカレーにぴったりだ。
せっかくだからラッシーを飲みたい。
「一度作ってみたんだがな。うちには冷凍庫がなくて氷を作れないから、あんまり美味しくならなかったんだ」
そういえば、冷凍庫は高価で中々買えないのだった。
リンツの街の領主であるヘルベルトに連れていってもらった、高級料理店である銀の小枝亭にはあったが、冷凍庫はかなり高価で普通の店には置いていない。
氷魔法が使える従業員がいればいいのだが、かなり稀少な魔法で、使えるものはほとんどいないらしい。
ヘルベルトさんを雇うわけにもいかないし、とメイは考えこむ。
その稀少な魔法の使い手の一人がヘルベルトだが、さすがに領主をカレー屋のアルバイトにスカウトはできないだろう。
メイはうさ耳の渋いおじさまが、ピンクのエプロンを身につけて爽やかにアルバイトしている姿を想像してみた。
……これはこれで、案外評判になるかもしれない。
いやいやいやいや。
看板娘といったら、こっちの三姉妹だよね!
うさ耳おじさんとか、マニア向けになっちゃう。
メイは慌てて考えを改めた。
それにしても、冷凍庫がないとラッシーが作れないというのは盲点だった。
錬成釜で作れないだろうかと、腕輪から青い表紙の錬成の本を取り出した。
「冷凍庫、冷凍庫……。あ、あったー!」
錬成の本の中には、メイの予想通り冷凍庫のレシピが増えている。
そこには赤い字で、ユグドラシルの幹、と書いてあった。
「これもユグドラシルの素材なんだ。じゃあついでに取ってくれば作れるんじゃない? わーい、ラッキー♪」
無邪気に喜ぶメイの横で、カムルが「ユグドラシル!?」と顔を青くしていた。
異世界でゆるっとふわっとアトリエ生活 メイともふもふの箱庭 彩戸ゆめ @ayayume
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