1章√1 儚き少女の願い

目覚め

……ここは?俺は確か死んで、変な奴に…

そうだ!俺は、異世界で攻略しろだとかどうとかで…でも此処は!?何もない。今度は、

真っ暗…一体何がどうなってんだ…

ん?あれは…誰だ?………

!?おいお前まさか!……

「おい!待てよ!!…ってあれ?」

ふと気付くと、目の前に色のある景色が広がっていた。どうやら夢でも見てたらしい。

いや、どちらにせよこの景色も夢かもしれない。なぜなら……

「おいおい、森の中の湖って…今時こんなシュチュエーション、ゲームだって見なくなって来たわ…」

そう。俺の目の前に広がっていたのは、辺り一面の木々と大きな湖であった。

やはり、あの仮面の人物の言っていた通り、

俺は、異世界に転生したらしい。信じたくは無いが、頬を二度程つねってみても、返ってくるのは痛みのみ…どうやら信じるしか無いらしい。「あっ!そうだ!」俺は以前から、異世界に転生した時に試したい事があった。

それは、転生後の自分の姿である。というのも、最近は異世界転生した主人公がモンスターだの、勇者だのと、姿を変えるといったモノばかりに触れていたからである。これがオタクの悲しい習性というか副産物というか…

とにかく、悲しい知識である…

「体の感じは、普通の人間っぽいけど…体に盾とか剣とか付属して…無いよな。体は軽いし」

悲しい、自分の知識が悲しい。とにかく体を起こして、俺は湖まで歩いた。その30秒後にまさかあぁなるとは、知らずに。

「…にしても周りの木とか、やけに高いな…

いや、俺が小さくなったのか?まぁ多少の身長の低下は、良しとして……」

湖に映ったモノを見て、俺は声を失った。

今の俺の状態を例えるなら、オンラインゲームとかでよくある操作キャラクターのラグやフリーズ、あれの人間版のような状態だ。

まぁ、無理もない。突然自分の目の前に、

”幼女”が映っているのだから。

普通の人間でも突然誰もいない状況で鏡に、

イケメンだの美人だの、憧れの芸能人だのが映っていたら、パニクると思う。俺のパターンもそうである。何を隠そう俺、風達飛鳥は、自他ともに認める、ロリコンである。

勿論、妹の志保も知っている。それでも周りから悲しき目を向けられなかったのは、俺が公私をしっかりわきまえてきたからだろう。

自分でも、趣味は趣味であって楽しむ分、勉強などの高校生活にも真面目に取り組んだつもりである。志保に関しては、「皆誰でも趣味ぐらいあるから」と、多分一番の俺の理解者かもしれない。

とまぁ、こんなロリコンが目の前に幼女を見たら、混乱するのは当然である。 しかも、俺に追い討ちを掛けたのはその容姿だ。

髪は銀色のロング、瞳は透き通った青、そんでもって胸に手を当てると、素晴らしいほどのまな板…どれも俺のストライクゾーンを突いてきているのである。

それでも、やはりすぐには認める事は出来なかった。「お嬢ちゃん、どこから来たの?名前は?お兄さんと遊ばない?」

あぁ…声も可愛くなってる。というか、もはや犯罪者である。しかし、目の前に映っている幼女は、自分と全く同じ動作しかしない…いや、むしろ鏡に映った自分が別の動きしたら普通に怖い!

結局、この事実も認めざるを得なかった。

しかし、ここで俺には、大きな疑問が生まれた。それは、「俺の役目は女の子の攻略なのに、それを女の子の姿でやるというのか?」である。

(…ん?女の子で女の子を攻略って…まじかよ!?)そう、俺は気付いてしまった。この展開が唯一ありえてしまう状況がある。もし、あの仮面の男が言った事が正しければ、そう!この世界が俺の知っている「エルヘブン」という世界であるならばだ。なぜなら、その世界を舞台とするゲームは…

「 百合ゲー」

だからである。百合ゲーとは、いわゆる「百合」簡単に言えば、女性同士の恋愛などについてを題材とした作品の事であり、このゲームは、女性同士の恋愛ゲームと言うのが正しい。

つまり、この世界が、俺の知っているその百合ゲーの舞台で、俺がその主人公になった。

そうなればこの状況にも納得がいく。いや、普通の人なら納得もできないだろう…百合というジャンルや恋愛ゲームというものについての知識が、ある程度強めの俺だからこそ辿り着いた結論であり、納得も出来たのだと思う。多分俺は、この瞬間ほど自分の今までの経験を呪った事は生まれて初めてだ…

とはいえ、状況は納得したが、この先どうするか。何しろ、今俺は何も持っていない。異世界転生については俺もこの世界に来る前から色々と情報は持っていた。まぁアニメ等の2次元ジャンルだが…

そこでの、主人公達にはある共通点がある。

それは、「ほとんどの奴が最初からその世界に適応できる能力を持っている」ということである。

その種類は様々で、最初からステータスがバグってたり、何かと最強クラスの武器や魔法を持っていたり…はたまた、転生前の世界で持っていた知識が転生先の世界での生活などに役立っていたりなどである。

しかしながら、ありとあらゆる方法を試してみたが、俺には何かがある気配がまったくない。剣が勝手に出てきたり、魔法が発動したりなんて事はまったくなく。別に体から羽とか尻尾が生えて来るわけでもなさそうだ。やはり、現実はそう甘くいかないのだろうか…

「いや!俺にも絶対何かあるはずだ!じゃねぇと……俺、ここでゲームオーバーだ!」

昔、何かの本で読んだっけ…無理な状況だがそれを一向に受けれようとしない動物を主人公にした話。多分今の俺なら、その気持ちが分かる気がする。

とまぁ…俺は、何だかんだで悪あがきを続けていた…すると、

「そこにいるのは誰ですか!?」

遠くで大きな声がした、女性の声だった気がするが…

「こんな所に人なんて…」俺のこの言葉が不正解と判明するのはこの二分後だった。

「ここは、現在立ち入りが禁止されているはずですが…って女の子?」

女性が近付いて来た。身長は、150cm後半ぐらいか、綺麗な赤い瞳に、金髪のツインテール、俺のいた世界にこんな子絶対いない。

彼女にしたいくらいだ。

女性の言葉に「誰が女の子だよ!?」と反論しそうなったが俺は、咄嗟に思い出した。ここでの俺は幼女なのである。

俺はとりあえず適当に、「あっ、あのえと…私……その道に迷ってしまって、この辺りに来るの初めてで…」と答えた。まぁ嘘は言ってないだろ。実際、この世界に来る事自体が初めてだし。

女性は、困ったような顔をしていた。まずい話を適当に切り出さないと、とりあえず俺は彼女の目的について聞いてみることにした。

「あの…その…お姉さんはどうしてここに来たんですか?」我ながら演技が上手い。来世は、役者を目指してみるか…

俺が問いかけたからかは知らないがようやく女性の口が開いた。「私は、任務でここに来ました。ここに王国で指名手配中の盗賊の隠れ家があるとの情報があり、その調査です」

「任務?ってことは、お姉さんは何処かに所属してたりするんですか?」

次々と続く俺の問いに、女性は、落ち着いた様子でこたえる。

「そうですね、私は、王国中央騎士団第12部隊に所属しています」

「えっ!?お姉さんは騎士なんですか?」

「いえ、私は、まだ騎士学校に通っていて正式な騎士ではありませんが、体験という立場で限られた期間の間だけ騎士団に居させてもらっています」

女性は、やや遠慮がちに答えた。

まぁなんとなく分かる気がする。この世界は、騎士がもっとも力を持っているらしい。

しかも、養成学校まであるくらいだから、きっと凄く力を入れているのだろう。俺の予想では、国王直属の近衛騎士とかそういうのもありそうだ。

ますます、俺のこの世界に対する興味が高まってきた。

色々考えていると、女性が「あなた、この辺りは、初めてでしたね?この先に村がありますから、私と一緒にそこまで行きましょう」

と言った。

「えっ!?でもお姉さん、お仕事の方はいいんですか?」確かに彼女の気持ちは、嬉しいが、俺はあまり貸しをつくるのも好きではない。

しかし、彼女はやさしく微笑んで、「いえいえ、構いませんよ。民を助けるのも立派な騎士の役目です」と言った。

ヤバい、この人めっちゃいい人だ!将来はこんな人と結婚したい!

「ありがとうございます!お姉さんならきっと素敵な騎士になれますよ!」

俺の言葉に彼女は、優しく「ふふっ、ありがとうございます。その時は、ぜひあなたもお呼びしますね」と答えた。

あぁ、神様この世界に転生させてくれてありがとうございます…この恩はいつか必ずお返しを。

「あの…それではそろそろ行きましょうか…」彼女の言葉が俺を正気に戻した。

まずい、完全にあのままだと、考え込んで時間を無駄にするところだった。どこの世界でも何だかんだで、カッコ悪いな俺。今は女の子だけど……

しかしまぁ、素っ裸で森の中にずっといるというのもこれはこれで鬼畜すぎる。彼女は、そんな俺の考えもお見通しかの様だ。

「はい。わたしのですので少し大きいかもしれませんが、やはり、あなたのような小さな女の子が服も着ていないままというのは…」

そういうと彼女は、背負っていた鞄から今の俺の体には、少し大きめかもしれないぐらいの服を取り出し、俺に渡してくれた。おそらくよくある冒険者向けの服みたいな感じだろう。あまり女の子って感じもしない。しかし、彼女の好意は嬉しいし、このまま素っ裸で森の中は、ごめんだ。

「こんなことまで…ありがとうございます!」

「良いのですよ、それでは行きましょうか」

「はっ、はい!」

こうして、俺は彼女の案内で森の外を目指すことにした。

「あっ!そういえば!」

俺は肝心な事を聞き忘れていたことに気づいた。

「あっ、あの…お姉さんは、お名前はなんて言うんですか?」

俺の質問に彼女は、敬礼をしながら答えた。おそらく、名乗る時の礼儀なのだろう。

「私は、レスティオ王国中央騎士学校中等部2年、アリア・ミスティラントです。」

今の彼女からは、今までよりももっと強い威厳を感じた気がする。

「お…じゃなくて、私は、アスカ・ヒカリといいます。よろしくお願いしますねアリアさん!」

(ヒカリか…なぜか咄嗟にてできたな……)

だが本名は、流石にと思った。

「こちらこそ!アスカさんよろしくお願いしますね」

こうして、新たに幼女、アスカ・ヒカリになった俺は、アリアと共に村を目指して歩き始めた。

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第二の人生はリアル・エロゲーマー 810後輩の100物語 @shunryochika561661

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